第17話
ハル様が怒鳴ったことによって、その場は水を打ったように静まり返った。
「…ハル様?」
「お前のその行為には、もううんざりだ! お前みたいな女がこのボクに釣り合うとでも? うぬぼれるのもいい加減にしてくれ! ボクの恋人だと勝手にデマを言いふらして、ボクを困らせるな!」
そうまくし立てたハル様に、一同、恐怖。
麗も、こんなハル様の姿見たこともなかった。
ぞわっとしたので、腕を見てみたら、鳥肌が立っていた。
「うっ…うえええええん! ハル様がおこったぁぁああっ!」
反省しておとなしくなるかと思ったら、逆効果。
さらに泣き出すコナさんに、みんなドン引き。
「わかりましたっ! 実はコナよりもこの女の方が好きなんでしょ? だからコナにひどいこと言うんだぁ!」
「そうだよ」
「へ?」
コナさんの言葉に、ハル様が即答した。
その言葉に、またその場は静まり返る。
「…僕は、レイちゃんが好きだ。その女じゃない。レイちゃんだ! 初めて話しかけたとき、ほかの女どもみたいに落ちると思ってた。ボクのチイセの誘いにもすぐに乗るとおもっていた。でも、レイちゃんはむしろ迷惑そうにしてた。ボク、冷静に見えたかもしれないけど、実はすごく驚いていた。そして、そのあとも何とか落とそうとしても、全然落ちないレイちゃんを見てたら、ボクの方が落ちちゃった…」
そうはにかみながら話すハル様。
さっきのムードから一気に甘々な空間へと様変わり。
だが、ハル様を嫌悪している麗が、そんなムードに乗って、
『えっ…キュン…あんなひどかったハル様の行動も、好きっていう気持ちの裏返しだったのね…(ハァト)』
なんてなるはずもなく、
「えっ…ええええ…」
と、ドン引きムード真っ盛りだ。
「えっ…」
その言葉を言ったコナさんも、硬直。まさか本当にハル様が麗のことを好きだとは思わなかったのだろう。
「ハル様っ! 嘘っ! 嘘ですよねっ! 私にヤキモチ焼かせたくて、いったんですよねっ!」
焦ったその言葉には、慌てているのが見え見えだった。
「ほんとだよ。ボクに惚れてくれたのはうれしいけど、ボクの惚れた人の邪魔をするなら…」
そこで言葉を切り、コナさんの耳元に口を当て、何かをささやく。
その言葉を聞いたコナさんは、みるみる涙をため、本当に泣き出して、走り去っていった。
「…なんて言ったんですか?」
麗が苦虫をかみつぶしたような表情で言う。
あの何を言っても聞かなかったコナさんが、泣きながら走り去るほどのことを言ったのだろう。
「ボクの気持ち、受け取ってくれるなら、言ってもいいかなぁ…」
と、ふざけたように言ったので、
「あっ、じゃあいいです」
と、断った。
それから少しの沈黙が訪れた。
解決した後、何を話して、どう戻ればいいのかわからなくなってしまったのだ。
とりあえず、何か適当なこと言って戻って仕事しようと思った麗が言いかけようとしたとき、
過激派3「あの…」
過激派衆「好きですっ! あなたを推しにさせてください!!!」
過激派衆が麗の目の前に来て、麗に頭を下げた。
「はぁ…?」
麗はまたも苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「…あなたたち、コナさんが好きなんじゃなかったんですか? せっかく振られたばっかりなんだから、アプローチすれば意外と意外だったりするかもしれませんよ?」
過激派2「いやあ…あの様子を見てしまったら…」
過激派衆「ねえ…」
どうやら過激派衆は、みんなコナさんの姿を見て、さめてしまったらしい。
過激派5「レイさんは、業務を妨害されているというのに、冷静に反対できるその精神! 」
過激派8「そして見た目!」
過激派6「そして、ハル様の言葉を冷静に分析できるそのお心!」
過激派8「そして見た目!」
過激派7「ハル様を目の前にして、目をハートにしない方も、初めて見ました!」
過激派8「そして見た目!」
「いやなんなのそのちょくちょく入るの…」
そう詰め寄られる麗を守るようにして、マリさんとハル様が立ちはだかった。
「レイちゃんにつきまとうつもりか?」
「もしそうだとしたら…わかるわよね?」
過激派衆「ひっ…」
二人の形相に、過激派衆はみんな一歩後ずさる。
「いいですよ、二人とも」
そんな二人の間をかき分け、過激派衆に近寄る。
また過激派衆は、一歩下がる。
「好きにしてください。ただし、私の営業の邪魔をしたら、すぐに訴えますよ」
過激派衆「はっ…っはいいいいいっ!」
よろこびか恐怖かはわからないが、そう叫んで、猛ダッシュで逃げていった。
まだ野次馬がいたので、その勢いでそこをにらむと、みんな一目散に去っていった。
「ふぅ…今日は客は来なくなるかな…」
「おつかれ…怖かったぁ…」
さっきの迫力はどこへやら、麗もマリさんも疲れ切っていた。
そこへ、ハル様が近づいた。
「二人とも…今日は話があってきたんだ」
そう切り出したハル様に、二人は敵意の目を向ける。
さっきの迫力が戻ってきた。
「そんな目を向けないでよ…国王が会いたいって言ってるんだ」
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