第2話

周囲の人々は、突然叫び出した男を驚きの目で見つめていた。視線が刺さるように感じる。


「周りの視線が怖くなったから、一旦落ち着こう」


深呼吸をして、心を落ち着けると、再びダンジョンに向かって歩き出した。


「ここまでくれば、さすがに誰もいないな」


周りをキョロキョロと見渡し、ようやくため息をつく。


「やっぱり、何度見ても巫女だよな」


その場にしゃがみ込み、ステータス画面を何度も開いたり閉じたりしながら、呆然とする。


「職業の名前は一旦置いとこう。大事なのはスキルだ」


改めてステータスを表示させる。


名前: 守宮千優

職業: 竜の巫女

肉体: 小柄

スキル:

ドラゴニックパワー

(自分以外の対象、複数不可、筋力を2.5倍にする)


「まじかぁ…バフ系の職業で、しかも自分にしか使えないのか。ソロは厳しいな」


頬を強く叩きながら立ち上がり、決意を新たにする。


「とりあえず、魔物を倒して二つ目のスキルを手に入れてからだな。パーティーを組む気はないし」


覚悟を決めた顔で、ダンジョンの奥へと進み始めた。


ダンジョンをしばらく進んでいると、身長が30cmほどの小鬼が現れた。


「こいつを倒すのか」


この世界のスキル取得方法は二つある。一つは、魔物を倒して経験値を貯めることで職業スキルを入手する方法。職業スキルの数が増えると、次のスキル入手に必要な経験値も増える。もう一つは、スキル玉を吸収することで入手する方法。魔物を倒したときに超低確率でドロップし、スキル玉は5分以内に回収しないと消えてしまう。


「グギャギャ!」


小鬼がこちらに気づき、ナイフを振り回しながら突進してきた。


「ふんっ!」


バットを振り回すように棍棒を振り下ろすと、小鬼は一撃で壁に吹き飛び、絶命した。


「本当に死んだら砂になるんだな」


小鬼が砂のように崩れていく様子を見ながら、全身が砂になっていく。数秒後、ダンジョンに吸収され、小石だけが残った。小石をポーチのポケットにしまい込む。


「1階層だから弱いな。この調子でいけば、次のスキル入手もすぐだな」


「おらっ!」


また一匹、小鬼が壁に叩きつけられた。


「これで35匹目か」


小鬼が砂のように崩れていく中、突然耳元に機械的な声が囁いた。


『経験値が一定量を超えました。職業スキルを入手します』


「二つ目のスキルは経験値が少ないらしいから、すぐに手に入ったな」


再びステータスを表示させる。


名前: 守宮千優

職業: 竜の巫女

肉体: 小柄

スキル:

ドラゴニックパワー

プロテクション

(対象2つまで、攻撃を2回防ぐ防御膜を付与する)


「攻撃系ではなかったけど、自分にも付与できるスキルだから良かった」


その時、アラームが「ピピッピピッ」と鳴り始めた。


「もう帰る時間か」


最後にダンジョンを一目見渡し、とりあえず今日は帰ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る