謎の少女
結局、かなり時間がかかって、救急車が到着した。
私も救急車に乗って、病院まで行った。
「お母さん…お母さん…っ…お願い…神様…ぅっ、ひぐっ…」
緊急手術室の前の椅子…ドラマで見るあのシーン…
「なんで…? 誰がこんなこと…」
『おねえちゃんがやったんだよ?』
「え…?」
誰…? 今の声…
『おねえちゃんがやったんだよ? おねえちゃんが、おねえちゃんのおかあさんをたたいたんだよ?』
前を見ると、小さな可愛らしい女の子がいた。
『おねえちゃんがやったの。』
おねえちゃんって、わたし?
「そんなわけ…」
『ほんとだよ!? みてたもん!』
「嘘…」
そんなこと、あるはずない! お母さんを傷つけるなんて、そんなこと…だいたい、この子がなんでそんなこと知ってるの!?
『おねえちゃん、こわかった…でもね、おねえちゃんをこんなのにしたひと、わたししってる!』
何? しってるって…わたしが…わたしが…? 本当にやったの? なんで? わたし、なんで?
「なんで? 知ってるって、何?」
『それは…おしえたら、おねえちゃんがふこうになっちゃうから、いわない…』
「なんでっ!? 教えて!」
何何何? わたしの体に、何が起きてるの!? この間も倒れたし…なによっ!
『おねえちゃんは、まず、おねえちゃんのことをかんがえて。わたしはなにをすることもできないけど、でも、おねえちゃんになにかあったら、おねえちゃんのこと、まもるから!』
守るって…こんな小さな子になにができるの? それにこの声、どっかで…
「あなた、誰?」
『え? わたしは、わたしは…』
「偶然かもしれないけど、君の声、どっかで聞いたことがある気がするんだ…」
『わたしのなまえは、なまえは…かなにのかんな! かんなだよ! ぐうぜんじゃないかな? こえは…』
「かんなちゃん? かんなちゃん、なにを知ってるっていうの? 教えて!」
『だって…だって、おねえちゃんがふこうになっちゃうんだもん!』
なによ…ふこうになるって…
『とにかく、おねえちゃんはじぶんのことだけをかんがえて! ほかのひとのことはかんがえないで!』
「え…? なんで…?」
『じゃあね!』
「えっ、あっちょっ!」
なんだったの…?
ガチャ!
「雷雪晴雨さんですね、ただいま手術が終わりました。」
「お母さんは!? 無事なんですか!?」
「幸い、頭からの出血と、軽い打撲で済みました。ただ、頭を大幅に切っているため、しばらくは痛むと思います。」
「そうですか…ありがとうございました。」
「ただ…原因がわかりません…現場にいたあなたしかわからないと思うのですが、何か知っていることはありませんか?」
「いいえ…」
本当に…気がついたらお母さんが倒れてた…
「そうですか…あなたのお母さんは、持病などは?」
「いえ特に…」
「じゃあ、うつ病になっていたり、そのような様子が伺えることはありましたか?」
なんでそんなに聞くんだろう? そんなこと聞いてどうするの? わかんないわかんないわかんないよっ!
「なんで? そんなこと聞いてどうするのよっ! なにもわからないじゃないっ! わかんないって、 言ってるじゃんっ!」
全くっ! みんなみんなどうしてそんなにわたしのことを怒らせるの?
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!」
「ん…」
あれ…? なにしてたんだっけ…?
そうだ! お母さんが倒れて…
「ん…?」
ここ…ベッドの上…?
一体なにが起きて…
「起きました。雷雪晴雨さんです。」
「なに…?」
「晴雨さん、あなたのやったこと、覚えてますか?」
「いえ…何かしたんですか?」
なに…? 何で病院に…?
「あなたは、医者から質問を受けていたところ、いきなり怒り出して医者に殴りかかり、そのあと倒れました。」
「へ…? そう…なんですか…?」
「記憶にないですか?」
「はい…」
「本当に?」
「ほんとに…知らないんです…」
本当に、知らない…
そういうと、看護師さんはため息をついた。
そんなことがあったの…? 全然覚えてない…
「あなたは前にもこんなことがありましたか?」
「ない…と思います…」
そんなこと…一回もなかった…はずだけど…お医者さんが嘘ついてるとか…そういうんじゃないよね?
「本当に…そんなことがあったんですか?」
「わたしはよく見てなかったからわからないけれど、お医者さんは現に倒れてるし、見ていた患者さんもいたみたいだから…」
そんな…
「とにかく、あなたはもう少し安静にしていてね。」
「はい…でもわたし元気ですよ?」
「でも! 安静にしていなきゃいけません。また倒れるかもしれないでしょう?」
「はい…」
なんなんだろう…? そもそもわたしはなんで病院に来てるの? お医者さんが倒れるって…私はお医者さんに手を出したってこと…?
「そういうことに…」
「晴雨!」
「晴雨ちゃんっ!」
「へっ?」
この声は…
「おい! なんだよ! こないだも今日も! なんでそんなに倒れるんだよ! お前、もしかしてお見舞いをもらうために…」
「違う! そんなわけないっ!」
それは違うっ!
「…からかっただけだよ…そんなに怒るなって…」
「あ…ごめん…」
なんだか最近怒りっぽいのかな…
「晴雨、最近変だよ? いつもはこんなことで怒らなかった…」
雨海ちゃんまで…
「そんなの…知らない…」
ん? 雪菜ちゃんは?
「雪菜ちゃんは?」
「あ…雪菜は…ちょっとようがあってな!」
絶対嘘…
「本当は?」
「だから、本当だって!」
晴太君は嘘をつくとき、指がせわしなく動くから、わかりやすい。
「嘘でしょ!? なに? 何か私に話せないことでもあるの?」
「そんなことねえよ!」
「だったら!」
「ちょっと、二人とも落ち着いて! 話すから!」
雨海ちゃんが口を開いた。
「おいっ! 話すなよ! 今の晴雨に言ったらまたなにをしでかすか…」
「なになに? 話して!」
なに? そこまで言われたら…
「雪菜ちゃんは」
「おい! やめろ!」
「交通事故に遭って、今手術中なの。」
「え…?」
なんで雪菜ちゃんが…めちゃくちゃ注意しそうなのに…
「なんか、お母さんと喧嘩して家を出て、道路渡ろうと思ったら赤信号だったんだって…」
「そんなことが雪菜ちゃんに…? 何かあったんじゃないの?」
「そうだと思う…晴雨もそうだし…」
私? なんで?
「晴雨も雪菜も、一週間もたたないうちに二度も病院に運ばれるなんておかしい。晴雨はともかく、雪菜までそんな不注意ばかり続くとは思えないし…」
なっ…晴雨はともかくって…
「そんなこと言わなくたって良いじゃん…うう…」
あれ…? なんで涙が…?
「え…?」
「晴雨…ごめん! いつもは笑って終わるのに…本当ごめん! そんなつもりで言ったんじゃないんだ!」
「そんなつもりって…どんなつもりよ! 晴太くんには人を気遣う気持ちがないの!? 雪菜ちゃんのお見舞いしてきなよ! どうせ私より雪菜ちゃんの方が好きなんでしょ!? あ、紫雲ちゃんだっけ? もうほっといて!」
「あ…晴雨…」
もうやだ! なんでそんなことばかり言うの!? もう誰も私に近づいてこないでっ!
「……ごめん…」
晴太くんたちは病室を出て行った…
「もう…私…自分の感情が抑えられないのかな…? 本当はそんなこと思ってなかったはずなのに…なんであんなこと言っちゃうんだろう…」
なんで…? 絶対おかしいよ…いつから? 昨日は…
…あれ? 昨日私なにしてたっけ…?
「どうしよう…思い出せない…なにが起きてるの…? 私の体に…」
『おねえちゃんがやったんだよ?』
「そんなわけない…」
『おねえちゃんが、おねえちゃんのおかあさんをたたいたんだよ?』
「嘘だ…嘘だうそだっ!!」
そんなわけないっ! 私がなんでおかあさんを…そんな記憶もないし…
でも昨日の記憶もない…私…今までなにしてたの…? 怖い…怖い…怖い…
もう…やだよ…
「晴雨」
「紫雲ちゃん…来ないで…」
紫雲ちゃん…なんで…?
「それ、能力が関係してると思うんだ。」
「能力…?」
能力…? 私がこうなったのと、能力はなにも関係ないと思うんだけど…
「なんで…?」
「特に正確な根拠はないんだけど、晴雨はともかく雪菜も同じようなことがあるなんて、能力が関係してるとは思わない?」
ちょっちょっちょっと、晴雨はともかくって…また!?
「どういうみぶ「そんなことは置いといて!」
ぐっ…
「そんなことより、それなら他の晴雨の友達もやばいってこと!」
え…?
「なんで…? 私と雪菜ちゃんと紫雲ちゃんは能力者だけど、他の子はなにもないはず…」
「え? なに? 気づいてなかったの?」
え? え? え?
「知らないよ! そうだったの?」
「見ればわかる。あの背の高い黒髪のこと、髪の短い子はわかりやすい。身体能力が高いんでしょ。あの二人はしょっちゅう運動会で活躍してるからね。」
いや確かにそうだとは思うけど!! そう言われて見れば…
雷くんはこの前も雷みたいな速度で…
風香ちゃんはあんな猫みたいに…
考えてみれば、そうなのかもしれない。
でも、そんなに多くの人が持ってるってことは、人類全員になにかしらの能力があるのかな?
「ねえ、晴雨と雪菜の誕生日ってわかる?」
「私は…9月13日だけど? それが何か?」
「もしかして…晴雨と雪菜の誕生日ってすごく近いんじゃないの?」
「え? なんでそう思うの?」
「ここからは私の推測なんだけど…」
お天気組! maise @maise-oreo
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