身体の暴走
家に帰ると、玄関まで(珍しく)お母さんが迎えに来てくれた。
「どう…だったの…?」
お母さんが心配そうに、おずおずと聞いてくる。
「まだわかんない。道具を作るまでに時間がかかるみたいだし、私たちの能力についてもまだ研究し足りないみたいで。」
「そう…」
やっぱり一発でポンっと治るわけないもん。
「とにかく、おかえり。夕飯、何がいい?」
「うーん…オムライス!」
「わかったわ。」
なんかこんなにテンション低いお母さん、珍しいなぁ…
テンション低いっていうか、挙動不審っていうか…
ま、いっか。
宿題…ないんだった。
っていうか、なんで宿題ないんだろう? この時間帯はいつもバタバタしてるはずなのに…
雪菜ちゃんならわかるかな?
「雪菜ちゃーん!」
ちょうど部屋にいたらしく、ガラガラと窓を開けて雪菜ちゃんが出てきた。
「なぁに?」
「私たちなんで今日宿題ないんだっけ?」
雪菜ちゃんならすぐに答えられるだろうと思ったけど、しばらく考えてから、
「ごめんね。わからない!」
「そっか! ありがとう!」
雪菜ちゃんもわからないなんて…
なんだったっけな…? ま、いっか!
「ご飯できたよー!」
ヤッタァ! ご飯だ!
「はーい!」
階段を降りると、美味しそうなオムライスがテーブルにのっていた。
「いただきます!」
んーっ! 美味しい!
「ところで、晴雨。」
私がもすもすと食べていると、急にお母さんが改まって席に座った。
「まあに?」
「今日行ったところ…どんなところだった?」
「えーっとね…」
今日行ったのは…
どんな場所だったっけ…?
「病院の近くだったよ! 私が生まれた病院。」
「そう…その研究室の中はどんな感じだった?」
研究室の中…どんな感じだったっけ…?
「あんまり覚えてないや。」
「そう…どんなことを質問された?」
どうしたんだろう? いきなり…
「えーとね、えーと…」
あれ…? 何を聞かれたんだっけ…?
「あまりよく覚えてないな…なんだっけ…?」
「覚えてない…? なんで!? これは晴雨のことなのよ! しっかり自分のことなんだからわかってなきゃいけないでしょう!? 思い出しなさい!」
そんなに怒鳴らなくても…
「え…待って…ほんとに…思い出せない…」
なんだっけ…
ポケットに手を突っ込んでみると、一枚の紙切れが出てきた。
『オエpzぺ4』
「何これ…」
変な暗号…
「ちょっとかしなさい。」
「え?」
お母さんが急にそれを奪って、まじまじと見たあと、急にキーボードを持ってきた。
「ら…い…せ…つ、せ、いう…」
何? 急にフルネームで呼んで…
「これ、暗号よ。これをキーボードのひらがなの方で読むと、あなたの名前になるのよ。これ、そのお医者さんに渡されたのでしょう?」
「そうだっけ…?」
「もう、しっかりしなさい!」
でも本当に思い出せなかったんだもん…
「なんで晴雨…今日だらけてるわよ!」
むっ…
「そんなに怒らなくったっていいじゃん! 私だって思い出せないものは思い出せないんだよ!」
「何? その言い草は! 私は! あなたの、晴雨のためを思って!」
「何よ! 勝手にお母さんが言ってただけじゃないっ! 忘れちゃったのはしょうがないのに、そんなに怒らないでよ!」
「ふざけないで! あなたのことなのよ!?」
うるさい…
「もうちょっとしっかりしなさい!」
うるさい…
「聞いてるの?」
「ウルサイッ!」
「っ!」
「はっ、はっ…はっ……」
あれ…? お母さん…??
倒れてる…大変! 救急車!
えーと…何すればいいんだっけ…?
どうしよう、どうしよう!
とりあえず…119番しなきゃ…
プルルルル…プルルル…
「はい、火事ですか? 救急ですか?」
人の声がする…少し安心した…
「ええと! お母さんが! 倒れてます!」
「落ち着いてください、救急ですね…お母さんはどんな症状ですか?」
「だから! お母さんが倒れてます!」
「意識はありますか?」
「えっと…お母さん! お母さん!」
何度かゆすってみても、返事がない…
「意識ないです!」
「呼吸はありますか?」
呼吸…あっ! 息してる!
「あります! あ、血を流してます!」
「出血…どこからですか?」
「頭と…膝です!」
そこから状態などを詳しく聞かれた。
こんな緊急事態なのに、どうして電話の向こうの人は焦らないの? 他人だと思ってる?
「わかりました。お母さんの年齢と、あなたの年齢と、電話番号を教えてください。」
「ええええええ! 電話番号も!?」
もう! 時間かかる! 緊急事態なのに!? こんなことまで聞くの!?
「…わかりました。すぐに救急車が向かいます。あなたはじっとその場でお母さんの様子を見ながら待機していてください。」
「早くしてくださいっ!」
プー
もう! どうしたらいいの? どうして倒れてるの!? ねえ! ねえっ!?
「お母さん! お母さんっ!」
ねえ…
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