能力の研究者
「っあーーーーーーーー!」
久しぶりの我が家だー!
「晴雨! うるさい!」
なんでこんなに久しぶりな気がするんだろう! まあそんなこと気にしない!
そういえば雪菜ちゃんどうなったんだろう…
気になって2階に上がり、窓を覗いてみると、窓が空いていた。
カーテンがゆらゆら揺れてる。雪菜ちゃんも退院したのかな?
よし! 確かめよう!
「ゆっきなちゃーーーーん!」
てん、てん、てん…
反応なし。まだ退院してないのかな?
具合悪くなってきたし、もういっか。
「晴雨ちゃん!」
「あ! 雪菜ちゃん!」
窓の外から雪菜ちゃん発見!
「雪菜ちゃんも退院してたんだね!」
「え?」
「雪菜ちゃんも大したことないようでよかった! また遊ぼうね!」
「なんで私が入院してたって知ってるの?」
あ、私が入院してたこと、知らないのかな?
「私も同じ病院に同じ時間に入院してたから!」
「そうだったの? 無事でよかったです!」
「雪菜ちゃんも! またね!」
「はい!」
よかった。雪菜ちゃんも退院してたんだ!
でも…やっぱり理由がわからない。
最近体調が悪くなることが多い気がする。
あの夢のせいで睡眠不足だし…もう! 最悪!
そしてそれから四日後
なぜか私の家の場所を覚えていた紫雲ちゃんは、うちにピンポンしにきた。
幸いまだ休みだったから、雪菜ちゃんと紫雲ちゃんと私と真子さんで、紫雲ちゃんの案内で、その研究所とやらに行った。
お母さんたちもついて行くって言ってたけど、真子さんに、
「信用していないわけでございませんが、どんなに高くても買うおつもりでしょう? それでは晴雨さんのお母様も奥様も、普通よりたくさんのお金を取られてしまう可能性が出てきます。それに、万が一詐欺だったら、それこそ相手の思う壺です。晴雨さんとお嬢様の能力がなくなるように、話はしっかりお伝えします。なので私にお任せください。」
って言われたら、ぐうの音も出なかったみたいで、渋々ついてこなかった。
「ところでさ、そのリボン、いくらくらいしたの?」
「教えてくれなかった。でもその月は卵焼きとお茶碗一杯分のご飯しか出なかったよ。」
絶対高いじゃん…そんなにするんだ…
「ねえ、どんなところなの?」
「なんか、病院見たいな…産婦人科の…そんな感じの部屋がいくつもあった。私の生まれた病院の近くにあるんだ。」
病院の近く…?
ああ、万が一何かあった時のためにってことね!
「はやくこれ治りたいなぁ! 治ったらどんな女の子になるんだろう!」
「そういえば、自分で直すために一週間ほしいっていってなかった?」
あ…
そういえばそんなこと言ったなぁ…あ、あはは…
「あれは…」
「ま、そんなことできるわけないよね。」
「そうだよね! 私がこれまで十年間以上直せなかったのに、たった一週間で治せるわけないよね!?」
「開き直ったじゃん。」
「そうだよ開き直ったよ! もう知らないっ!」
もうっ!
「…ふふっ。」
あ、雪菜ちゃん、今笑ったなっ! もーっ!
「あ、ついたよ。」
え? ついた?
前を見ると、大きな少しボロくさいところにきた。
後ろには、私も生まれた産婦人科の病院。『高交際クリニック』があった。
紫雲ちゃんはなれた動作で玄関のインターホンを押した。
『…はい?』
「打てdh2mです。」
『…』
うてでぃーえいちにえむ? なんの暗号だろう…?
そんなことを思っていると、ゴゴゴゴゴゴゴゴと音がして、玄関の扉が開いた。
「入って。」
「う、うん…」
なんか不気味な場所…
「ちょっと怖いね…」
「うん…」
雪菜ちゃんも怯えてる…
「大丈夫。変な人だけど、腕だけはすごいから。」
「誰が…」
「ぎゃあああああああああああああああああああっ! おばけええええええええええええええ!」
お化けでデデデ出たぁぁぁぁぁ! 私も呪われるんだぁぁぁぁ!
「おばけ…」
「んぎゃああああああああああああああああ! 呪わないでぇぇぇぇ! 私なんか食べても美味しくありませんんんんんんんん!」
「お化けじゃないよ!」
おばおばお化けだぁぁぁぁぁ…紫雲ちゃんも呪われてたんだぁぁぁぁ!
「晴雨ちゃん、大丈夫だよ。」
そっ…ピタッ…(雪菜ちゃんのてが肩に触れる)
「んギャぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「もういいってば!」
んぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!
「ほんっとうに、すみませんでしたっ!」
「いえいえ…お化けに見られるのもわかる気がします。私の名前は秋野。能力について研究しているただの科学者です。驚かせて申し訳ございません。」
「そそそんな、めっそうもございめせん! あ、ません!」
本当に失礼なことしちゃった…真子さんに止めてもらったらしい。なんかお尻とほっぺが痛いけど。
「もういいです…能力の話…ですよね?」
あ…
「はい。紫雲ちゃんにここに来ると能力を無効にする魔法の道具を売ってくれると言われたので。」
「そんなこと…」
あれ? 言ってなかったっけ?
「私は、能力のことについて調べている人がいるから、その人を紹介してあげようって言っただけで、道具を売ってるとか、そういうんじゃないから!」
「はは…まあそうかもしれないね…話はわかったよ…いいね…わかった…相談に乗るよ…」
「ありがとうございます!」
よかったあ…最初はお化けかと思ったけど、本当はいい人だったんだぁ…
「では、話を聞かせてもらおうかな。あ、あなたは?」
「私は、お嬢様の家政婦の、真子と申します。以後よろしくお願いいたします。」
「わかりました。」
それからなんか診察室みたいな部屋に案内された。
「では、症状を、そちらのお嬢様からお聞きしましょうか。お名前は?」
お嬢様? お嬢様ってどっち?
「あの…誰のことでしょうか?」
雪菜ちゃんが聞いた。
「ああ…あなたに決まっているではありませんか。」
お化け…もとい秋野さんが、雪菜ちゃんのほうを見て言った。
むキィぃぃぃ!
何よ! 決まってるって!
「決まってるって! どうして私はお嬢様じゃないのに、雪菜ちゃんはお嬢様なんですか!」
「そういうところですよ。」
ムッキィぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!
「もう怒りましたよ! 差別ですか!? ひどいじゃないですか!」
「はは…ごめんね。」
なんかふんわりとしたいいかたでやだなぁ…何言われても許しちゃいそうな…
「まあ…解決できるならいいですけど…」
「大丈夫。僕に任せて。じゃあお嬢様からやろうか。」
あ! またお嬢様って!!
もぉぉぉぉぉ…
「では、症状を教えてもらえるかな?」
「はい。私は5分ほど先までの未来が、一定の範囲で見えます。」
「それは…どういうことですか?」
「数メートルの範囲しか見えないということです。周りは真っ暗で何も見えません。それに、動くこともできません。」
「動けない…っと…」
「目を閉じて開くと未来の世界になります。いつも瞬きするたびに見えて大変でした。」
「どうやってそれを克服したんですか?」
「瞬きをしそうな時は長い時間目を瞑り、そして開きます。そうすると瞬きをした時は未来を見るための能力が発動しなくなったとされたらしく、必要な時だけ、少しだけ未来を見ることができるようになりました。」
「そんなべんりな能力でも、無くしたいのですか?」
「はい。この能力のせいで、私は…」
「…わかりました。ですが、そのためには大量のお金と時間を要します。それをあなた一人で決めてはなんでしょう。お母様、お父様ともよく話し合ってください。」
「そのことについては私がお話しいたしますので、ご安心を。」
真子さんがいった。真子さん、本当に安心させてくれるなぁ…
「では、そっちの子、こっちおいで。」
そっちの子…
「もう! ひどいですよ!」
「でも設定は曇りだから、こんなこと気にしないんじゃないの? 雷雪晴雨ちゃん。」
あれ? 名前言ったっけ?
「なんで名前を…」
「紫雲ちゃんから話は聞いていたから。では、続けますね。天気によって、性格が変わる…それはわかった。他の症状は?」
「いいえ…特には…」
倒れたのは気がかりだけど…
「わかった。これと似たようなケースがあるか確かめてくるから、もうちょっと待っててね。」
「はい…」
そう言って、 さんは奥の部屋に入っていった。
「いい人だね。ありがとう! 紫雲ちゃん!」
「うん。ちょっと変わった人だけど…」
「あはは…そうだね…」
ちょっと不思議なような、ちょっと怖いような…
それにしても! 私と雪菜ちゃんを差別するなんて、ひどっ!
「あ、ありました。よかったです。あなたの名前は、中村雪菜さん、であってますか?」
「え…? はい…」
なんでぇぇぇぇ!?
この病院に一度もきたことないよね!? さっきも私の名前当てたし…
あ、紫雲ちゃんにおしえてもらったって言ってたっけ…
「では雪菜さん、ここは能力についてこじんまりと研究をしているところです。能力について知られたら、能力を持った方が狙われるかもしれません。いいですか? ここに入るときは、こう言ってください。『うt\お8ぐ』と。」
さんは何やら紙に書いて、それを見せた。
「うてぃーばっくすらっしゅおはちぐ?」
あ、このナナメ線ばっくすらっしゅって言うんだ。
「はい。そうです。これは一種の暗号ですから、解読される可能性も出てきます。絶対に、他の人には言わないでください。ここだけでなく、あなた自身も危ないですから。」
「は、はい…」
あなた自身も危ないって? どういうこと? 個人情報ってこと?
「そして晴雨さん。あなたも同じです。あなたは、『オエpzぺ4』と言ってください。」
おえぴーぜっとぺよん? なんの暗号なんだろう…
「道具については、また今度お話ししましょう。今回はお代はいりません。一週間後にここにきてください。あなた方の能力について、もう少し詳しく調べます。」
「わかりました。」
「では、お気をつけて。」
「ありがとうございました。」
私たちは来た道を戻って、外に出た。
「良さそうな人だったね。」
ほんと。お化けかと思ったけど…
「治るのかは、紫雲ちゃんで実証済みだもんね。」
「私は実験体かよ…」
紫雲ちゃんが呆れたようにいうと、なぜか雪菜ちゃんが謝った。
「ごめんね、そういうつもりで言ったんじゃ…本当にごめんなさい!」
「違うよ、晴雨にいったの。」
私っ!? 何かひどいこといった?
「晴雨ちゃん、謝って!」
「ええと…ごめんなさい。」
なんでだろ? 急に謝れって…
「まあいいや。」
「ところでさ、なんで謝ってっていったんだっけ…? 確か…紫雲ちゃんに…ひどいことを…」
「ちょっと、二人してひどいよ。」
なぁんだ。雪菜ちゃんも忘れちゃったんだぁ…
まあ、そんな大したことじゃなかったんだろうな。
そんなこんなしてたら、紫雲ちゃんの家に着いた。
「ここが私のうち。」
あれ…? 超超超超超豪邸なのかなと思ってたら、意外と普通の家…
「何? 豪邸だとも思った?」
「いや思ってたぁ…」
「…はぁ…まあいいや。それで? 参考になった?」
「ウン! ありがとう!」
「ほんとにありがとう。」
私たちがそういうと、紫雲ちゃんは照れたような顔をして、
「ま、役に立てたなら…よかった…な…」
えうそ…可愛い…
さすが名子役…ちょっとキュンってした…
「じゃ、私たち帰るね! ありがとう!」
「本当に、あなたにはお世話になりました。あとは私に任せてください。」
「はい。」
じゃ、そろそろ帰ろっか!
「またね!」
「じゃあね! 本当にありがとう!」
「ウン。またね。」
こうして紫雲ちゃんと別れた。
「ただいま!」
「おかえり…」
そのあと雪菜ちゃんとも別れ、家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます