第8話 What name for?
名前は何のためにある?
ウィリアム・シェイクスピア「ロミオとジュリエット」より
母が帰ってから、母が持ってきた作り置きのおかずを、ひたすらごみ箱に放り込んでいく。
食材廃棄で無駄になる食料で飢える人たちを救えるほどの分に匹敵するというけれど、わたしにとって母からの差し入れは毒である。愛という名の。
昔からそうだった。糖質制限、正確には夜に米を食べるのをやめる、と伝えた時はあの手この手で米を食べさせようとした。
コロッケが食べられない、もうお腹いっぱいで吐きそうな時には、コロッケを食べ終わるまで食卓を離れることをゆるされなかった。
そんなくずによる食卓は、さらなるゴミによって中断される。
生みの親からの電話だ。
奴らは友達がいなかったのか、何時間でも話し続ける。決まって、育ての親と楽しく話している合間に電話が入る。電話を切る、断るという選択肢が奴隷にあると思うか?
あれから30年近く経った今も、波国では電話が主流だ。公僕宛の問い合わせ先は必ず電話だ。
つまり、公僕として、電話が苦手なのは致命傷だ。ちめいてきなじゃくてんだ致命的な弱点だ。
それでも人は、公僕の電話について文句を言う、
まぁ、仕方ない。傍目から聞いていてもひどいのしかいない。だからと言って改善されないのは、奴らが、いや、わたしも含め、ケーキを切れない役人だからだ。役人はケーキを切れない。
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