第6話
可愛い姿形だが彼らは付喪神だ。斉程度どうにでもできる、力のある存在だ。怒らせてはならないと祖父や父から言いわれている。
生れた時から優しく傍に居た彼が、今まさに斉に対して怒っている。
頭から血の気が引いた斉だったが、知りたいことが多いので、ゆっくり問いかける。
「そ、そもそも。どうして冬に姿を見せたんだ? よほどの事が無い限り、自身の正体を明かすことはしない、って。父から聞いてるけど」
あおたろうはくるっとした目に憤怒を紛れ込ませながら、静かに告げる。
「今回は、ほんっとうに危なかったんですよ主さま」
「?」
「今日、冬さまが主さまとの縁を切りに神社に向かわれました。祈りの時、丁度、運悪く、こちらを振り向いた氏神さまが冬さまを視まして。あそこへは何度も通われており、僕のことも存じておりましたゆえ。面白がって願いを叶えようとしてくださいました」
「……え?」
事態がすんなり飲みこめてしまい、斉の顔が真っ青になる。
「冬との、縁を、切られた?」
「回避しました。僕が冬さまの願いを叶えるので問題ありませんと。恐れ多くも、願い出させて頂きました」
ぶるっとあおたろうが身をすくめる。下手に機嫌を損ねると消されるのはあおたろうの方だ。必死だったとはいえ、今考えても肝が冷える。
「なので。冬さまが憂う原因になっている主さまに、それ相応の罰を受けて頂きます。あかじろう」
「その言葉を待っておりました。そろそろお仕置きが必要と感じていたところ。幸せな家庭を築く為。主様の女遊びを更生させるべく、あかじろうは嬉々として心を鬼にしましょうぞ!!」
ドヤァァァ!
と、あかじろうは輝くと、「ひぃ!」と斉が小さな悲鳴をあげた。
「頼みますよあかじろう。この度の主さまは『つるべえ』や『さだお』よりも顔や性格が良い分、女難が色濃い。冬さまの伴侶となるべく素晴らしい花婿にしたてなさい」
「勿論ですあおたろう! あかじろうさまの腕が鳴る!」
話は済んだとばかりに、あかじろうはスッと両手を上に挙げた。
「!?」
斉はすくっと立ち上がる。自らの意志とは無関係にその場から歩かされる。
「あお、あおたろう!? さ、最後に一つだけ!!」
「なんでございましょう?」
「冬の声が、一言、聞きたい!!!!」
あおたろうはニコッと笑って、右手でさようならと手を振る。
「主さま。今日はお帰り下さい。通報されて前科が付くのはいけません」
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」
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