第97話「披毛戴角」

「披毛戴角。全身が毛で覆われ、角が生えていること。つまり動物。余念を交えず、思慮分別によってさとりの執着がない動物の存在に事故がなりきって修行すること。さあやれ!」

「いや無理っすよ」

「なんでだー」

「だって、この前俺と先輩は付き合ったじゃないですか」

「それがどうした」

「それなのになんで今さらこんなことしてるんですか?」

「…………」

「しかもなんか『さあやれ!』とか言ってましたけど、これもう宗教ですよね? 宗教をやってたら普通は交際しちゃいけないんじゃないですか?」

「うぐぅ」

「あと、なによりも」

俺は言った。

「先輩は、どうして俺と付き合いたいと思ったんですか?」

「えっと」

「答えてください」

「……」

「……」

「その、あれだよ。ほら、あれだ! お前、よく考えたら私のこと好きだろ!?」

「はぁ? そんなわけあるはずがないでしょうが!」

「じゃあ聞くぞ? お前は私と付き合うことになんの問題もないはずだ。なぜなら私は美少女だからな。お前は私のことを好きなんだから」

「……」

「違うのか?」

「……」

「おい」

「……はい」

「そうだろ?」

「はい」

「そうだろう?」

「はい」

「じゃあ問題ないだろう」

「……」

「なんだその顔は」

「いえ、あのですね」

「おう」

「……そうですね」

「おう」

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