第13話 地下に潜む大喰らい

―――魔王城 地下―――


「驚きました。本当に会話されてますね」


 サスタスは驚嘆した。


「珍しいんですか、そのスライム語というのは」


 沖田はサスタスに尋ねる。


「珍しいといいますか、私が知る限り初めてですね。スライム語というのは」

「なんでそんなものフィティアさんは知ってるんでしょうか?」

「それが分かれば苦労はしません」


 サスタスは半ば諦めた表情で創士に笑いかける。


「話は付きました。この子お腹空いちゃって暴れちゃったんですって。それでね、この子のステータス見たらすぐに空腹になる状態なのよね。変な魔道具でも取り込んじゃったのかしら?」


 沖田は気になった事があったので小声で話しかけた。


(サスタスさん、ステータスってどうやって見るんですか?)

(いえ、聞いた事がないのでそもそも見るものなのかも分かりませんが、どうやら彼女は状態を確認出来るようですね)


「それでね、この子お腹満たせるなら協力するって」


 このデカさなら、相当量のゴミを溶かせそうだが、いいのだろうか?


「フィティアさん、ダメなものとかあるか聞いてもらっていいですか?」

「………。溶かせないやつは吐き出すから何でもOKだそうよ」

「ここに、後で入れ物を持って来るので、そこに吐き出してもらえるか聞いてくれますか?」

「………。大丈夫ですって」


 こんなにあっさり解決するとは思ってなかったので、少し拍子抜けしてしまったが、これはラッキーということにしておこう。



―――魔王城 オーガ居住地―――


 このスライム騒動の短時間でガンバスはちりとりとゴミ箱の試作品を作っていた。しかもちりとりの持ち手には紋様が彫ってある。作業速すぎるだろ!といつも思ってしまう。


「さて、ブラン王子。壁や床を掃除する前にあらかた目立つゴミを取っちゃいましょう」


 創士はホウキとちりとりでゴミを取りゴミ箱に入れる。


「こんな感じです。簡単でしょ?」

「これくらいなら、みんなにも教えれそうです!」


 食い散らかされたゴミを集めていく。すぐにゴミ箱は一杯になった。大きめのゴミ箱なので結構重い。


「あ、僕持っていきます」


 そういってブランは軽々とゴミ箱を持ち上げた。いくら小さいとはいえオーガがである事には変わりない。


(こんな可愛いのにパワータイプなんて…ナイスギャップ!)


 何往復か繰り返し、ざっと取り終わったので壁の洗浄に入る。待ってましたと言わんばかりにブランは張り切りだした。デッドアイと同じ轍は踏まないように、休憩時間は鍛冶場へお邪魔して服を乾かしがてら、身体を暖める。

 作業は何日か続き、休憩時間はブランと世間話をした。魔法の話、お姉ちゃんの話、庭園の魚に餌をやってる話、色々な話をした。第一印象は少し気が弱い子かなという感じだったが、結構おしゃべりな明るい少年だった。



―――魔王城 展望テラス―――


 その頃、デッドアイはオーリリーと共に魔王城上層の展望テラスにいた。


「なぁ気付いてたか。お前らがオーガ居住地に来てから監視されてたの」

「気づくに決まってんでしょ!あんな下手くそな覗き方してれば。」

「それな!本人は気付かれてないとでも思ってるのかねぇ?」

「まぁ…ムルトゥの事だし、思ってるんじゃない?」

「どーせエーデルの差し金だろうけど…どうする?」

「放っておきなさい」


 真っ暗な空を眺めると、何かの暗示のように雷が鳴った。


―――魔王城 オーガ居住地―――


 掃除をしている創士とブランを見つめる人影があった。気付いてはいたが、邪魔するわけでもないので見学させておく事にしたのだが…。


(さすがに3日連続だと気になるな)


 創士は手を止め、人影に向かって叫んだ。


「こんにちわ〜!よかったら一緒にどうですか〜!」


 人影は慌てふためいて逃げ出そうとするが、壁に激突してバタンと倒れてしまった。創士とブランは倒れた人影に駆け寄り心配そうに声を掛けた。


「あの〜…大丈夫ですか?」

「……ハッ!な、なして気付いただ?」

「いや、まぁ見えてましたし」

「はわわわ…お嬢に怒られるだ〜」


(ほわぁ〜!エ、エルフだ〜!念願のエルフ…なんだけど…)


「方言!」


 悲しいかな、自分のエルフ像が崩れていく。それに、着ている服が見覚えのある格好だ。


「なんで探偵…っていうかシャーロックホームズみたいな格好してるの?」

「真相を暴くならこの格好って本に書いてあっただよ」

「なんの本ですかそれ…」

「フィティアに貰ったんだぁ、『お仕事からアニメまで、自分で作ろうコスプレ大全集』って本だぁ」

「コスプレって…完全にこっちの世界のやつじゃないですか!それでそんな格好を。自作ですか?」

「んだ」

「結構クオリティ高いですね」

「初めて褒められただよ…」


 エルフは涙ぐんでいる。


「もしかして服作るの得意だったり?」

「まぁ趣味程度やけどなぁ!」

(これはもしや、ガンバスが出来なかった服飾系の職人ゲットか?もう少し探ってみるか)

「もし良かったら、今度違う服も見せて欲しいなぁ…」

「ほ、ほ、ほんまに⁉︎すぐ持ってくるけん!待っちょれ!」


 爆速で駆けていくエルフ。それにしても方言が混ざりすぎて何が何だかわからない。


「ブラン王子、今のって誰ですか?」

「彼女は第5王女のムアモ・ムルトゥさんです。いつも変わった格好をしてたんですけど、沖田さんの世界の格好だったんですね」

「王女…なんかこう普通の王女はいないのか!」


 ブラン王子は苦笑いで誤魔化した。

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