第8話

それは、竜と人間が共に生きている異なる世界の物語。


銀竜は生まれながらに、その美しい白銀の鱗と圧倒的な力を持ち、人々の畏敬の対象となっていた。しかし、その輝きは他の竜たちの嫉妬と恐れを呼び起こし、彼を孤独へと追いやっていた。銀竜は、心を閉ざし、他者との関わりを避けるようになっていた。


ある日、銀竜は他の竜たちによって罠にかけられ、彼の力を封じるための強力な呪いをかけられてしまった。この呪いは、その竜を蝕み、近づく者にも災いをもたらすという恐ろしいものだった。呪われた銀竜は、力を失い、森の奥深くでひっそりと暮らすようになった。


そんなある日、銀竜は森の奥深くで一人の少女と出会う。その少女の名はチー。まだ幼いながらも神聖な力を持つ巫女であった。彼女はその力ゆえに村人たちから疎まれ、孤独な生活を送っていたが、心優しく、どんな時でも微笑みを絶やさない少女だった。


チーと銀竜は出会い、お互いの孤独を癒すように深い絆を築いていった。チーは銀竜の傷ついた心に寄り添い、彼の孤独を和らげ、銀竜もまた彼女の存在に救いを見出していた。


しかし、村人たちはチーの力を恐れ、次第に彼女に対する偏見や憎しみを募らせていった。ある日、村人たちがチーを襲い、彼女に石を投げつけて傷つけた。その理由は、彼女が呪われた竜と密かに会っていることが知られてしまったからだった。


深く傷ついたチーは、銀竜に会うために森へと逃げ込んだが、その胸には絶望が広がっていた。涙を流しながら、彼女は命を絶とうとした。


「こんな世界で生きる意味なんてない…私は、もう…」チーは泣き崩れながら呟いた。


その時、銀竜が現れ、彼女の前に立ちはだかり、静かに言った。


「あなたが逝く時、私も共に。」


チーはその言葉に驚き、涙を拭いながら銀竜を見つめた。


「でも…私はただの人間で、あなたは…」


銀竜はチーの言葉を遮るように続けた。「君が生きることを諦めるなら、私もその命を共に終える。君は私にとって唯一無二の存在だ。君のいない世界で生きる意味など、私にはない。」


チーは銀竜の言葉に胸を打たれ、彼女の中に再び希望の光が灯った。


「あなたがいる限り、私は生きていける…」チーは泣きながら微笑んだ。


それ以来、二人はさらに深い絆で結ばれ、共に生きる決意を新たにした。チーは銀竜の傍で過ごす時間を何よりも大切にし、銀竜もまた彼女の存在を何よりも大切にした。そして、その物語りは結末を終える……はずだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る