第4話 どうやら彼女は俺のお弁当のおかずを欲しがっているようだ

彼女の弁当の中身はいかにも高級品と言ったものばかりが詰め込まれており、あまりおいしそうではなかった。確かに、うまいものは高い、だが、ただ高いものを使えばうまくなるというわけでもないのだ。


料理はそんな単純なものではない。俺にも経験があるが高いものを使ったよく分からない料理よりも結局はハンバーグとかカレーとか普通の料理の方が美味しいのだ。


そんな高そうな料理ばかり食わせられ、本当に美味しいものが食べられないのは辛いことだ。もしかすれば彼女もそう言った料理に飢えているのではないか?


「もしかして、俺の弁当のおかずが欲しいのか?」


俺が彼女にそんなことを尋ねると目の前でものすごい動揺を始めた。こんなあからさまな動揺を見るのは生まれて初めてだ。誰だ、鉄仮面なんてあだ名をつけたやつは。どう見ても仮面は外しているだろうが。


「は、は、はぁ、そんなわけないじゃない。あなたは何を言っているのかしら。」


「いや、流石にそこまであからさまな動揺を見せておいて、そう言い張れるって無理があるでしょ。逆にそれが通用すると思っているのなら色々と勉強したほうが良いよ。」


どうやら本人はこれでごまかせていると思っているようだ。意外と残念な人なのか?もはや鎌をかけるまでもないが一応かけてみることにした。


「そう、別に欲しくないのならこれは俺が食べてもいいよな。」


俺が彼女の目の前で美味しそうに卵焼きを食べようとすると彼女はとっさに叫んだのだ。


「ダメ!」


予想以上にその声が大きかったのだろう、周囲のクラスの目が一気に俺たちへと向けられる。おいおい、流石にそれは勘弁してくれよ。こっちが鎌をかけたのに追い詰められているのは俺の方じゃないか、この視線は恥ずかしいぞ。


今の声が誰も寄せ付けない院西知佳のものだったと分かると瞬く間にクラス中がざわざわとし始める。


それもそうだろう、今までは誰が話しかけても無視をするか突っぱねられ、感情すら表に出さないような彼女が突然大声を発したのだ。それに注目するなというほうがおかしい。


「お、おい、声が大きいぞ。」


俺が彼女の叫びに抗議すると彼女は全く人の言うことを聞いていないのか、周囲のこの状況が目に入っていないのかとんでもない行動をとるのだった。

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