第42話 幕間・月光

1 火のない部屋の隅にしゃがみ込み、


2 爪の先で剥がれかけた床板をを搔き毟った。


3 開け放たれた窓から真っ白な月光が差し込み、


4 爪が剝がれかけて血が滲んだ指先を照らした。


 

5 厳冬の北風が開け放たれた窓をがたがたと揺らす。


6 一糸纏わぬ肌が凍てついた風に切り刻まれた。


7 のっぺりとした白々しい光が痩躯を照らす。


8 我が身を飾るべき雄々しい毛皮は何処にあるのだ。



9 俺は孤独なのではない。俺は群れたいのではない。


10 何故なら王は一人だからだ。俺は与えられたいのではない。


11 死を積み上げなければ王に届くまい。なぜなら王とは死を齎す。


12 牙のように反ったナイフを歯に当てて削ぐ。延髄に真っ白な激痛が走る。


13 痛みに狂い体を捩じりながら、苦痛を味わうように舌を突き出す。


14 舌先に残ったのは流れる落ちる泪。汗と汚泥。侮蔑と狂気。鮮血の記憶。


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