前世の夢を叶えましょう!
* * *
「ふふふ」
異世界転生して三日目。
私はパンパンになった愛しい財布をナデナデしていた。
うふふ。やっぱり、あのドレス達はいい金額になったわね。
前世はリサイクルショップのバイトをしていたことがあり、不用品を高値で買い取ってもらう方法を熟知していた私は、早速不要なドレスを可能な限り高値で売り捌くことにした。
まさか、前世の知識が乙女ゲームの世界でも役に立つとは。
ちなみにドレスを売る話はお父様に話をしており(お母様に話すと同行するとか言い出しそうだったのでお父様にした)、売ったお金は好きに使って良いと言われている。
「さぁて、このお金はどうしようかしら」
セリーヌは貴族のため、宝飾品の類はそれなりにあるし化粧品も一通り揃っている。
ドレスは三日前に買ったばかりだし。
このお金で、前世の夢を叶えてみる?
そう、前世の私には夢があった。
それは『保護猫カフェ』を作ること。
前世の私は猫好きが高じて、近所に捨てられていた猫を拾って飼っていた。
人間の身勝手な理由で捨てられた猫達は、過酷な環境下から、病気、事故等により長く生きられない事が多い。
私はその事に心を痛め、なんとかならないかと常々思っていた。
そこで知ったのが『保護猫カフェ』。
そこは、捨て猫や行き場を失った猫達の拠り所であり、新しい飼い主を探す場や猫好き達の憩いの場として提供されている施設だ。
私はお金があったら保護猫カフェを開いて、少しでも不遇な猫達を救いたいと思っていた。
しかし、運営となると継続的にお金が必要だし、万が一経営が傾いた時、保護猫達の行き場が再びなくなってしまう恐れがある。
それは何としても避けたい。
(うーむ。例えば、孤児院と併設して、寄付を募るのはどうかしら?)
この国の貴族は、平民から税を徴収する代わりに、慈善団体に寄付する等、何かしらの形で平民に還元をする事を求められる。
そのため、どんなに貧乏な貴族であっても寄付は義務化されているのだ。
(貴族制度がなくならない限り、寄付を募ればお金は手に入る。孤児院と併設し、孤児達を従業員として雇用すればお給料として孤児達にも還元が出来て自立にも繋がるわ)
寄付とカフェの売り上げ、ダブルで資金が確保出来れば経営も安定するだろう。
しかし、施設の運営となると私一人だけでは出来ない。
よし、お父様に相談してみよう。
* * *
「ーーという訳なのですが、お父様」
「…………」
私の話を聞いたお父様は目頭を押さえてそのまま黙り込んでしまった。
あ、あれ? いい案だと思ったんだけど、ダメだったかしら。
「セリーヌ、お前は本当に立派に育ったな」
「お父様?」
お父様の目が心なしか赤い。
え、もしかして、泣いている!?
「え!? あの、ごめんなさい、私ーー」
「セリーヌ、是非やってみなさい!」
「は、はいぃ!」
お父様の迫力に圧倒され、思わず声が裏返っちゃったわ、恥ずかしい。
しかし、お父様はそんな事気にも留めていないようだ。
「さぁ、そうと決まれば経営に精通した執事の一人をセリーヌに付けよう。細かな話は執事にすると良い。それと、行き詰まったり困った事があればお父様を頼るようにな」
「はい、ありがとうございます」
お父様の反応には驚いたけど、無事に話が纏って良かったわ。
よーし、これで保護猫カフェが作れるぞ!
前世の夢を実現させるために、早速自室に戻り計画を練ることにした。
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