第158話「福をふやすには仏教がいちばん力がある」
「災難をなくし、福をふやすには仏教がいちばん力がある。人々を善に導き、生きとし生けるものに利益をあたえるのもまた、仏教におよぶものはない。平安はそう著書に残した。つまり、もし、この世に災いがないとしたら、人々はどうするだろう? おそらく彼らは怠惰になり、傲慢になって、悪をなすにちがいないと」
「なるほど……」
「つまり、そのように、仏法は人を善に導く教えなのである。それ故に、私は、仏法を学ぶことこそ、人生の幸福への道であり、また、人生そのものでもあると思うのだ」
「そうですね」
良子はうなずいた。そして、
「でも、お父さま、わたしはまだよくわかりませんわ」
と、いった。すると父は笑った。
「そうだね。まだおまえにはわからぬかも知れぬ。しかし、そのうちにわかるようになるよ」
父はそういった。そして、
「さあ、そろそろ帰ろうか」と、立ちあがった。良子があわてて、父のあとを追った。
玄関を出るときだった。良子の胸の中で、不意に何かが動いた。
(あれ……?)
良子は父を見た。父はふり返って微笑した。それはいつもの父の顔であった。だが、いま、なぜか急に父が別人のように思えた。
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