饗宴の丹沢山系 ―次元生物ミシファイカイリー登場―

ニャルさま

序章

①遥かなる丹沢山系

 丹沢山系たんざわさんけいを知っているだろうか。


 神奈川県において、その五分の一ほどを占める広大な山域である。

 この山域の北には高尾山系があり、南方には箱根の山々があり、そして海に行きつく。東京西部から南下した場合、そのほとんどが丹沢に当たるといって差し支えない。


 それほどの浩蕩こうとうたる大地ではあるものの、この山域において最高峰である蛭ヶ岳ひるがたけでさえ標高1,673mと高山といえるほどのものではない。しかし、この山域は深く、いかに人を吞み込むことか。


 百名山に丹沢山たんざわさんが数えられているが、実際には丹沢山系全体であるともいわれる。

 中央を連なる塔ノ岳とうのたけ、丹沢山、蛭ヶ岳の主脈3ピークは人気があり、登山者が多い。また、古来から山岳宗教の修験場でもあった。

 東部には霊山として名高い大山おおやまがあり、その周辺には険しい山々が多い。西部には檜洞丸ひのきぼらまる大室山おおむろやまなどがあるが、麓はキャンプ場として賑わいを見せている。

 そのどれもが富士山を眺めることができ、観光地としても人気だろう。


 丹沢山系は人が踏み入り、人が踏破した山域だろうか。

 確かにそうだ。しかし、人の支配した地点は点であり、歩くのは線である。その面を知り尽くしたとは言い難い。

 丹沢山系において人間の知りえぬ場所も大きいのである。


 その丹沢山系であるが、誕生は約1,700年前といわれる。太平洋の海底火山として生まれ、フィリピン海プレートの変動によって日本列島と合流した。

 さらに、伊豆半島の衝突によってその地形は複雑さを極め、非常に入り組んだ、起伏の激しい地形を構成していった。その各所では貝やサンゴ、オウムガイなどの化石が見られ、かつて海であったことの痕跡も数多く見られる。


 そして、この世界は皆様の勝手知ったるものとはまた違う世界。

 あなたがたの世界では北極にS極があり、南極にN極がある。感覚的には逆かもしれないが、方位磁針のN極が北を指すため、北極はその反対のS極なのだ。

 しかし、この物語の舞台は地磁気が逆転したばかり。人の踏み入れぬ地で何が起きるのか、誰にも保証はできない。


 その場所に迷い出た者はどんな顛末を辿るのであろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る