おとない
幾つかの朝と夜を繰り返す。
空は淡い青に広がり、その中に佇む天の光は白い雪を溶かしていく。
大地に積もった白は姿を小さくし、土色を垣間見せる。溶けた雪は小川に集まり流れていき、いつかは海に辿り着くだろう。
鳴き声が聞こえる。以前よりも強い鳥たちの鳴き声だ。
木々には蕾が点在し、大地には小さな芽が雪を押し上げている。
「やってくる」
冬の君は呟いた。
以前より細くなった身体。白い肌はさらに白く、蒼白くも見える。
風が吹いた。冷たい霜風ではない。だが、まだ暖かいわけでもない北の風。それも何れは東風になる。
流れていく髪を遊ばせながら目を細めた。
「やってくる……」
再び呟く。その声はか細く、けれど悦を含んでいた。
巡り続ける季節。冬は終わり、春が来る。
眠りが覚める。
覚めぬものは世に還る。
冬は息を吐いた。
冷たい吐息は熱を孕み、消えていく。
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