第1話

男はベッドから体を起こし、ぼんやりと天井を見上げた。


「変な夢を見た気がする…どうして涙が?」


涙を拭いながら、まだ少し寝ぼけた体をぐっと伸ばした。


「今日からついにダンジョンに入れるようになったんだ。ちょっと緊張してるのかな」


20XX年6月2日、世界が突然ファンタジーの世界に変貌してから3年が過ぎた。ダンジョンは増え続け、今では数百個のダンジョンが各国に姿を現している。18歳以上で免許を取得すれば、誰でもダンジョンに挑戦できるようになった。


男はダンジョンの入口の隣にあるダンジョンセンターで、ドキドキしながらダンジョン免許を眺めていた。


「やっと、ダンジョンに入れるんだな」


その瞬間、アナウンスが流れた。


「守宮千優様、6番カウンターまでお越しください」


名前を呼ばれ、男はカウンターへ向かった。担当者が優しく微笑んで、言った。


「守宮千優様ですね?」


「はい、そうです」


「それでは、左の機械にダンジョン免許をスキャンしてください」


機械に免許をスキャンすると、「ピピッ」と音が鳴った。


「次に、右の機械で指紋と暗証番号をお願いします」


タッチパネルに人差し指を押し付け、音が鳴るとともに表示された数字に暗証番号を入力する。


「はい、完了です。9番カウンター横のロッカーに名前が表示されていますので、ダンジョン免許をスキャンして装備を受け取ってください」


9番カウンターの隣にあるロッカーのような機械で、表示された名前を確認しながらダンジョン免許をスキャンすると、扉がカラクリのように開いた。


「皮の胸当てと棍棒か…これが初心者セットってわけか」


不満をつぶやきながらも、装備を整え、ダンジョンへと向かう。


「このステータス取得が、これからの運命を決めるんだ」


心に決めた覚悟を胸に、ダンジョンに足を踏み入れると、耳元に囁くような声が聞こえてきた。


『ダンジョンに初侵入しました。ステータスを取得します』


目の前に青い半透明の板が現れ、黒い文字でステータスが表示された。


名前: 守宮千優

職業: 竜の巫女

肉体: 小柄

スキル: ドラゴニックパワー

(自分以外の対象、複数不可、筋力を2.5倍にする)


「巫女?」


何度もステータス画面を見直し、スマホを取り出して検索を始めた。


「巫女 意味 神霊に奉仕する女性」


別のサイトを開く…


「神に仕える女性」


手元を見下ろし、呆然とする。


「別に男の娘になってるわけじゃないし…確かに可愛い物は好きだけど…」


息を大きく吸い込み、心の中で決意を込めて叫ぶ。


「俺は男だァァァ!」


ダンジョンの中に、虚しい叫びが響き渡り、やがて静寂が戻った。

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