第91話 託されたもの
セリナを包む眩いほどの暖かな光が収まるとそこには姿が変わったセリナの姿があった。お馴染みの
セリナの姿は元々の純白のドレス型の鎧に金色の刺繍が所々に施されていた。それはとても煌びやかしいデザインだった。それと共に何処となく神秘的な光を放つ鎧。その美しい銀色の髪にはちょこんと星の形を形どった様なティアラが乗っていた。
雰囲気も普段のセリナとは別格で千堂は見ていて「これならクリプットに勝てるのでは?」と、思うほどの覇気を醸し出していた。
そんなセリナに千堂はどう声をかけたらいいのかと思想をしている時。
「────千堂さん。行ってきます」
セリナは千堂の方を見る事なくそんな一言を残すと────一瞬にして「ダンジョン」の壁に未だに貼り付けにされているクリプットの元に向かう。
「────あぁ、行ってきな。"セリナちゃん"」
そんなセリナにその一言だけ千堂は告げる。二人には今はそんなに語る言葉は不要だった。周りで見える惨状で今がどんな状況などとわかるのだから。
◇
「────ガアッ!この!矢如き、ガアッ!!?何故、抜けん!?クソッォ!!」
クリプットは未だに「ダンジョン」の壁に矢で縫い付けられながらもどうにかして脱出をしようと試みていた。だが、いかんせん矢が抜けないわ、隼也が死しても尚、純白の炎は燃えていてそれがクリプットを焼き続けるのでとても────鬱陶しかった。
この純白の炎で自信が死なないのはわかっていた。だが、動けない事には千堂達────人間を殺せない。
普段のクリプットだったら「所詮人間如き」と侮るはずだが、今回の戦いで色々とわかった。人とは自分が思っている以上に成長がとても速く、自分の予想を遥か上にいく強さを見せてくる、と。
それは隼也もそうだった。吹けば飛ぶだろうというような貧弱な人間だと思っていたが、自分の思い違いでこうも足止めをされてしまっていたのだから。この醜い姿になった時に人間を侮らないと認識していたはずだったが、考えが甘かった様だ。
ただ、そんな事を考えていたクリプットだったが、誰かが近付いて来ていること気付き、そちらを見ると────
「────女!?貴様、立ち上がったと言うのか。それに、その、姿は………」
そこには先程まで倒れ伏していたセリナが立っていた。
セリナの変わり果てた姿を一目見たクリプットは忌々しげな視線を送る。それに今は自分はかなりピンチな状況に陥っていた。
ここにいる人間達ではどうあっても自分を倒せないと踏んでいたが今は思う様に行動ができない状態なのだから。
「────今は、貴方と無駄話しをしている暇などないわ。緑矢さんが作ってくれた時間を無駄にしたくないから。だから────もう、終わりなさい────
セリナが魔法の詠唱を唱えると目の前に1メートルほどの大きさの光の輪っかが二個生成される。それをセリナが手に持つとクリプットに目掛けて────投げる。
セリナがクリプットに向けて投げた二つの光の輪っかは「ダンジョン」に縫い付けられているクリプットの身体を固定する様に嵌まる。
「ぬっ!?………これは、なんだ?特にダメージを受けた感覚が無いから攻撃用の魔法ではない、のか?」
セリナの行動に不審がるクリプットだが、セリナはそれに答えなどしない。
セリナが生成した光の輪っかは元々クリプットの身体を"ただ固定するもの"だが、クリプットには他の用途で使うものだと"わざ"と思わせる。
────今から自分が行う事から逃げさせない為に。
なので、クリプットが何かに勘づく前に早く終わらせてしまおうと思った。
セリナは腰から
「────「我が声に呼応せよ それは我等に光を灯す英知 それは輝ける未来を照らす希望 我が剣を依代に主の剣神の力を与えください 栄光をこの手に────「
セリナが「
光り輝くと共に
「────ふーん?ルーナにこの剣なら魔族を倒せるって言われたからやってみたけど、大剣って使った事ないのよね」
そんな事を呟くセリナは自分で姿形を変えた
ただ、そんなセリナの様子を見て一人顔を青ざめている人物がいた。
(────待て、待て待て!!い、今、あの女はなんと言った?………「
クリプットはそう内心で思うと動揺を越えて過呼吸気味になっていた。そんなクリプットだが、直ぐ様にこの場から離れようと思った。
その理由は簡単だ。────今、セリナが持つ剣が本物の「
だが、クリプットは完全に誤算だった。先程隼也から受けた純白の炎の矢がまだ抜け落ちない事と。
それに────
「な、なッァ!?この光の輪っかは俺を逃がさない為の物か!!?」
今、漸く気付いたのかクリプットは壁に貼り付けなされたまま無駄な足掻きをする。そんなクリプットをセリナは哀れな者を見る様に一瞬見たが今は早く戦いを終わらすのが先決だった。
なので容赦はしない。
「────これは私一人の勝利ではない。ここにいるみんながいたからこその勝利。それに貴方を野放しにしたらあと何人の命が亡くなるかわからないわ、だから今此処で────断つ」
セリナはそう呟くと今ある魔力を自身で持つ大剣に全て注ぐ。それは必ずクリプットを仕留めるということが伝わってきた。
そんな中────
「ま、待て!待ってくれ!!?そうだ!話し合おう!!俺達は話し合えば分かち合えるはずだ!!?そうだろ!?人間!!!」
「…………」
クリプットはそんな事を今、この死の間際に喚き散らす様に伝えてくる。
ただ、そんな聞くに耐えない言葉などセリナが了承するわけがなく。
無言で魔力が溜まった光輝く大剣を両手で持つとその剣先をクリプットに向ける。
「────こ、こちらは降参すると言っているのだ!!それに俺達は元々敵同士ではない!だから、もうこんな無駄な戦いはよそう!!」
クリプットは自分の事を棚に上げてそんな事を血相を変えて叫ぶ。
厚顔無恥とはこの事を言うのだろう。自分の事は棚に上げて自分がいざ不利になると助けを請おうとする。まさに"悪"そのものの所業だろう。
ただ、セリナはそんなクリプットの話を聞いて────笑っていた。いや、嗤っていた。
「────本当に反吐が出るほどの潔い性格よね、貴方。それに私が貴方と千堂さんの戦いの会話を聞いていないと思った?────しっかりと聞いているわよ。
「ち、違う!!?アレは口から出た出まかせだ。本当はそんな事を思ってなどいない!本当だぞ!!?」
そんな往生際の悪いクリプットの話を聞いていたセリナは表情を歪ませる。
「────はぁ、もういいわ。消えなさい。貴方の話しを聞いていると耳が腐るわ」
セリナはそう残すと、大剣をクリプットに向けながら正面に掲げて構えると詠唱を唱える。
「────「これは光の奔流 これは星の息吹 信託が告げた時、解放されし刻きたり 星を包む程の熱量を持ってして決別の時は、来たり────」
セリナが詠唱を唱えていくとセリナの言葉に呼応する様に大剣は輝きを増し、セリナ自身の身体すら多量の魔力のせいか翡翠色に発光させる。
よく見ると「ダンジョン内」だというのに上空に星々が沢山散らばっていた。
「やめろ!!やめてくれ!!!!それは、喰らえば俺は、俺は、俺自身が消える!!?消えてしまう!!!!?」
クリプットは尚も何かを叫び散らかしているがセリナは止まらない。
「────「栄光を 勝利をこの手に 遥か彼方へ────「
セリナの詠唱と共に上空にある星々を吸収して膨れ上がる光の熱量は「ダンジョン」の天井に届くんじゃ無いかというぐらいに輝く。
そんな全てを打ち消すだろうエネルギーを溜めた大剣をセリナはクリプットに向けて────振り下ろす。
「────ッ!?や、やめろォォッ!!?や、ォォッ、アァッッ……ァァォッ…………ァッァァァァ────!!!?」
無抵抗のまま直撃したクリプットは始め何かを叫んでいが、徐々に聞こえてこなくなり、クリプットごと「ダンジョン」の壁を飲み込んだ光の剣は「ダンジョン」の壁を突き抜けそのまま暗闇の彼方へと────消えていく。
それは流れ星が瞬きの間に一瞬で視界を過ぎ去ってく様な一撃だった。
最後に残ったのはポッカリと空いた「ダンジョン」の壁だけだった。
「────ハァ、ハァ、ハァ、ハァ──── ──── ──── ────」
そんな中、いつの間にか元の
それは戦いが終わった事を意味していたが、セリナはクリプットの執着深さから油断が出来なかった。
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橋本 セリナ(16歳 女)
L v.:95
種族:人間
職業: 剣姫→星剣姫(覚醒) NEW
体力:4000
魔力:150000 +(100000)
スタミナ:3600
筋力:33000 +(30000)
防御力:2500
魔防御力:6000
素早さ:36000 +(30000)
運:90
加護:星神の加護【星の神の祝福 魔力が+100000 強化・素早さが+30000 (ただし、「
スキル:体術 lv.13 NEW 剣術 lv.15 NEW 身体能力MAX 光魔法 lv.10 鑑定 加速 闘気 精霊と心通わすもの 覚醒者 NEW 限界を超えるもの NEW 星魔法 lv.MAX NEW →
ユニークスキル:1・「
2・『
エクストラスキル: 1・「
2・「
属性: 無 光 星 NEW
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