最終夜 さらばスナッキーな夜、常松よ永遠に!第1話 三度スナック不二子へ
Wednesday
before a public holiday
PM:9:45
「次、行こうぜーー! どこにする〜?」
この日、会社の同僚2人と会社近くにあるな〜んの面白みもない居酒屋で飲むことになった。
旗日前日ということで、ただの居酒屋のくせに生意気にも2時間制となっていたため3人は追い立てられるかのように店を出たところ。
当然、飲みが足りていない状態だった。
「カラオケ行っちゃう〜?」
「いいねー! カラオケ行こう!」
「常松も行くだろう?」
「いや、俺はこのあと用事があるからもう帰るよ!」
「なんだよ〜。つき合いの悪い奴だなー」
同僚Aこと吉田山栄作(あだ名=A作)が口を尖らせる。
「え〜っ、ツネちゃん、もう帰っちゃうの〜。せっかく明日は休みなんだからさ〜、ボックス行っちゃおうよー」
同僚Bこと斎藤美作(あだ名=B作)にも引き止められるが、むさくるしい野郎だけで飲むこと自体、本来気が進まないというのに、増してこんなムサい野郎ども3人でカラオケボックスに行くなどありえない。
「ボックス行って、お前の得意なJOOWYの歌を聞かせくれよーー!」
「そうだよ。お前の歌がいくら下手でも笑ったりしないからさー」
「お前よりは上手いわ!」
「言ったなあ。じゃあ、お前と俺のどっちが上手いか勝負しようぜー!」
「おおーっ、イイねー! 栄作と常松のド下手王者決定戦かーー!」
「なんだとーー!おいB作!誰がド下手だってー」
「誰がって、お前ら二人のことだろ〜が」
「このやろう、お前は人のことが言えるのかよ」
3人のリーマンが夜の街中で戯れあっている。飲んだ後のモテない野郎どもによくある光景で、妙な悲哀を感じさせる光景だ。
そんなモテない野郎同士で戯れあうA作とB作から距離をとる。
「じゃあ、俺は帰るから、お前ら2人で仲睦まじく寄り添って歌ってこいよ」
「ツネちゃん、マジで帰るのかよー!」
「バカやろー! 俺たちをモーホーみたいに言うんじゃねー!」
「じゃあなーー!」戯れあう同僚AとBに別れを告げて帰路に着いた。
今夜、常松には確かめなければならないことがあった。
それは、少し前から通い始めたスナックのママの名前を確かめること。
店の名前は“スナック不二子”というのだが、店の名前とママの名前は同じなのであろうか?
普通の人にとってはどーでもイイことなのだが、常松にとっては非常に気になる謎であった。それはもうどうしてなのかはわからないのだが、その辺の都市伝説なんかよりも気になっていた。
不思議なことに気になりだすと知りたいと思う気持ちが日々大きくなり、すでに欲求が抑えられなくなってしまった。
仕事中であってもママの顔が、ふと脳裏に浮かぶほど気になってしまう。
病的なまでに知りたいと強く思ってしまう。病的というよりも最早病気そのものということなのだろうか。
もしかしたら、あの伝説の“S-ウイルス※”に感染してしまったのではないかと心配になるほどに。
某T—ウイルスはゾンビ化してしまうウイルスだが、S−ウイルスとは、スナック中毒になってしまう危険なウイルスだと一部のマニアの間で噂されているとかいないとか……。いないけど。
(あの店の名前“不二子”は、ママの名前とイコールなのかな……? イコールでなければ、いったい、彼女はどんな名前なんだろう?)
S−ウイルスにやられてしまった常松は、まっすぐ家には帰らずに謎を解き明かす使命を背負ってスナック不二子へと足を向けた。
※注:S−ウイルスとは、“後輩のまこっちゃん” こと、辻野まこととの舌戦中に話題に挙がった謎のウイルス
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