第97話 作戦開始
フオン一行は「東京ダンジョン」に来ていた。「ダンジョン」内に入る前にまず、やることを済ます。
『────まず、さっき話した手筈通りに今の「ダンジョン」内がどうなっているのか拙者の忍術で確認するでござるよ』
「東京ダンジョン」に来る前に事前に話していたのかそんなことを口にした服部は「東京ダンジョン」に顔を向けると目を瞑りながら自身の目に氣を溜める。すると、両手で印を作り忍術の名を叫ぶ。
『────土遁&風遁────その先を見据えろ、"透視"!!』
服部がそう叫ぶと服部の目前に「東京ダンジョン」の構造の地図が作成される。
そんな服部をフオン達は興味深そうに見ていた。諏訪部なんて服部の「忍術」という言葉を聞いてから何故か、ワクワクとした様な表情を浮かべていた。
少しすると────
『────見えた!!見えたでござるよ。まず、5階層と12階層と23階層────最後に最下層に強大な魔力の塊がありますな。それに、最下層には点々とした氣があるのでそちらに千堂殿達がいるのでしょう』
目を開けた服部はフオン達全員に聞こえるように話す。
そんな服部の話を聞いていたフオンは側で「妖精眼」を使い服部と同様に「東京ダンジョン」の構造を確認していたネロに視線を向けると────ネロは驚いた顔を浮かべていた。
そんなネロに小声で耳打ちをして聞くフオン。
『────どうだ?服部が今、言った言葉は合ってるか?』
『う、うん!服部君の忍術?って凄いんだね。ドンピシャで当たっているよ。僕の観た情報と遜色ないよ』
ネロのそんな話を聞いたフオンは服部の忍術に関心する。フオンとて服部を疑っている訳ではなかったがネロの「妖精眼」も信頼しているので服部と同時進行で「東京ダンジョン」の構造を確認して貰っていた。
そんなネロが服部が言った言葉は嘘偽りが無いと告げるのだから。
ただ、フオンが服部に何かを言う前にネロが口を開く。
『────服部君。僕も君と似た「スキル」で確認したけど君と同じ内容だったよ』
『おっ!そうでござったか!良かったでござるよ。これで間違っていたら切腹モノでした!!』
ネロの言葉を聞いた服部はそんなことを嘯きながらも口にする。
ただ、ネロは話を続ける。
『ただ、「ダンジョン」内の構造は、起こっていることは"大体"それで合っているんだけど………他に何か、わかったことはあったかい?』
『んーん、そうですなぁ〜。これ以外は特にわかりませんな。ネロ殿には何か他にわかったのですかな?』
少し考えるそぶりを見せた服部だったが、自分が観たモノは先程話したこと以外に無いのか直ぐにネロに聞き返す。
聞かれたネロは頷く。
『うん。まず、構造とかは服部君の言う通りであっているだろうね。ただ、「東京ダンジョン」で"今"起きようとしていることがある』
『ネロ、続きを話せ』
ネロがそう話すと、間髪入れずにフオンが先を催促する。服部と諏訪部もネロの話を待っていた。
『────わかったよ。「東京ダンジョン」では今、「スタンピード」が"人為的"に起きようとしている』
『なんと!!』
『なっ!?それは本当か!!?』
『…………』
ネロ話を聞いた服部と諏訪部はそれぞれ驚いていた。フオンは表面では普段通りに取り繕っているが、内心では「面倒臭いことになっているな」と、思っていた。
フオンにはそれでもネロの話し振りから少し違和感を覚えたのでそれを聞く。
『────ネロの話からすると、だ。何かが起きようとしている。それが「スタンピード」。でも、まだ起きてはいない。それに人為的────「ダンジョンマスター」もしくは他の誰かが介入をして地上を陥れようとしている、とそんなところだろ?』
『────その通り。と、言うかお兄ちゃんに全部言われちゃったよ。────まぁ、今、お兄ちゃんが話した通りだよ。それに一つ付け足すと防ぎ方はあるってことだね』
フオンの話を肯定したネロは付け足すようにそう話す。話を聞いたいた服部と諏訪部は心底安心した表情を浮かべた。が、その「防ぎ方」とやらを聞くためにネロに注目する。
『まず、防ぎ方だけど、服部君の言う通りに「東京ダンジョン」内の各階層────5階層、12階層、23階層、最下層の30階層に「ダンジョンコア」なるものがある。その「ダンジョンコア」四つを同時に壊すことが「スタンピード」を防ぐことだね。そのうちに魔物の氾濫、「スタンピード」が起きてしまうかもしれないけどそれを防ぎながら四人がその場に着いたと同時に────「ダンジョンコア」を破壊すれば良い』
今の「東京ダンジョン」の事情、「スタンピード」の止め方を話したネロだったが、聞いていた諏訪部は少し暗い表情を浮かべる。
『────ネロ君の話を聞いて大方はわかった。四人いるし「ダンジョンコア」を壊すのは訳ないだろう。それに、その方法だと「東京ダンジョン」が消滅するのは免れないが仕方ないな。ただ、同時に壊す、というのは少し無理があると思う。何か連絡手段があれば良いが、今はそう言ったモノは持ち合わせてないからな』
そんな諏訪部にネロは────
『あぁ、それは問題ないよ。連絡手段は僕の「スキル」で「共鳴」って言う僕と感覚を共感する「スキル」があるから問題ないね』
そんなネロの話を聞いた諏訪部は参ったねと言いたそうな表情を浮かべる。
『────君達、兄妹は本当に規格外だね。まぁ、でも連絡手段は大丈夫、と。後は各階層の担当者だけど────』
そう口にした諏訪部はチラッとフオンを見る。見られたことに気付いたフオンは口を開く。
『────任せろ。最下層は俺が担当する。千堂さん達もいると思うし、「ダンジョンマスター」もしくはそれに通じる何かがいるだろう。だから後はお前らで決めろ』
即答で返された諏訪部は苦笑いを浮かべた。
『ははっ!即答とは恐れ入ったと言うか、凄いと言うか………まぁ、何よりも君の存在は頼りになるな。────他のみんなは何処を担当したいか何かあるか?』
諏訪部はネロと服部の二人にそう問う。
『僕はお兄ちゃんと近い23階層を務めるよ』
『なら、拙者は12階層を任されたでござるよ』
聞かれると直ぐに答える二人。
『ネロ君はともかく、服部君、君も勇気があるね』
『ふふっ、人々を守ると誓った時から勇気は心に持ってるでござるよ。拙者、忍者ですしね!』
『────そうか。君の考えは素晴らしいな。よし、では俺は5階層を任された』
そう話し合うとネロが先程言っていた《スキル」の「共鳴」というものをする為に詠唱を行う。
『────感覚を共にする者たちよ 汝らの感覚と供用しよう────「
ネロがそう魔法の詠唱を唱えるとフオン、服部、諏訪部の3人を囲むように魔法陣が生成される。生成されたと同時に「ポツン」そんな水滴が水面に落ちたような音が響いたと思うとさっきまであった魔法陣が消える。
『何か変わったでござるか?』
『………わからないな』
服部と諏訪部は何が変わったかわからなかったがフオンは少し違うようで。
『────俺が発信源ってことか?』
そう呟く。
フオンの発言を拾ったのかネロは一つ、頷く。
『うん。お兄ちゃんは最下層を担当するからお兄ちゃんが「ダンジョンコア」の破壊を大丈夫だと判断したら「共鳴」で伝えて。お兄ちゃんだけ少し違和感があると思うけど、その感覚が「共鳴」の"発信者"の役割だね。合図は右手を頭に添えて話すこと。何か、口にするか、それか、頭の中で考えてみてよ?』
ネロにそう告げられたフオンはフードで口元が周りから見えない中、少し、笑うと。
『────わかった、では────』
一白、置いたフオンは頭に右手を翳し────
【────作戦、開始】
フオンがそう告げると共に────
【任せて!!】
【おう!でござる!!】
【承知した】
そんなそれぞれの声が頭の中に響き渡る。それと共にフオン達の救出作戦も同時に開始される。
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