第12話 作業計画はしっかりと
「つまり、僕が掃除のやり方を覚えてそれを教える、って事ですか?」
創士はコクリと頷いた。
「ぼ、僕なんかに出来るでしょうか…」
「大丈夫!小学生でも出来るんだから」
「ショ…ショウガク…?」
「ああ!えーっと…子供、そう!こっちの世界では子供でも出来たから大丈夫!」
「そうですか…」
ブラン王子は自信なさげな顔をしている。
「とりあえず道具を取って来るから、この辺で待ってて」
「わかりました」
創士のプランはこうだ。まずブラン王子には掃除の楽しさを覚えてもらう。これはデッドアイと同じように廊下を洗ってもらい、汚れを落とす快感、綺麗になる満足感を味わってもらう。
第二段階はホウキを使った掃除方法だ。これはゴブリン達に教える清掃方法である。魔力を使えない者達に掃除をさせるにはホウキか雑巾拭きが分かりやすい。雑巾はまだ調達の目処が立ってないのでホウキでゴミを掃く、そして捨てるという基本を叩き込みたい。捨てる所は…またサスタスに相談だな。
「お待たせ。まずはこのウォーターガンを使ってみよう」
「え!これで『ウォーターガン』の魔法が撃てるんですか?」
「ウォーターガンってのはアイ王女が付けた名前ね、実際この中で発動してるのはウォータースプラッシュ?だったかな。それを出口を小さくする事で圧力をかけて汚れを吹き飛ばすんだ」
「きっと『スプラッシュウォーター』ですね。低級の魔法です。ちなみに『ウォーターガン』は中級魔法ですね。僕は使えません」
「へぇ〜勉強になるなぁ。また今度魔法について教えてよ。全く魔法の事知らないからさぁ」
「はい!是非!」
ブラン王子は目を輝かせて答えた。
「それでこのウォーターガンなんだけど、魔力を流し過ぎないようにね。アイ王女が魔力強めに流したら壁に穴が空いちゃった」
「さすが…アイちゃんらしいですね」
「こんな感じで……上からが基本かな」
「上からですね、分かりました」
ブラン王子が詠唱を始めると宙にふわっと飛び上がった。ゆっくりではあるが上まで上昇しウォーターガンで壁を掃除し始めた。
「すごい!面白いくらい汚れが落ちますね!」
下まで撃ち終わると、自分が綺麗にした所を見てブラン王子はウンウンと頷いた。
「ブラン王子、飛べるんですね…」
「いや、僕のは『浮遊』の魔法です。飛び回れる『飛翔』は、まだ使えません。でも掃除くらいだったら浮遊でも大丈夫かなと思って」
「凄いですよ王子、羨ましい!」
エヘヘ、と照れるブラン王子のなんと可愛いことか!本当に王子なのかと疑いたくなる。
「とりあえずウォーターガンは一旦置いといて、次はホウキですね。こうやって掃いてゴミを集めて…しまった!」
創士は思い出した。ちりとりとゴミを捨てる所を確保していない事に。
「どうしたんですか?」
「集めたやつを捨てる所とそこまで持って行く為の道具を作ってもらうの忘れてた…」
「それならスライムを…」
「いや!その方法は可哀想だからダメ!」
創士は再びガンバスのもとへ向かう。
―――魔王城 ?の部屋―――
「アイは、あの人間と何をやろうとしてるんだい?」
「掃除じゃろ?」
「…私が聞きたいのは掃除をして『何を』企んでるのかって事よ!」
「そげなこと、オラには分からんがね」
「あなた本当に使えないわね。頭の中、男の事しか考えてないの?」
「そんなに褒めんといてください!」
「褒めてないわよ!とにかく、あの2人には注意しておきなさい」
「わがった」
「あなた……本当にめんどくさいわね。方言が多すぎるのよ!統一しなさい!統一!」
「仕方ねーべよ、コレも愛の印だべさ」
「染まり過ぎなのよ!男に!自分の意思を持ちなさい!」
「……!」
「……!」
―――魔王城 鍛冶場―――
サスタスも合流し、ちりとりとゴミ箱の説明及び発注をかけた。そしてここからがサスタスの知恵を借りなければならない本題。ゴミ処理場問題である。
「つまり集めたゴミを何かしらの方法で消さないといけないという事ですね。沖田様の世界ではどうされてましたか?」
「燃やしてるかな?」
「そうなると、かなり大きな炉を作るとか、もしくはノーケラ火山に放り込むとかですかね?」
「火山は近づけるんですか?」
「そうですね…火口までは行けますが、ゴミなんか捨ててたら火の神ペザナレに殺されるでしょうね」
(笑顔で怖い事言うなぁ…)
「でも炉だと灰とか凄い事になりそうですね」
なかなか解決策は見えない。
「あ、あの〜…」
「どうしました?ブラン王子」
「的外れだったらごめんなさい。ちょっと思った事があったので」
「いえいえ、たとえ的外れでも意見を出していただく方が助かります」
「あの〜、燃やすんじゃなくて溶かすっていうのはダメなんですか?」
「溶かす?」
「確かヒュージスライムが封印されてましたよね?」
(またスライムかよ!)
サスタスは思い出したと言わんばかりの表情でこちらを見た。
「確かにその手がありましたね。しかし大丈夫なのかどうか…」
僕は何か不安があるのか質問した。
「あのスライムが封印されているのには訳がありまして、昔あのスライムが魔王城で暴れ狂った事がありまして、何でも飲み込んで消化してしまうものですから、これ以上被害を出さない為に封印、というよりも鎮静化させたのです。もしゴミを入れたらどうなると思いますか?」
「怒る…かな?」
「私もそうなるんじゃないかと懸念してます。意思疎通が図れれば良いのですが…」
みんなで眉間に皺を寄せながら考え込んでいると、突然背後から絶世の美女が顔を覗かせた。
「お困りのようね」
「フィティアさん⁉︎」
「私できるわよ?」
「な、何がですか?」
あまりにも唐突に気配も感じさせず登場したので、まだ心臓が飛び跳ねている。
「ス・ラ・イ・ム・語」
一同が頭にクエスチョンマークを付けた瞬間だった。
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