第一章
第九話 僕らは今後について話し合う
アリスの怒りが収まってから、僕らは今後の方針について話し合うことにした。
「結論から言おう。僕は自分のいた世界に戻りたい。」
「ですが、戻っても植物状態のままですよ。」
「分かっているよ。だから、神々を脅迫できるネタをあげようと思う。それを引き合いに出して、彼らの許しを得て、元の世界での覚醒まで確約させる。」
というか、許しを与えるのは僕のような気もするが。
僕はアリスにどうしたいかを尋ねた。
「私は……、やはり何らかの形で自分の罪を
「彼らが君を無罪放免にするためにも、脅迫材料の確保が重要だね。なんだ、利害が一致しているではないか。単独行動は非効率だし、ここは協力しよう。」
「脅迫で許してもらうのは気が引けます。」
「彼らが聞く耳を持っているとは到底思えないけれど。」
「その点は、はい、同意しますが……。」
「アリス、残酷なことを言うようだけれど、天界への裏切りもまた、この世界でその罪を償って心に整理をつけるしかないよ。」
「そうですね……。」
彼女は渋々といった感じで納得する。決意が固まるまで、僕は黙って見守る。
「分かりました。踏ん切りをつけました。この世界でたくさん善行したいと思います。」
割り切ってくれて何よりだ。
「なら、まずは手始めに僕を性的に気持ちよくさせてくれ。それが今一番の善行だと思う。」
「あなたの舌を引っこ抜く方が、この世界にとって善い行いではないでしょうか。」
息子を引っこ抜くとか言わないあたり、本当に純情可憐な乙女なんだな。
「しかし、具体的にはどう行動しましょうか。」
「そこは、アリスの豊富なこの世界の知識を活用するんだよ。」
僕はさも当然というように回答する。正直、どの程度の知識量かはさっき言った通り、皆目見当がつかないが、僕よりましなのは間違いない。
「あなたにお話ししたことでおおむね全部です。まあ、魔法についてはさらに詳しく説明できますが、言ってもちんぷんかんぷんでしょうし、脅迫材料にもなりえないでしょう。」
「はい?」
思わず、聞き返してしまった。君たちはこの世界の創造主ではなかったのか? どうしてこの世界について表層しか知らないのだろう。
「不満そうですね。あなたの気持ちは分かります。しかしながら、私はキャリアが浅いのです。そもそも、私のような末端の神々は異世界の知識を知り過ぎないのが暗黙の了解になっているのですよ。この世界については特にそうです。私はこれでも博識な方なんですよ。」
おそらく、邪なるものの存在が関係しているのだろう。よほど闇に葬りたい代物のようだ。神々の世界への干渉が抑制的なことも、蓋をした臭いものに触れられたくないからかもしれない。
「だから、魔法使い見習いと言ってもピンとこなかったのか。」
「だから、その魔法使い見習いとは何なのですか?」
まずい。口が滑ってしまった。僕は咳ばらいを一つして回答する。
「まあ、世俗の欲望から一線を引いて、自分の精神を高みに導く修行者みたいなものだ。」
「それではあなたは一生見習いのままですね。というよりも、よく見習いから降格されませんでしたね。」
調子が戻ってきたのか、だんだん辛辣になってきた。
「反対に聞くけれど、よくロリやロリコンという単語は知っていたね。」
「それについては、以前こちらにお送りした方から伺いました。その後もあなたも含めて何人か同じ言葉を口にしていましたよ。」
なんと。この世界で同郷の人に会うことになるとは思っていたが、同好の人でもあったか。いやはや、先が思いやられるな。とりあえず、トップクラスの魔法使いに会ったらロリコンの可能性を考えなくてはならないのか。
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