第6話 坊主めくり(色んな意味で)で美少女茶巾寿司

「くっ……、この……!」

 モート爺さんは狙いをつけてビショップ・フィッシュに銛を打ち込んだ。

「ピギャエエェェエエ!!!」

 銛はビショップ・フィッシュの尖った頭に隠れた、下の方にある目にぶっ刺さり、ビショップ・フィッシュが奇声をあげて、激しく水面をのたうち回る。


「見たか!」

 だが、暴れ回ったビショップ・フィッシュは、その強大な力で体をひねり、その力にあらがいきれなくなったモート爺さんから、掴んでいた銛をその手から奪ってしまった。

ビショップ・フィッシュごと素早く海を漂うモート爺さんの銛。


「くそっ!!ビショップ・フィッシュめ!

 この魚だけでなく、ワシらのことも食うつもりだな?」

 残った釣り竿なんかじゃモート爺さんにはもうなんにも出来ない。俺はモート爺さんを退かそうとしたけど、どいてくれなかった。


「プギイイィイ!プギプギイイィイ!(モート爺さん!そこどいてくれ!)」

 モート爺さんが近すぎて、俺が魔法攻撃を放てねえんだよ!爺さんに当たっちまう!

 だけど、豚にも人間にも届かない俺の声は、当然モート爺さんにも届かなかった。


「──なめるなよ、化け物ふぜいが。

 なぜワシが伝説の漁師と呼ばれているのか、お前たちに見せてやる。

 くらえ!ヅラスラッガー!!!!!」

 言うが早いか、モート爺さんは自らの髪の毛をムンズと掴んだかと思うと、それをブーメランのようにビショップ・フィッシュへと放った!!


( ゜Д ゜)


 俺、ポカーン。

 バシュバシュバシュッ!!!!!

 モート爺さんの放ったヅラは、小舟にくくりつけられた巨大魚をくらおうと、海面に頭を出していたビショップ・フィッシュの頭を立て続けに真横一直線に切り裂いた。


 伝説ってそっちの意味でかよ!

 大量の血しぶきをあげて、頭を半分に切られたビショップ・フィッシュがゆっくりと海に沈んでいき、モート爺さんは、手元に戻ってきたヅラスラッガーなる、ブーメランをパシッと受け止めて、何ごともなかったかのように頭にかぶり直した。


 てかそれ、俺が2まで見たB級映画の主人公の刑事の必殺技じゃねえか!

 現実に使えるヤツ初めて見たわ!

「怖かったな、もうだいじょうぶだ。

 さあ、獲物を持って村に帰ろうか。」

 モート爺さんが笑顔で俺に言った。

 あ、うん……。ソウデスネ……。


 海は静かに戻り、俺たちは再び小舟の上で、村の近くの海岸につくまで、のんびりと小舟の上で過ごしたのだった。

 小舟が岸に近付くにつれ、ワアアアア!という歓声が近付いてくる。ん?

 どうやら村人たちがモート爺さんの小舟に気がついて集まって来ているようだった。


「モート爺さん!」

「あんたならやってくれると思っていたよ!これで娘たちは救われる!」

 ビンタ君や村の人たちが、岸につけられたモート爺さんの小舟に集まって来る。

 遠くで朝の若い漁師たちが、苦々しげにこちらを睨んでいた。


「ああ。コイツを持って、早く娘っ子たちを取り戻しに行こう!」

 取り戻す?なんのことだ?

 俺がそう思って首をかしげた時だった。

「いやああぁ!お兄ちゃあん!」

 ボーレちゃんの泣き叫ぶ声がする。

 ボーレちゃん!!!!!


「さあ、約束だ、この娘は貰って行くぞ。

 約束よりだいぶ過ぎてまで待ったんだ。」

 泣き叫ぶボーレちゃんの手首を掴んで、無理やり引っ張り上げている、風邪用マスクにマント姿の、黒髪の顔色の悪い怪しい男が、そう言ってボーレちゃんを掴んだまま、空中に浮かび上がっているのが見える。


「待て!待ってくれ!

 約束のランド魚は用意した!

 娘たちをかえしてくれ!」

 モート爺さんが小舟にくくりつけられた巨大魚を指差しながら、怪しいマント男に向かって叫ぶ。だけど男はチラッと巨大魚に目を向けたけど、


「ひとあし遅かったな。期日を過ぎてだいぶ待ったんだ。もうその魚は必要ない。

 そもそも儀式の期限までに得られなければ意味がないものだ。

 受け取ったところで、我にとって今やそれはただの食料に過ぎんのだ。」

 と言った。


「そんな……、じゃあ娘たちは……。」

「もちろん返さぬよ。約束をたがえた罰としていただいていく。この娘もだ。

 この先100年のあいだ、娘が生まれればいただいていくから覚悟するといい。」

「お兄ちゃん!お兄ちゃーん!」


 あれよあれよと言う間に、怪しいマント男は空中高くに浮かび上がったかと思うと、次第に遠ざかって行ってしまう。

 逃がすかあああ!!!

「ブギィィイイ!!」

 俺は地面を蹴って近くの木に飛び移り、更に枝を蹴って空中に飛び出すと、怪しい男のマントに噛み付いた!


「プゴップゴゴゴ!(かえせ!ボーレちゃんを!)」

「豚が!豚が飛びかかったぞ!」

「……ふん。わずらわしい。まあ、しょせんは豚よ。なにも出来まい。」

 そう言うと、怪しいマント男は村人たちの前で、俺と噛み付いたボーレちゃんを連れたまま、空中でふっと姿を消したのだった。


「──おい、ロード様が連れてきた豚、どうやって料理する?」

「そうだな、まだ子豚だし、肉も柔らかいだろうから、それを活かした料理にしたいよなあ……。保存しても軟らかそうだし、じっくり長いこと楽しめそうだ。」


 食べる!?俺を食べる!?

 ハッと気が付くと、俺は恐らく厨房らしき場所で、雑談をしながら相手の方を向いている料理人に、水をかけられたかと思うと、ゴシゴシとタワシで体を洗われだした。

 痛い痛い痛い痛い!

「プギイイィイ!!!」


「あっ!豚が逃げ出したぞ!」

「捕まえろ!」

 俺は無理やり身をよじって抜け出すと、厨房から一目散に外へと逃げ出した。

 ここはさっきの怪しいマント男の住みかなのか?ボーレちゃんはどこにいるんだ?


 石をつんだような壁の、恐らくは城なのだろう。ずいぶんと広い廊下に高い天井の床に敷かれた赤い絨毯の上を、俺はボーレちゃんを探して走り回った。

 とある部屋の前までくると、小さな女の子の鳴き声がする。ボーレちゃんか!?


「プギイイィイ!プップギイイィイ!!(ボーレちゃん!ボーレちゃん)」

 俺がドアの下の方をカリカリ引っ掻きながら鳴くと、突然中からスッと内側に向けてドアが開き、俺はベシャッと地面に顔を打ちつけた。いってえええ!


「……豚ちゃん?豚ちゃんなの?」

 ボーレちゃん!無事だったのか!

 ボーレちゃんは着ていた服を、真っ白いワンピースに着替えさせられて、なぜかあの怪しい男と同じく、風邪用マスクをつけさせられてはいたものの、怪我もなく無事だった。


 周囲を見渡すも、外にもいなかったが、部屋の中にも護衛らしき人物の姿がない。

 こんな小さな女の子1人、この城から逃げ出すなんて無理だと、たかをくくっているのかな?こんな大きな城だし、きっと出口には兵士がいるんだろう。

「私を助けに来てくれたんだね?

 ありがとう!怖かったよ……。」


 ボーレちゃんが無防備にしゃがんで、俺の方に笑顔で手を伸ばしてくる。ん?

 ま、待ってくれボーレちゃん。

 まさかそのスカートの中は……。

 の、ノーパンだとおぉおおお!?

 俺の目線の高さに、ボーレちゃんの無防備なツルッとした美しいそこが丸見えである。


 あの変態野郎!!(自分棚上げ)ボーレちゃんをノーパンにしやがったのか!

 こんな幼い女の子をノーパンにして、何するつもりだあの野郎!(ノーパン近距離)

 すると慣性の法則で閉まっていた扉が開いて、従者と思わしき男が2人、ズカズカと部屋の中に入って来た。


「着替えは終わったか?さあ、お前も来るんだ。──ん?豚?どっから入った?」

 ボーレちゃんが俺を抱き上げて、サッと部屋の端っこまで逃げる。

「やあぁああ!触らないで!」

「大人しくしろ。お前の仲間たちが待ってるぞ。早く来るんだ。」


 泣きじゃくるボーレちゃんの腕を掴み、無理やり引っ張って部屋の外に連れ出そうとする。ボーレちゃんに触んな!ガブッ!

「いてえ!なんだこいつ噛みやがった!」

「ブギッ!プギイイィイ!(今だ!逃げるぞ!)」


 俺の言葉が伝わったわけではないだろうが、ボーレちゃんの手を離した男のそばをすり抜けて、ボーレちゃんが部屋の外に逃げようとし、もう1人の男に捕まって後ろから抱き上げられてしまう。

「逃げられると思ってるのか?」


「はなして!いや!」

「暴れるな!この!」

「──騒がしいぞ、何してる。」

「隊長!」

 隊長と呼ばれた男は、従者と違って甲冑を身に付けていた。


「ロード様がお呼びだ。早くこんか。」

「は、はい、申し訳ありません!」

「ん。なんだその豚。」

「どこかから入り込んだようで……。」

「あっ、やめて!豚ちゃん!」

 隊長はボーレちゃんの腕から俺を無理やりもぎとると、従者の男に手渡した。


「厨房から脱走してきたんだろう。

 料理長に渡しておけ。」

「はい!隊長は?」

「この娘を連れて行く。」

「やああぁ!豚ちゃーん!」

 ボーレちゃんは無理やり隊長に引っ張られて行ってしまう。


「あっ、このっ!」

 俺はジタバタと暴れて従者の腕から抜け出すと、急いでボーレちゃんの後を追った。

「ヒン……、ヒン……。

 豚ちゃん……。お兄ちゃん……。」

「やかましいぞ、早く泣きやめ。これからお前は一生ロード様を楽しませるんだ。」


 隊長は大きな扉の前に立ち、それを開けると中にボーレちゃんを引っ張り込んだ。

 俺はすかさず足元から気付かれないよう、部屋の中に潜り込んだ。

 濃い赤の長いカーテンの裾に身を隠す。

 中にはたくさんの女の子たちがいた。


 この子たちが全員村から連れて来られた子たちなのかな?みんなボーレちゃんのように色違いのワンピースを着せられて、風邪用マスクをつけさせられている。

 不安そうな表情をしているが、立ち位置が決められているのか、全員がお互い距離を取った場所にいて、近付こうとはしない。


 なにあれ、あの怪しいマント男の性癖なのかな?

 ん?……ってことは、まさかあの子たち全員、ボーレちゃんみたく、スカートの中はノーパンだなんてことになるんじゃ……?

 え?あれ全員?30人くらいいるけど?

 まさか?まさかね……?


 俺はすかさず素早くカーテンの裾から飛び出していた。そして女の子たちの足元を縦横無尽に走り回り、頭上を確認していった。

 わあ〜。お花畑だあ〜。

 アハハ。ウフフ。キレイなお花がいっぱい咲いてるよお?しあわせえ。


 俺は満面の笑みで女の子たちの足元を走り回っていた。

「豚ちゃん!?」

 あ、ボーレちゃん!

「ここまで来てくれたの?」

 ボーレちゃんがしゃがみ込んで俺に笑顔を見せる。うん、そうだよ!ボーレちゃんのお花が一番キレイだね!


 俺はボーレちゃんのキレイなお花に、俺の鼻がくっつく至近距離で話しかけた。こんなにたくさんのお花さんたちを、これから色んな意味で泣かせるつもりだな?許さんぞ!

 至近距離で見ていいのも、ペロペロしていいのも、俺だけの特権だ!


「──なんだ、さっきの豚ではないか。

 料理長に引き渡したというのに、ここまでその娘を追ってきたのか。」

 ボーレちゃんをさらった怪しい変態野郎ことロードとやらが、一段高いところで豪華な椅子に足を組んで座りながら笑っている。


「まあよい。これから坊主めくりを友人と楽しむつもりなのだ。せっかくここまで来たのだから、お前も見ていくがよい。」

 ──坊主めくり?

 見るとロードの隣に似たようなマントを付けて、風邪用マスクをつけた男が2人。


 怪しい変態マントが3人に増えた!

 クソッ。どんな力を持っているかも分からないのに、下手に戦えねえ!この子たちを安全に逃がそうと思ったら、魔法をぶっ放したら巻き込んじまうし……。

「では、今回は私からですかな。」


 赤髪の変態マスクマントがそう言うと、

「2番と13番だ。」

 の言葉に、前から1列目の左から2番目の女の子と、2列目の右から3番目の女の子のスカートの裾を、それぞれ近付いた従者の男たちがペロッとまくってみせる。


「いやあぁあ!」

「ひい……!」

 2人ともパンツ履いてないから、男たちの前に裸の下半身が丸出しだ。スカートめくり担当の従者は、ヨダレを垂らしそうな表情を隠そうともせずにそれを見ている。


「残念、失敗だな。」

「まあ、最初はこんなものさ。」

「では、次は俺がいこう。9番と25番。」

 金髪の男がそう言うと、従者の男たちが、1列目の右から2番目の女の子と、3列目の真ん中らへんの女の子の、ワンピースのスカートを思い切りまくった。


「見ないでえ!」

「やめてえ!!」

「おお、坊主めくり成功だ!」

「素晴らしいな。」

 ロードと赤髪がパチパチと拍手をし、スカートをめくられた女の子たちは、まるで茶巾寿司のように、従者の男たちに頭の上でスカートを結ばれてしまった。


 これで半永久的に下半身が丸出しだ。

 さっきの女の子たちと、この女の子たちの違いってなんだ?

 何を持ってして坊主めくり成功なんだ?

 俺は下半身以外をスカートで隠されてしまった、下半身丸出しの女の子たちを観察しながら考え込む。


 あっ!そうか!

 さっきの子と違って、この子たち無毛地帯なんだ!坊主めくりってそういうことかよ!

 なんつー貴族の遊びだ貴族か知らんけど。

 だから女の子たちはみんなノーパンだったのだ。コイツらがこうやって遊ぶために。


 クソッ!どうやって助けたらいい?

 ボーレちゃんだけならともかく、30人近い女の子たちを無事に助け出すには、力技だけじゃ無理だ。

 俺は女の子たちとロードたちを交互に睨みながら、チャンスをうかがうのだった。

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