第7話
『……ワタシの説明は以上です。何かご質問はありますか?』
説明が終わると、麗は気になっていたことを質問した。
「鑑定士にも階級はあるの?」
『ハイ。階級の数が多いほど低く、少ないほど高いレベルとなります』
「へぇ……」
「わかったかい?」
「はい。大体は」
「じゃ、鑑定士に必要なスキルポーションを飲んで」
ミアさんが一つの玉を渡してきた。
「これが、ポーション?」
「そうだよ。そんなこともしらないのかい。今までどこで育ってきたんだい」
地球です……とは言えない。
「ま、これを飲めば大体の鑑定士のスキルはつくから」
麗は思い切って口に入れてみる。
……甘い。
麗は甘いものが大好きだ。ころころなめる。
「いつまでなめてるんだい! 早く呑み込んじまいな!」
「まんれれふか?」
なぜか焦った様子のミアさんに、麗はのんきに聞いた。
「早くしないとスキルが消えちまうんだよ!」
「……っ!!!」
そういわれた麗は、慌てて麗は呑み込む。
温かいものが、麗の身体をまとった……気がした。
力がどんどんわいてくる。
「おおおおおっ」
「何感動してるんだい。この世界じゃ、これが常識じゃないかい」
別世界から来たからそんなの知らない……とは言えない。
「すみません無知で」
「ほんとだよ。ほら、試しにステータスを開いてみな」
「は」
ステータスを開くと、『無職』が、『鑑定士』に変わっていた。
スキルとして、『万物を見る目Lv.1』と、『器用さLv.1』という特殊効果がついていた。
「ちゃんとついているのかい?」
「はい。ついていました」
「そうかいよかったよ。じゃ、一級鑑定士紹介しとくから、早く行きな。ペアが欲しいって言っている鑑定士はごまんといるんだ。誰か気に入ったやつにくっついちまえ」
「ええ……」
「さ、早く行きな!」
実際に外に出てみると、確かに多くの人が、職業屋に集っていた。
(ここの街、意外と男性もいたんだな)
麗はこれまで、最初にぶつかってきた男たち以外には、男性を見かけていなかった。だが、ここに集っている人々のほとんどは、男性だ。
「あ! レイちゃーん!」
人ごみをかき分けて、フロラがやってくる。
「なんの職業になったの?」
「鑑定士」
麗がそう答えると、フロラはあからさまにガッカリした表情を見せた。
「……何? 鑑定士じゃ悪かった?」
「いや……ね……大体の職業は、新しく職業についた、いわゆる『初級者』には、ベテランの『上級者』がついて、しばらく生活するのが決まりなんだけど……同じ職業だったら、私ができるじゃん?」
どうやら新入りにベテランがつくのは、鑑定士に限ったことではないらしい。
「フロラの職業ってなんなの?」
そういえば、麗に職業につけつけ言っていたのに、フロラはなんの職業についているのかを知らない。
「私は冒険者だよ! といっても、時々簡単なクエストを受けて、その報酬で食べていくだけだけどね!」
「ふうん」
(フロラが冒険者……なんか合ってるかもな)
「あ……あの! あなたが、新しく鑑定士になった、レイさん?」
一人の女性がはなしかけてきた。
その人は、麗やフロラよりも同い年、または少し上くらいの見た目だ。
「え? あ、はい、そうですけど」
麗がそう言うと、その人はもじもじしながら、
「あの……私とチイセになっていただけませんか?」
「……チイセ?」
「ああ……チイセというのは、一緒に活動を共にする、上級者と初級者二人の呼び名です。私とチイセになっていただきたい、つまり、私と活動を共にしてほしいということです。」
「はあ……」
(どうだろうか……年も同じくらいなのにこんなに早くに上級者になれている……かなりすごい人かもしれない。この人なら、フロラもおそらく大丈夫だろう)
「では……
よろしくお願いしますと言おうとすると、今までずっとそわそわしていたたくさんの人が、麗のほうへ押し寄せた。
「いやいやいやいや! 僕と組んでください!」
「僕とチイセになれば、あなたはなにも困りません!」
「きみの瞳に惚れました! 僕と付き合ってください!」
一人、チイセのお誘いではない人がいたが、めんどくさいので無視をする。
何とかそのごたごたを抜けて、部屋の隅に隠れる。
「無視するなんてひどいじゃないか。もっとかまってあげたらいいのに。ここにいる人は、みんな頭がよくて、君を不幸にする人なんていないと思うけど?」
上からそんな声が降ってきて、さっと顔を上げる。
見てみると、ひとりの男性が、麗を見下ろしていた。
陰でよく見えないが、かなり顔の整った人だ。
「どうもこんにちは」
「おいおい、棒読みじゃないか。この僕の顔をみて、そんな反応をするのは君くらいなもんさ」
(あー、私の苦手な展開きたー……これ、絶対気に入られて、つきまとわれるタイプじゃん。おもしれえ女とか言われて、いろいろちょっかいかけてくるめんどくさいやつ!)
「君、おもしろいね。僕とチイセ
「お断りします」
「僕だって、ただ鑑定士をやってるだけじゃ
「丁重に、お断りいたします」
「君だって僕と
「お断りいたします!」
「……ふはっ、これはだめだね。わかった。あきらめるよ」
そういうと、見下ろしていた顔を上げ、
「みなさん! レイちゃんはここにいますよ!」
と、店中に響き渡る大声で言った。
「なっ!」
「レイちゃーん!」
どたどたと近づいてくる足音に恐怖を覚え、さっと隅を抜けて店を出た。
店をでても、まだ追いかけてくる。
(あの野郎! 許さない!)
追いかけられながら、麗はあの男にまた会ったら、絶対に仕返しをすると誓ったのであった。
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