第4話 感情エロゲ主人公・誰か教えてくれ。この選択はバッドエンドか?

 友美の感情の変化に、俺は困惑していた。

 さっきまで、友を想う友情の感情だったのに。

 友美は恥ずかしがって、下を向いたまま、俺の背中を掴んでいる。

「振り向かないで」

 と、友美は呟いた。

 友美の手の震えが伝わってくる。

 恥ずかしさと、この変な空気感に、どうしていいか、わからないんだろう。

 チャラそうな金髪ギャルで、幼馴染で、小さい頃から家族ぐるみの付き合いをしてきた、あの友美に、こんな一面があったなんて。

 お互い無言の時間が流れる。

 五分ほどして、友美の手の震えが止まってきた。

「もう振り向いてもいいか」

 俺は言った。

「いいよ」

 友美は言った。

 俺は振り向く。

 友美は笑顔だった。

「ごめんね、マジ、変な空気になっちゃった。あたし、何言ってるんだろー。忘れて、マジ。やべぇわ~」

 友美は言った。

「ああ、マジ変な空気になったな。やべぇな。戻ろう」

 俺は友美に合わせるように言った。

 忘れてって言われても、忘れることはできない。

 友美の感情の変化を知ってしまった以上、もう前のような幼馴染の関係には戻れない気がする。



 俺と友美は、食卓に戻って、母親と一緒に鍋料理を食べ終えた。

 その後は、俺の部屋で、テレビゲームをした。

 さっきまでのことがなかったかのように、友美は、いつも通りの幼馴染の友美に戻っていた。

 俺に対する感情も、友を想う友情の感情に戻っている。

 切り替え早いなっ!!

 俺は心の中でツッコミを入れた。

 俺は、まだ、切り替えができていないのに。

 その後、友美は風呂に入り、母親が用意した、友美の為の寝室へと入って行く。

 友美と一緒の部屋で寝たら、どうなってたんだろう?

 今までは幼馴染として見ていたから、平気だったけど、今は友美を女として見てしまいそうだ。

 俺は深夜まで漫画を読んで、消灯して寝た。

 


 コンコンと部屋のドアをノックする音がした。

 俺は電気を点けて、ドアを開ける。

 友美がいた。

「どうした?」

 俺は聞いた。

「ちょっと、寝れなくて。部屋、入ってもいい?」

 友美は言った。

「ああ。いいよ」

 俺はそう言って、友美を部屋のベッドに座らせた。

 友美の俺に対する感情は、先程と同じく、友を想う友情の感情だった。

 俺は内心ドキドキしながらも、冷静に振る舞うことを心掛ける。

「ゲームでもする?」

「やめとく」

「何か漫画でも読むか? それとも映画でも見る?」

「やめとく」

「じゃあ、どうする? とりあえず話でもするか?」

「うん」

「何の話をする?」

「・・・・・・剣太の好きな人」

 友美は答えた。

「えっ」

 俺は困惑した。

「教えて」

 今度は友美が俺に聞く。

「いねぇよ」

 俺は不愛想な感じで言った。

「本当に?」

 友美が再び聞いてきた。

「ああ」

 俺は頷いた。

 いつの間にか、友美の俺に対する感情は、好意、好きの感情になっていた。

 やっぱり、まだ、友美も切り替えができていなかったのか。

 また変な空気になってしまった。

 お互い意識してしまうと、変な空気になってしまう。

「今日のあたし、おかしいね。マジごめん。部屋に戻るよ」

 友美はドアを開けて、自分の部屋へと戻って行った。

 秋子が家に来たことが引き金となって、友美の眠っていた感情が出てきてしまったんだろう。

 友美が俺のことを好きなのはわかった。

 じゃあ、俺は友美のことが好きか?

 友美のことを性欲として見たら、友美はきっと傷付く。

 童貞は卒業したい。

 でも、その為に友美を傷付けたくない。

 俺は、どうすれば正解なのか、わからなかった。

 エロゲなら、これはバッドエンドなのか?




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る