第98話 それぞれの想い






 現在、フオンとネロは二人で23階層に向かっていた。服部と諏訪部は既に各階層で別れた後だった。



 諏訪部は6階層までの階段が既に出現している5階層の「ダンジョンコア」らしきものがある場所に着くと足を止める。



『俺は此処の階層が担当だな。みんな、くれぐれも気をつけてくれよ?』


 諏訪部は両腰に吊るしていた片手剣を素早く抜刀するとフオン達に告げる。今は何も魔物はいないが用心するのには越したことはない。


『諏訪部さんも気をつけて!』

『諏訪部殿、また会いましょうぞ!』


 ネロと服部の二人は諏訪部にそう激励を告げると二人とも一足先に6階層の階段へと向かう。


 そんな中、フオンも先に進もうとすると諏訪部に声をかけられる。



『────フオン君。君に色々と背負わせるのは俺達大人としては不甲斐ない気持ちだが、後は任せるよ。千堂さんとみんなを宜しく、頼む』

『────わかってるさ。それにそんなに気にしなくて良い。適材適所で動けば良いのだからな。俺が千堂さん達を助けに行くのが最善だっただけなのだから」


 立ち止まるフオンは諏訪部にそう返す。そんな言葉を聴いた諏訪部は「ふふっ」と笑う。



『君は………君の考えは俺達よりも大人みたいだな。まぁ、良いさ。全てが終わったら、一緒に酒でも交わそう』

『────すまん。俺は、酒が苦手でな』


 フオンはそう言うと申し訳なさそうに頭を掻く。


 だが、諏訪部は特に気にしていないらしく。


『そうか。まぁ、その時はジュースでも良いだろう。楽しみにしているよ』

『わかった。諏訪部さんも、気をつけて』



 そんな言葉を交わすと二人は無言で握手を交わした後に別れる。





 5階層で諏訪部と別れた後、直ぐに12階層まで進む13階層までの階段が既に出現している「ダンジョンコア」らしきものがある場所に着くと────



『では、拙者は此処の担当ですかなぁ〜お二人も兄妹で積もる話があるでしょうから先に行きなされ』


 腰差から抜刀した小刀を構え、それとは反対の手で印を結んだ服部はフオンとネロに声をかける。



『………服部君………うん!服部君も気をつけて!』


 少し、含みがある服部の話し方に何かを言いたそうにしていたネロだったが、今は良いと思ったのかそのまま13階層に進む階段へと向かう。


 そんな中、フオンは口を開く。



『────お前が俺達のことをどこまで知っているかわからんが、あまり検索はするな』

『────いやいや、拙者はフオン殿達のことなどそんなに知らんでござるよ!?兄妹で何か話でもあるのかと思って伝えただけだったのですが………』

『………勘違いは人間だからしょうがないな』


 フオンやネロが考えることではなく、服部はただ単にを進めていただけだったらしい。それを勘違いしていたフオンは瞬時に自分の非を認める?



 ただ、服部は────



『あれあれ〜?フオン殿ともあろうお方が"勘違い"をしてしまった、と?』

『────黙れ、捥ぐぞ』

『何を!?』


 二人はそんな馬鹿な会話をしていたが────



『まぁ、いい。お前も気を付けろよ?』

『フオン殿こそ。最下層に何がいるかはわからんですが、貴殿なら問題ないでしょう』

『────任せろ』


 言葉を交わした二人は特に握手などせずに淡白に別れる。それは、お互いを信頼しているからこその行動なのかもしれない。


 フオンと服部も別れる。




 そんな服部と諏訪部の二人と別れたフオンとネロはもう時期に23階層に着くと言う時、走りながら話し合っていた。



『────服部君と諏訪部さんが同行してくれてよかったね。なんか、服部君は最後何かを思わせな言葉を呟いていたけど………』

『あぁ、アレな。服部は単純に俺達、「"兄妹"の話し合いを楽しんで」という意味だったらしいぞ。だから、お前の勘違いだな』


 自分の勘違いは棚に上げてネロだけが勘違いをしていたという体で話すフオン。


『あぁーーー、そういうことね』


 深く考えすぎて勘違いしてしまったのが恥ずかしかったのか少し、頬を赤くするネロ。


 でも、それよりもフオンにはネロに聞きたいことがあった。


 それは────



『ネロ。それよりも俺達二人は"離れられない"。そこのところどうする?を外せば二つの階層の「ダンジョンコア」の同時破壊など容易いが………千堂さん達を守りながらの戦いは少し、厳しいな』


 フオンには珍しく、少し難しそうな表情を作る。


 そんな事を言われたネロは──── ──── ────何故か、目を泳がしていた。それと共に息も荒い。


 様子がおかしくなったネロに気付いたフオンは話しかける。



『────どうかしたか?息が荒いし、少し様子がおかしいようだが』

『あ、あぁ、その。お兄ちゃん………いや、。怒らないで、聴いてくれるかい?』


 フオンに話しかけられたネロは先程よりも様子がおかしくなる。そのままフオンの名前を────"幸太"と、呼んできた。



『────お前が話す内容にもよるが、まぁ、とんでもない話でもなければ怒らない』

『────わかったよ。僕は────』


 ネロはそう前置きを置くと話した。



 その内容は────



 自分とフオンが昔行った「不老不死」になる為の制約レミテーションのせいでことが────既に解除されていること、を。

 それも、「隠しダンジョン」────通称、「川越ダンジョン」から地上に出る時からもう既にネロと交わした制約レミテーションは解除されていたという。


 そもそもの解除されてしまった理由は────フオンが強くなりすぎてしまったため、ネロの魔法を自動的に弾いてしまったらしい。


 その話をしたネロは、頭を下げながらフオンに謝った。



『────だから、しっかりと話さなかったこと、本当にーーーーーーーごめん!!!』

『………ネロ、貴様………』


 そんなネロに呆れるフオン。フオンは怒りはしないが、「話せる時間など沢山あったのに何故、今になって話す」と、呆れていた。


 それをネロに聞くと────



『────いや、その〜幸太君だったら自分で気付くかな〜とか思っちゃったり、して?』


 首をコテンと横に倒すと可愛さで逃げようとするネロ。


『────はぁ、もういい。俺とお前が離れても問題ないことがわかればいい。ただ、俺の「不老不死」は無くなった、と言うことか?』


 フオンとしては自分が「不老不死」だろうが、なかろうがどうでもいいが、念の為、一応聞いてみる。


『あぁ、うん。多分、幸太君は「不老不死」なんてどうでも良いと思っていると思うけど………もう、「不老不死」の効果はないね』

『────わかった。この話はもう良いだろう。今は千堂さん達の元に向かわねばな』


 そう話すとフオンとネロの二人は23階層まで進む。



(────あぁ、怒られなくてよかった。でも、この状況でバレるとはね〜。ちぇっ、これで幸太君に単独行動されちゃうよ。流石に何処かに行く時は僕に一言は………言うと思うけど。むぅ………魔物で鬱憤を晴らすしかないようだね)


 そんなとこを内心で考えるネロは魔物は何も関係ないのに八つ当たりをしようと考えていた。


 そのあと、フオンとネロが単独行動で動けることがわかったので、そのままネロは23階層、フオンは最下層へと別れる。


 









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