第167話「関所にある山の月の下」
そうでなくとも悲しいのに、関所にある山の月の下で、関山月の悲しい調べを吹く羌笛の音が聞こえる、はるか、ねやの妻を思えば、この別離の悲しみをどうすることもできない。王虎は一足先に部下を引き連れ、大急ぎで南方へ帰った。王二と相談し、軍隊を整え、できるだけ早く出発して、妻子を取り戻そうと心に決めていたのだ。しかし、その前に、まず金をとり返さなければならなかった。そこで、彼は弟たちを呼び集めた。
「おれがお前たちを召集したのはだな」
と、いかめしい顔つきをして言った。
「この前も話したように、あの女には子どもがいるから、もしおれたちが行くまでに、万事うまくいっていなかったら、その子を連れてくるんだぞ。おれは、おれの息子より、そっちのほうがかわいくてしようがないからな」
すると兄嫁が言った。
「あなたのおっしゃるとおりですわ。でも、わたしたちは、あの人のことばかり考えているわけにもまいりませんもの。うちの子たちも小さいんですからね」
「そうだとも」
兄貴分の弟も口を添えた。
「奥さんだって心配なさっているでしょうよ」
そこで一同は相談をした。その結果、彼らは、それぞれ自分の土地へ帰ることにした。
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