第3話 感情カオス(混沌)・金髪ギャル登場でカオスになってきた

 『花形三姉妹』の誰かが俺のことを好きだという噂は、やはり嘘だった?

 それなら、あの好意、好きという感情が伝わってきたのは、どういうことだ?

 俺は、頭の中で整理して、推理をする。

 そしてハッとした。

 俺の感情を読み取る能力が、異常に高いことを、『花形三姉妹』が知っていたとしたら?

 それで警戒して、意図的に、好きという感情を隠して、嫌いという感情でごまかしていたとしたら?

 俺のことが好きという噂や、俺に対して好きという感情が、伝わってしまったのは、うっかり気を抜いて、本音がポロリと出てしまったんじゃないか?

 これが本当だとしたら、『花形三姉妹』は、俺に好意があるということを、絶対に隠し通したいってことだ。

 理由は、俺のことを下等生物扱いしているけど、実は、好きでしたってバレたら、花形家の『恥』になるとか?

 そもそも俺のことが好きなのは、本当に三人の中で一人だけ?

 三人とも、俺のことが好きだったというオチはないのか?

 考えすぎか?

 どちらにせよ、ここまで考えさせられる『花形三姉妹』、一筋縄ではいかない三姉妹だ。

 俺は、この『花形三姉妹』に、はまりつつある。



 学園から帰宅して、「ただいま」と言って、実家の玄関のドアを開けると、見慣れない靴が置いてあった。

 食卓に入ると、いつものように母親、そして・・・・・・なんと秋子がいた!!

 秋子は椅子に座って、鍋料理を食べている途中だった。

「おかえり」と出迎える母親と、「お邪魔してます」と頭を下げる秋子。

「何でいるの?」

 訳が分からない。

「秋子ちゃんに感謝しなさいよ。届けてくれたのよ、財布。お礼に鍋をごちそうしてあげてるの」

 と、母親が代わりに答えた。

 俺は財布が入っていたポケットを確認する。

 確かにない。

 落としたみたいだ。

「財布から、ここの住所を割り当てたの?」

 俺は秋子に聞いた。

「そうよ。レンタルショップの会員カードに、ここの住所が書いてあって。落とし物に届けるよりも、直接、届けたいなーって。ごめんなさい、勝手なことをして」

 秋子は答えた。

「何処に落ちてた?」

 俺は再び秋子に聞く。

「靴箱」

 秋子は答えた。

「靴箱といえば、あのメモ用紙、秋子が入れたのか?」

「うん。ごめんなさい、待てと言われてたのに、待つことができなくて。急用が入ったの」

秋子は申し訳なさそうに言った。

「あのメモの意味はー」

 その時、ピンポーンという玄関のチャイムが鳴った。



 俺は食卓を出て、玄関を開けた。

 そこには、金髪のロングストレートで、ギャルメイクをした、チャラそうな南沢友美がいた。

 友美は、幼馴染で、小さい頃から、家族ぐるみの付き合いだ。

 友美は、東京渋谷学園の姉妹校である、大阪難波学園に通っている。

 大阪の学生寮で暮らしていると聞いたが・・・・・・。

「おひさ~(久し振り)、帰って来たよ~。さっき家に着いたばかり。どう? 元気してた?」

 友美の声は明るかった。

「帰って来た? 明日から学校は?」

 俺は聞いた。

「明日から冬休みだよ。そっちも、明日から冬休みじゃないの?」

 友美は逆に聞き返す。

 「いや、まだだ」

 俺は答えた。

 冬休みは二週間後だ。

 友美の俺に対する感情は、今も小さい頃と変わらず、友を想う感情、友情の感情だ。

 「あら、友美ちゃん。久し振りじゃない? 上がってく?」

 母親がやって来た。

「おひさ(久し振り)です。お邪魔しま~す」

 友美は靴を脱いで、玄関から上がって行く。

 友美を家に入れてもいいんだろうか?

 秋子も来ているし、ややこしくならないか?

 靴箱のメモのことなど、秋子には聞きたいこともあるのに。

 そんなことを考えてるうちに、友美は食卓へと入っていく。



「おっ? 剣太の友達?」

 友美は、椅子に座っている秋子を見た。

「はじめまして。秋子です」

 秋子は挨拶した。

「よろ~(よろしく)。あたし、友美ね」

 友美も挨拶をする。

 俺と友美と母親は席に着く。

「鍋かぁ~。何鍋?」

 友美は言った。

「キムチ鍋よ。おいしいわよ」

 母親が答える。

「おいしそう、いただきま~す」

 友美は鍋料理を食べ始めた。

 俺も母親も鍋料理を食べ始める。

 秋子は無言で鍋を眺めていた。

「食べないの?」

 俺は秋子に聞いた。

「もう、お腹一杯で」

 秋子はそう答えて、席を立つ。

「あら? もう帰るの?」

 母親が聞く。

「はい。鍋、おいしかったです。ごちそうさまでした」

 秋子は食卓を出て行く。

「せっかくだから、秋子ちゃんも友美ちゃんも泊まっていきな」

 母親は提案した。

「そうするかな~」

 友美は提案に乗ったようだ。

「えっ、いえ、私はー」

 秋子は戸惑っている。

「もう夜だし、最近は物騒だから、泊まっていけば?」

 俺は提案を促した。

 靴箱のメモのことを聞いておきたいし、秋子の感情を読み取りたかった。

 ここでは、秋子、友美、母親の感情が混ざり合って、一人の感情を読み取れない。

 二人きりになれば、感情を読み取れる。

 秋子は、帰るか、泊まるか、考えているようだ。

 もう一押しで泊まりそうだ。

「泊まっていきなよ。友美もそう思うだろ?」

 こういうのは、男の俺よりも、同じ女子高生の友美の方が、説得力があるはず。

「・・・・・・そう思うけど、聞きたいことあるんだよね」

 友美は言った。

「どうぞ」

 秋子は促した。

「剣太とは付き合ってるの? ぶっちゃけ、剣太のこと、どう思う?」

 友美は言った。

「お、おいっ、友美、何を言ってるんだ。付き合うとか、そんな関係じゃねぇよ」

 俺は慌てた。

 むしろ秋子に嫌われてるかもしれない。

 春子も夏子も、俺のことが嫌いだったし。

「月村君は、ただのクラスメイトで、付き合うとか、そんな関係じゃない。どうも思ってない」

 秋子は言った。

「ほらな」

 俺は言った。

 どうも思ってないって、聞いてて、むなしくなる。

「ふ~ん・・・・・・良かった」

 友美は言った。

 良かった?

 その言葉が妙に引っかかった。



「あの、私、やっぱり帰ります」

 秋子はそう言って、食卓を出て行く。

 俺は後を付いて行く。

 秋子は玄関で靴を履いて、出て行こうとしていた。

「泊まっていけばいいのに。送ろうか?」

 俺は言った。

「いい。大丈夫」

 秋子は玄関を開けて外へ。

 俺は秋子の後を追う。

 今なら二人きりだ。

 靴箱のメモのことを聞いたり、秋子の感情を読み取ることができる。

 その時、グイと背中を引っ張られた。

 振り向くと、友美がいた。

 友美は下を向いて、

「私を置いて行かないでよ」

 と、恥ずかしそうに言った。

「友美?」

 友美の俺に対する感情は、好意の感情、好きに変化していた。

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