雛之丞 誕生日小説 第0話「ばーすでーぱーてぃー」開催を誰に頼む?

作:ますあか


(サットヴァ視点)


サットヴァはひとり下界を眺めて、考えていた。


ハヤテの誕生日は、祝われる当人が主催する形だった。


ハヤテの「ばーすでーぱーてぃー」に参加して、私は学んだのよ。


今度はちゃんと皆でお祝いする形で開催しないとね!


さて、次の誕生日の子は、2月8日生まれ雑賀の雛之丞ね!


こういうとき、誰に「ばーすでーぱーてぃー」の開催を依頼すればいいのかしら。


雑賀の面々は雛之丞を覗いて、風太、凪紗、柴、猫又、弁天、イチヤの6人。


凪紗ちゃんは人見知りだから、頼むと困っちゃうかしら。


それにしても、雛之丞といい、雑賀って猫又、柴と動物との関わりのある忍びが多いのね。


猫に柴犬、雛之丞にいたっては、ひよこ。雛之丞本人は立派な鶏になりたいって言っているけど。


そうね。


それじゃあ、動物つながりで猫又と柴に「ばーすでーぱーてぃー」の開催をお願いしましょう!



※  ※  ※



(猫又視点)


その日、猫又は夕飯の魚を取りに川へ向かっていた。


「この時期の川魚は、まだちょっと小さいけど春になったら食べ頃になる。数を減らさねえように少しいただくか。ヤマメ、アマゴもいいな。くうう、腹がすいてきた。はあ、はやく春が来ねえかな」


釣りをしているとき、


「おお、餌に食いついたな。とりゃ」


釣り竿を勢いよく引き上げると、魚はとれていなかった。


あれ? でも釣り糸の先に何かがついているぞ。


これは蜘蛛の糸と手紙か。


普通の手紙なら、水に濡れたらダメになる。蜘蛛の糸だって、こんな頑丈じゃない。


と言うことはサットヴァ様からの手紙か?


なんだかイヤな予感がするな……。


そう思いながら、手紙を読み始めた。


【猫又へ


2月8日は、雛之丞の誕生日ですね。


『ばーすでーぱーてぃー』を開催する場合、ぜひ参加したいので


ご招待をお待ちしております】


これは、あれか……。


「ばーすでーぱーてぃー」を開けというサットヴァ様からの圧か。


こういうときは、反論せずにすぐに準備するのが忍びって奴だ。


猫又は竿をまとめると、急いで里に戻った。



※  ※  ※



(猫又視点)


「あら、猫又くんにも届いたのね。サットヴァ様からの手紙」


弁天の姐さんがふわりと笑ってそう言った。


「俺以外にも手紙が届いた奴がいるんですか?」


「ぼくだよ」


柴が困った顔をしながら、こちらへやってきた。


「今回のひなのちゃんの誕生日会主催は、柴くんと猫又くんね。私も何か手伝えることがあったら、手伝うから言ってね」



※  ※  ※


(猫又視点)


「柴、どうしようか。雛之丞の好みのものを用意すればいいのか?」


「伊賀忍のハヤテは洋風な祝いだったってさ」


「俺らもその線で準備するか?」


「いや、普段慣れていないぼくたちが1日で準備するのは無理だよ」


柴が困ったような顔をして、耳を伏せた。そのとき、


「よお、準備進んでいるかい?」


風太が酒を片手に部屋へやってきた。


「風太。こっちは忙しいんだから、邪魔するな」


「俺は雛之丞の『ばーすでーぱーてぃー』でいい酒を出してくれって、頼みに来たんだよ」


「風太さんの誕生日じゃないんですよ」


柴は風太へ苦言を言う。それを聞いた風太は、ははっと笑いながらこう言った。


「みんなが盛り上がれば、それでいいんだよ。無理に外つ国風にしなくたっていい。真心こもった『ばーすでーぱーてぃー』のほうがいいに決まってる」


なぜか、風太の言葉が胸に響いた。俺は風太に尋ねた。


「なら風太は、どんな『ばーすでーぱーてぃー』がいい」


「俺はいい酒と肴。そして、お祝いの言葉があれば、それでいいんだよ」


「お祝いの言葉か」


俺はぽつりと呟いた。お祝いの言葉と聞いて、すぐに頭に浮かんだ忍びがいたが、今回は任務に出ていて参加できない。


「イチヤと凪紗は、任務で『ばーすでーぱーてぃー』に参加できないよね」


「弁天の姐さんも警備担当だから、『ばーすでーぱーてぃー』に参加できないしよ。ちぇっ」


風太は弁天の姐さんと仲がいい。柴は参加できる面々を確認する。


「実質参加できるのは、雛之丞、柴、猫又、風太さん、サットヴァ様の5人かな」


「なかなか面白い組み合わせだな」


風太は面白がって言っている。俺は、はあっとため息をつき、柴のほうを向いて言った。


「分かった、料理は俺と柴で準備をする。お祝いの言葉は、風太が考えてくれ」


「応よ。任しときな」


風太はそう言うと、部屋を出て行った。風太はやるときはやる人だ。おそらく、問題ないだろう。


こうして、突然の開催が決まった雛之丞の『ばーすでーぱーてぃー』の準備は進められていった。

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