第2話 遭遇?
「うわっ、
ここ最近、生徒が出入りしているせいか……旧校舎のドアはあっさりと開いた。
あまりの静けさに、言い知れぬ不安が押し寄せてくる。すぐに引き返すつもりが、そこは新聞部の端くれ。少しでも絶好のポイントを押さえるべく、監視カメラの設置場所をあちこち探し回る。
「お、ここなんて良さそうだな」
2階をウロウロしていると、良さげなポイントがあった。ここならいい検証動画が撮れるかもしれないと、さっそく三脚を立て、カメラを設置していく。すると……。
【オマエ、オトコカ】
「うっ」
背後から暗く重たい声がした。ピキーンと、金縛りにあったように動けず、声も出ない。ゾワゾワゾワゾワゾワ、虫がさざめくような、ノイズのような、そんな音が響いている。
ううっ……何かに睨みつけられているような、緊張状態。しばらくその場から動けないでいると、その音は興味をなくしたかのように、どんどん遠ざかっていく。
「はぁはぁ……っはぁ」
緊張の糸が解け、だいぶラクになった。体も動く。俺は、急いでカメラを起動させ、逃げるように階段を駆け下り、旧校舎を飛び出した。
♢♢♢
「おはよう~……ん?」
翌日、登校するなりクラス中がざわついていた。教室に入っても、誰もこちらに気づくこともなく、ソワソワと話し込んでいる。
「ねぇ、聞いた? また行方不明者だって」
「2組の女子だろ? これで何人目だよ」
「マジで、そろそろヤバくない?」
「朝から緊急職員会議だって」
席に向かいつつ、聞き耳を立てていると……どうやらまた昨日、女生徒2名が失踪したらしい。それも旧校舎に肝試しに行くと言って。
それから始業開始時刻になっても、なかなか授業は始まらず、担任も現れない。
「錦見ー!」
「おわっ!」
別のクラスのはずのリリスが、俺の教室の後ろのドアを、勢いよく開ける。みんなが驚く様子を意にも介さず、リリスが駆け寄ってきた。
「スクープよ、スクープ。今から警察が現場に来るんだって」
「け、警察!?」
さすがに事態を重く見た学校側は、これ以上被害を出さぬよう、ついに通報をしたらしい。パトカーまでやってきて、校内はえらい騒ぎとなった。やじ馬で皆が旧校舎を見に行き、旧校舎の調査風景を見ている。
♢♢♢
「ウヒョー! こりゃあ、明日の一面記事確定ね」
野次馬の生徒たちと共に、俺たちは警察が現場検証をしている旧校舎を見に行った。テレビで見るような黄色いテープも巻かれており、現場は封鎖される模様。
リリスはその様子を嬉しそうにカメラでパシャパシャ取っているが……そんな中、俺は昨日の声が気にかかった。
(やはり、得体のしれない何かがいるのかもしれない)
俺の感が正しければ、あれは生きている人間の声ではなかった。何かもっとおぞましい、そう、例えるなら怨念のような。
「コラッ! お前ら! 教室で待機していろ!」
「やばっ、先生きた。引きあげよ、錦見」
「……」
「錦見!」
「え? あ、ああ」
教師の怒号に、野次馬で来ていた生徒はみな蟻の子を散らすかのように退散。俺も教室へと逃げかえった。結局、今日は休校となりすぐさま生徒たちは下校する運びとなった。
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