第120話「巻貝」

「巻貝」

と言って男が肩を掴んだ。

「え?」

「巻貝、巻貝、巻貝」

男が肩をゆする。

「何すんだよ」

「巻貝、巻貝、巻貝、巻貝」

「えぇ……」

「巻貝、巻貝、巻貝、巻貝」

「あぁもう!うるさい!」

肩を持たれた男は手を振り払った。男はその場に崩れ落ちる。

「あぁ……巻貝が……」

「は?お前、どうしたの?大丈夫か?」

「巻貝にならなきゃ……」

「おーい、聞こえてるかー?」

いきなり男が立ち上がった。その目は虚ろで焦点が合っていないように見える。そしてそのまま男に向かってきた。

「うわあ!」

男はその場から逃げ出した。しかしすぐに追いつかれてしまう。

「巻貝だ、巻貝になるんだ……」

男が肩を掴んで

「巻貝、巻貝、巻貝、巻貝……」

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