第12話「戦前」

「法主殿にはまことにご苦労をおかけすることになりました」

とある国が外国に攻め入ることになり、宮殿の応接間で国王が法主と2人きりで話をすることになった。

「陛下のおやりになることは国を守りまた仏法を守るためであるのでなんの間違いもございません。かの国を滅ぼしたからと言って、戦いに赴く兵士も、留守を守る人々も、陛下も、誰も地獄には堕ちることはありません。すべての責任は私が負い閻魔の裁きを受けます」

「いえ、私も旅の道連れになりましょう。あの世で一緒になれる保証はありませんが、少なくとも私が浄土に行けよう道理などはない。地獄に行く覚悟はできております。それが民に殺生を命じた国王としての務めです。」

「古来よりのいかなる王も当時の聖者を悪人から守るために荒事はやったものです。あなたがおやりになることはそれと同じことです」

2人の話は朝まで続いた。

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