第9話

「はずだった?」


「ああ、でも実際はそれで終わりじゃなかったんだ。竜という存在の特性と呪いは、そんなに簡単には許してくれないんだよ。竜の魂は、死後にバラバラになって輪廻を繰り返す。そして、その輪廻の中で徐々に集まり、再び生まれ変わる。でも、銀竜の魂は呪いのせいで、輪廻の中で集まれなくなってしまい、淀んでしまった。その結果、他の魂に吸着して現世に悪影響を与えているんだ。それに加えて、少女の魂も呪いで縛られていて、正しい輪廻ができなくなっている。」


「つまり、それが俺ってことか?」


「そう。君は、少女の輪廻がうまくいかずに、残った思念のようなものが影響を与えているんだ。」


「そのイレギュラーには、どうやって影響していたんだ?」


「おそらく、淀んだ竜魂が侵食したんだろう。」


「倒した後、銀花が何かを吸収してたように見えたけど、あれが竜魂なのか?」


「ああ。私は生まれたときから、淀んでいない竜魂を宿していたんだ。そして、私と君の神聖な力で、淀んだ竜魂が浄化されて集まった。私は、竜魂を集めたい。なぜか全ての竜魂がこの世界にあるみたいなんだ。」


「銀花さんの目的はわかった。どう手伝えばいい? そもそも、どうやって竜魂を探すんだ?」


「えっ、いや、君をもう巻き込むわけにはいかないよ。こうして話せただけで、私は十分に希望をもらえたんだ。」


「もう乗りかかった船だ。それに、自分が関係しているのに見て見ぬふりなんてできない。」


「今回みたいなことがまた起きるかもしれないんだ、君を危険に巻き込みたくない。」


「今回みたいなことが起きるなら、なおさら俺がいないとダメじゃないですか。ここまで知り合ったんだから、『二人で一緒に』解決しましょう。なんか俺たちなら、『何だってできる気がするんです。一人ぼっちはなしですよ。』」


銀花は突然、ポロポロと涙を流し始めた。


「ええっ、どうしたんですか急に?」


「いや、ちょっとね……ありがとう。」


銀花は両手で自分の頬をパチンと叩いた。


「よしっ、探す方法だね。さっき言った通り、竜魂は本来集まる性質があるんだ。それも、より強い魂にね。だから、竜魂を吸収した私は、おそらくそれらとエンカウントしやすいはずなんだ。」


「つまり、待つしかないってことですか……」


その時、ピピピッとアラームが鳴った。帰る時間に設定していたアラームだ。


「時間も来たし、今日はこれで解散しようか。」


「そうだね、帰ろう。」


そして二人は帰路についた。






誰もいないはずの広場に、突如として俯いた少女が現れた。広場は先ほどイレギュラーが倒されたばかりの場所だ。


「なんで、なんで、なんで、なんで……」


少女は狂ったように、呟き続ける。


「私が先に愛してたのに……私が先だったのに!」


その怒りの叫びは、ダンジョン内に轟き、壁にヒビを入れて崩壊させた。崩れた壁の向こうからは、輝石と呼ばれるダンジョン内の照明石が現れ、少女の顔を照らし出す。


そこには、長い銀色の髪を持つ、とても美しい少女が立っていた。


「ようやく、見つけたのに……!死んじゃえばいいんだ、あの女も。私を愛さないなら……あいつも……死んじゃえばいいんだ!」


妖艶な笑みが、少女の顔に浮かび上がる。


「いっぱいイレギュラーを作って襲わせようか、それとも、もっと強いのを作って襲わせようか……」


少女の姿は、徐々に闇に飲まれて消えていく。


「それとも、私が直接殺すか……」


その言葉だけが、暗い空間に残り、そして静かに消えていった。

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