空想の中のヒーロー

@sik21

第1話

私だけのヒーローはいつも空想の中にいる。それは白いスーツを来た金髪の男子かもしれないし、光沢感がある鎧を装着した騎士かもしれない。もしかしたら絹のドレスに、煌びやかに輝く装飾をつけた可愛いお姫様かもしれない…。


それが私だけのヒーロー。変幻自在に変わっていく。


そしてヒーローは悪い奴を戦ってくれる。それは私の妄想を邪魔する物。だけれど悪い奴はとても厄介。何故ならその悪い奴らも自分だけのヒーローを使ってくる。

そして強い。


奴らは冷酷に剣を振るい、無造作に矢を撃ってくる。それに一番ひどいのは平気で叩いてくること。それは剣や矢も凌ぐ冷酷な武器。けれども悪い奴らは容赦なく、嘲笑いながら叩いてくる。それが正義だから。


けれども私は抵抗していく。だって私にもヒーローがいる。ヒーローはとっても強い。勇敢に剣を振って敵を攻撃し、鮮やかにそして可憐に敵の攻撃を回避していく。そして最後は勝利する。


勝利するととても気持ちがいい。けれども私のヒーローはいなくなる。だって戦うから。消えてしまうから。…。


でも大丈夫。また作ればいい。それは空想だからいくらでも作り出せる。でもそれは相手も同じ。だがらいつも苦戦する。


しかし私は負けない。だって強いんだから。ヒーローはとても強いんだから。


…。それから私は今も戦いを続けている。でもなかなか終わらない。いくら戦っても全然。しかも増えてくる。それは無尽蔵に…。


そのせいで頭が痛くなってくるし、しんどくもなってくる。だから空想ができなくり、ヒーローが作れなくなる。私だけのヒーローが。


けれど敵は頭も痛くならないし、しんどくもならない。だって奴らは感覚がおかしくなっているから。


それでどんどん押されていく。だってヒーローが倒されていくから。悲鳴を上げてばたばたと。


そしてついには負けてしまう。私は消沈し、倒れこんでしまう。その姿を悪い奴は笑いながら、罵詈雑言を放つ。みじめだと、馬鹿なのだと、負けたなのだと。


それで悪い奴は満足したらどこかへ去っていく。私だけが置いてけぼりにされる。悲しい。でも涙は出ない。それはとっくに枯れてしまった。


それからの私は絶望に打ちひしがれていた。やっぱり私の空想じゃ勝てっこない。奴らの方がはるかに上だ。だから…。もう私はだめだ。砕かれた。幻想が。


そして私は瞼をゆっくりと閉じた。だってそれしかできないなのだから…。








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