叔母・仁美の話

 久しぶりね。ますます義姉さんに似てきたじゃない。もう二十五歳になるの?

 私も年をとるはずだね。兄貴、元気にしてる?


 母について?

 何が聞きたいの?

 どんな人だったか?

 うーん……。

 孫の貴女には話すべきじゃないのかもしれないけど……。

 上っ面の思い出話が聞きたいワケじゃないんでしょ。じゃなきゃ、ワザワザ片道三時間もかけて訪ねてきたりしないよね。


 いけ好かない女だったよ。

 大嫌いだった。

 兄貴は懐いてたけどね。

 兄貴にはとにかく甘い人だったから。

 私のことは、嫌ってたんじゃないかな。いや、本人はいてるつもりだったのかもしれないけど。

 自覚無かっただろうね。

 別に虐待されてたとかじゃないわよ。

 うまく言えないんだけど、私は実家にいる時は、少しずつ心を削り取られてくような感じがして居心地悪かった。

 まあ、相性がとことん合わなかったんだろうね。

 ほんの些細なことだらけなのよ。

 何かにつけて、自分の気に入らない道を私が選ぶと、こっちが考えを変えるまでずっとくさすの。そして失敗すると「やっぱりねえ」って。

 それをね、ずっとニコニコした顔で言ってくるのよ。いつもね。

 服のセンスとか、勉強の仕方とか、どんな本を読むかとか。

 本人は本気でこっちのことを思って声をかけてるつもりなんだよね。それか、愛のあるツッコミか。

 いっつも笑って言うもんだから、端から見てるとそれが攻撃に見えにくいんだよね。

 子供の時は、母といる時の息苦しさをうまく言葉にできなくてしんどかったな。むしろ、周りの人達は子供を可愛がる良い親だって思ってたんじゃないかな。

 兄貴みたいに気に入った相手にはただ優しいだけだし。


 ここまで話して、気を悪くしないでほしいんだけど……お義姉さんね、どっちかっていうと母に攻撃されやすいタイプの人なんじゃないかなって思うんだ。

 だから、母が生きてた間は苦労したんじゃないかな。

 兄貴は鈍感だしね。



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