第90話 緑矢隼也の独白
あぁ、守れて────みんなを守れて、本当によかった。
魂の灯火が消えていく最中、隼也はそんな事を最後に想う。
──── ──── ──── ──── ──── ──── ──── ────
俺の名は、
年は────24歳だった。
何処にでもいるような普通の人間だ。
ただ、一つ、いや、二つか。他の人に自慢できることがあるとすれば────人付き合いが良いことと、面倒見が良いことだろう。
それは、俺自身もなんとなくはわかっている。元々俺の
ただ、そんな俺は"世界がおかしくなる"まで家族を養うために仕事に精を出していた。両親が直ぐに亡くなってからは俺が大黒柱として家族を支えるために朝昼晩問わず働いていた。
俺はこれといった特技も無ければ、趣味もなかった。だからかただ働いて働いて一日が終わるというなんの面白味もないルーチンを過ごしていた。
ただ、顔が少し良かったこともあり俺の周りには女が寄って来たが────興味が無かった俺は直ぐに突っぱねた。
いや、まぁ、女が嫌いなわけじゃない。ただ、今は一人の女性を愛している暇など俺には無かった。それにこんな俺と一緒になれば不幸にしてしまうかもしれない。そう思ったから女性との付き合いなどとうの昔に諦めていた。
そんな事をいつものように考えていたある日、突如として────世界は変わった。
世界に「ダンジョン」や「スキル・ステータス・レベル」などといったどうにもファンタジー的な概念ができた。
それは俺や俺の
世間では「スキル・ステータス」が強力な者は下を見下し、「スキル・ステータス」が弱い者は上に媚び諂う。などといった馬鹿らしい考えが世に蔓延っていたが。
そんな事を気にしない俺は通常通り生活をしていた。ただ、そんな中、俺の
『兄ちゃん!世界はどうなっちゃうの!?』
『お兄ちゃん、怖いよ!』
『隼兄ちゃん!僕達死なないよね?』
『大丈夫、大丈夫。俺が、俺自身がお前達を守るから。何があっても兄ちゃんが守ってやるからな!!』
出来もしない事を口から出任せに俺は
『『わかった!兄ちゃん!!!!』』
それでも俺のなんの根拠もない言葉を絶大に信頼してくれている
そんなみんなの顔を俺は────"嘘をついてしまった"という罪悪感からか直視出来なかった。
だってそうだろ?初めから苦しい生活だったのにこんな死と隣り合わせの生活になってしまった。そんな中、嘘をついてでも自分の家族にはせめてもの「大丈夫」だと安心して笑っていて欲しかった。
それに敵は「ダンジョン」の魔物?────馬鹿いっちゃいけない。「スキル」なんていう危ないモノを手に入れた"全ての人間が敵"だ。
俺が手に入れた「スキル」もそれ程強いスキルというわけでは無かった。中には「スキル」を一切持たない子もいると聞く。そんな子と比べると「スキル」が一つだけでもあるだけで恵まれてると言えるだろう。
そんな中、俺が手に入れた「スキル・ステータス」は────
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緑矢 隼也(24歳 男)
L v.:1
種族:人間
職業:
体力:100
魔力:20
スタミナ:30
筋力:10
防御力:20
魔防御力:20
素早さ:60
運:60
加護:??の加護
スキル:索敵lv.1 蛇足lv.1 ナイフ術 lv.1 罠感知
ユニークスキル:??? ???
エクストラスキル:???
属性: 無 ???
???
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────俺の「スキル・ステータス」構成はこんな感じで完全にアタッカーではないことがわかった。
唯一攻撃用に「ナイフ術」なんてものがあるがナイフで敵と戦うことなどこの方したことはなく、宝の持ち腐れとなっていた。他にも「???」となっている空欄が何箇所かあったがどうせ自分は────「冒険者」などになるつもりなどなかったためその時はそんなに気にはしなかった。
◇
俺がいつものよう仕事先から住んでいるボロアパートまでの帰り道を歩いていると────やけに俺達が住んでいる付近が騒がしいことに気付いた。その時に何か、虫の知らせの様なムズムズとした感覚がした。だから駆け足で
家に着き、俺の目の前に映るのは────
数人の大人達に自分の愛する守るべきである
なので、俺は────
『────ッ!!手前ら、ふざけるなあッ!!俺の家族に、手を出すなァッ!!』
叫びながら大人達に殴り掛かる。
そんな俺に漸く気付いたのか少し動揺を見せる大人達。
ただ、それで良い。俺は喧嘩なんてやった事ないし、こんな威勢はただの見せ掛けだ。それでも俺の家族が逃れる時間が作れるなら俺などどうにでもなって良いと思った。
そんな捨て身の特攻をした俺だったが────
『────おい、アイツ雑魚だぞ!今、「鑑定」で見たら「レベル」も「1」だし』
『チッ!見かけだけかよ!邪魔だ!雑魚がッ!!』
相手が怯んだのは一瞬で相手の仲間が「鑑定」という物を使い俺の素性を確認したようだ。目の前の大人達は俺は取るに足らない"雑魚"だと認識すると俺の弱っちいパンチを躱すとそのまま腹を殴ってくる。
『ガハッ!?〜〜〜〜!!!?』
軟弱な俺はそんな大人達の強打の一撃でのされる。俺はあまりの痛さに声にならない悲鳴を上げると殴られたお腹を抱えてその場で蹲る。
『『お兄ちゃんッ!!?』』
そんな中、俺の家族の悲鳴が上がる。
でも俺は何もできない。守ると誓った想いは儚くも直ぐに消え、俺は情けない姿だけを晒す。
動け、動け、動いてくれよッ!!
そう思うが自分の身体は心身ともに目の前の大人達に負けてしまったようで、どうも立ち上がれそうにない。
あぁ、世界が変わろうと自分が変わらない限り何もできないし、守れやしない。
俺にもっと力があれば────
大切な家族達が連れ拐われている最中、俺は浅ましくもそんな事を考えた。
『────手前ら、少し待ちな。子供達が嫌がっていることをする。それって────犯罪だよな?』
俺が意識を闇の中に手放し、全てを失うという時にそんな男の声が聴こえる。ただ、その声は俺の家族を拐おうとしている奴等とは違く、どこか優しみや親しみが持てる声だった。
『チッ!他の仲間が来やがったか!アイツもやるぞ!』
『『おう!!!!』』
ただ、来てくれたは良いが相手は複数人の大人達だ。声が聞こえてきた限りだとこちらを助け?に来てくれたのは一人だろう。そんな状態で勝てるわけがない。
────"正義の味方"でもあるまいし。
でも、その人物は────
『────犯罪は見過ごせねぇ。それに、助けを求めている人はもっと見過ごせねぇ!』
そんなことを言うと隼也の家族を助ける為に一人、立ち向かう。
ただ、俺は奇しくもさっき殴られた箇所の辺りどころが悪かったのかその痛みからか意識を手放してしまう。できれば助けに来てくれたお人好しの顔を一度は拝みたかったし、家族を守りたかった。でもそれは叶わない。
そう思うと────どうでもいいや、と思ってしまった。
そんな俺の意識が消える中、何かが聴こえた。
『────ま、まずい!!コイツ────「剣鬼」の"千堂剣夜"だ!?』
そんな聴いてもわからないような声が聴こえる中、俺の意識は完全に、途絶えた。
◇
深い、深い、それは深い海の底を沈んでいく気分だった。手も足も動かない。目も開けられない。ただ、想うことは自分の愛すべき家族を救えなかったという自身への不甲斐なさ、絶望感。
ただ、なにも出来なかったことには変わりはない。守ると誓った。なのにこんな自分ではなにも為せない。
あぁ、もしやり直せるなら、全てを守れるそんな人間に────
そう考えた隼也はそのまま意識を無くすと思った時────『────ちゃん!』『────起────てよ、お兄────』そんな途絶え途絶えの声が聞こえてきた。
それがなんなのかわからなかった。だが、何故か自分の周りが段々と明るくなってきている様に感じた。目が開けられないから今がどんな状況かわからないが、なにも出来ない今はただ、身を任せるしか無かった。
『────っぅ、ここ、は?』
俺は酷い頭痛を感じながらも片手で頭を押さえるとまだ、目が冴えない中今の状況が分からず、ただ、横たわっていた"自分"の布団から起き上がる。
(────おかしい。俺はさっき、家族を守れずに大人達に────そうだ、殴られて変な奴が助けにきて………駄目だ、この後が思い出せない────)
隼也が覚えていることをなんとか一人、整理していると────
『お兄ちゃん!!』
『よ、よがったぁ〜〜〜!お兄ちゃんが起きた!!』
『ひっぐ、ひっぐ、もう、目を覚まさないと思ったよ………』
俺の拐われたはずの
『────おっ!やっと目、覚めたか!良かった!良かった!下級のポーションだったが効いてくれたみたいだな』
そんな知らない男の声が聞こえたため、そちらを見ると────
黒髪で短髪、それにかなりの大柄な男が何故か我が家の卓につき夜ご飯を食べていた。
そんな男は俺の様子を見ると笑顔を浮かべる。ただ、俺はこの男など知らないため、家族を守るために声を上げようとした。
その時────
『千堂さん!本当にありがとうございました!!』
『貴方のお陰でお兄ちゃんも僕達も助かりました!!!!』
『おじさん、ありがとう!!!!』
俺の
そんな俺に千堂と呼ばれている男は気付いたのか少し、笑うと話しかけてくる。
『あぁ、そうだよな。あの後はお前さんも気絶してたから覚えてないし、わからないか。よし、じゃあ、あの後の話をしよう』
千堂はそう言い放つとご飯を食べる手を止めて俺に向き合う様に座ると、話し始める。
なんでも、この千堂"さん"という男性は先程、俺の家族が拐われそうになっていた時に助けに来てくれた御仁だという。名を千堂剣夜と言い、よくよく思い返せば確かにこの男性の声は俺が意識を手放す前に聴いた声に似ていた。
そんな千堂さんはあの大人達をあの後すぐに追い返してくれたらしい。らしいというのは………「あぁ、「おはなし」をしたら直ぐに帰ってくれた」と言っていたからだ。
ただ、俺は直ぐに────「"絶対嘘だ"」と思った。
なんかそこだけ話す時は目が泳いでいたし、俺の家族達も「なにを言っているんだ?」みたいな目線を千堂さんに向けていたし。
ただ、俺はそんな無駄なことを聴いたりしない。助けてくれたのは本当のことだし、俺達の命の恩人には変わりはないのだから。
あと、外で意識を手放した俺を家まで運んでくれたのも千堂さんとのことで、俺の家族達が夜ご飯をおもてなしをするというお礼をしていたらしい。なので、俺が起きたら千堂さんがご飯を食べていたらしい。
『────千堂さん。色々と助けて貰った身なのに始め、怪しい人だと思ってすみませんでした!それに、本当に俺達、家族を助けてくれて────ありがとうございます!!』
『『『ありがとうございます!!!!』』』
頭を下げてお礼を伝える俺の後に家族達も後に続く。
ただ、千堂さんは────
『あぁ、いいよ。俺はやりたくてやったわけだし。それに、お前さんらが無事で良かった!』
何かを要求してくるわけでもなく、俺達の身を案じてくれた。その後も俺達を気遣ってか────「あぁーーー、こんな美味しい心温まるご飯を頂いたから。こちらがまた、何か返さなくてはなぁ」なんて呟いていた。
そのことに俺は"この人はお人好しだな"と、良い意味で思った。
その後も千堂さんが腰に吊るしている片手剣が気になり俺が聴いてみると────
『────あぁ、俺は「冒険者」なんだよ』
千堂さんは特に自慢をするわけでもなくそんなことを話す。
その後も色々と聴くと、なんと千堂さんは冒険者ランクも既に「C」ランクに上がっている中級冒険者又はベテランと呼ばれる人だった。
それに、さっき一瞬耳にした「剣鬼」について聞いてみると────「俺の通り名だよ」と恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。
その他にもさっき、俺の家族を拐おうとした大人達の事も教えてくれた。さっきの大人達は────「スキル」第一主義者の狂信者達だという。
あの大人達は「スキル」を持つ子供達を拐い、戦闘員として育てて自分達の駒にしようとしている頭のおかしい連中だという。
その話を聞いた俺は胃が煮えたぎる想いになる。それはそうだ。自分の愛する家族がそんな頭のおかしい連中の手に落ちそうになってたのだから。なので、俺はそんな救ってくれた千堂さんに再度、お礼を伝えた。
ただ、千堂さんは────
『────別に良いさ。それに、さっきも言った様に俺は好きでやってるからな。それよりもこんな状況の中、一人で家族を守るお前さんの方が何倍も凄いと思うぞ。────聞いたぞ?良い兄ちゃんをしてるみたいじゃないか!』
千堂さんはそんなことを言ってくれるが、俺はそんな良い人間では無かった。あの時、直ぐに────諦めてしまったのだから。
なので、俺は────
『────でも、俺は結局何も守れなかった、です。こんな俺なんて………』
そんな俺の話を真剣に聴いていた千堂さんは、頭をガリガリと掻くと。
『悲観するのも、諦めるのもそれはお前さんの自由だ。ただ、少しでも守りたいと想う気持ちが今もあるなら────なら、強くなれよ。そしてお前が家族を、守るんだ』
でも、その話を聞いても俺は────
『無理、ですよ。俺なんて強い「スキル」もないですし、何かに立ち向かえる様な戦える勇気も、無い』
俺は自分の不甲斐なさからか千堂さんの言葉を直ぐに否定すると唇を強く噛み、下を向く。
でも、千堂さんはそんな俺に怒るでも無く────
『────そりゃあそうだ。戦える勇気なんてものは平和だった世界にいた俺達にはあるわけがない。ただ、持ち様によってはなんとか、なる。それに何も誰かを守るのに自分が強くなるだけが、道じゃない』
『────え?他にも、あるのですか?』
そんな俺の質問に千堂さんは頷く。
『あぁ。それは────仲間を作ることだ』
『仲間を、作ること』
俺はそんな言葉を繰り返す様に言葉にする。
『そうだ。仲間を作ることだ。誰だって人には得手、不得手がある。そんな時、周りに自分の仲間がいればその欠点を補える。お前さんが戦えなくても、何かしらをサポートすれば良い』
『俺が、サポート………』
(────俺の「スキル」は戦いよりもサポートよりだ。索敵なんてものもあるし、でも俺にそんなこと────)
隼也はそんなことを一人内心で考えると葛藤していた。
ただ、そんな隼也に千堂が────
『────あぁーーーー、それで、だな。俺は元々5人〜6人で構成した冒険者パーティを作っていてな。サポートってか、俺の補助をしてくれる様な参謀を見つけてたんだよ。いや〜俺含めるパーティメンバーってさ、戦うことしか取り柄が無くてそれを制御してくれたり周りをサポートしてくれる"家族想い"の人間が何処かにいればなぁ〜と、常日頃から思ってて、さ?』
千堂さんはそんなことをわざとらしく身振り手振りこちらをチラチラと見ながら伝えてくる。
ただ、俺はそれでも────
『────やっぱり、俺じゃ────』
「無理ですよ」。そう伝えようとしたが、何故か、それ以上の言葉が出てこない。
そんな中、俺と千堂さんの話を聴いていた家族達が────
『えぇーーー!お兄ちゃん、冒険者になるの!?』
『すごい!カッコいい!!友達に自慢できる!!』
『お兄ちゃん、冒険者になったら私達みたいに悪い大人の人に拐われそうになっている人を、助けてあげてね?』
そんな家族達の言葉を聴いた俺は────
『────!!人攫いも、無くせる?』
そんなことを思ってしまった。勿論、冒険者になって家族達にカッコいい姿を見せて期待に応えたいが。今はそれよりも、今回あったような人攫いが俺が冒険者になることで「無くせるのか?」と、思ってしまった。
そんな俺の気持ちを汲み取ってか千堂さんは一つ頷くと、口を開く。
『あぁ、君が思うように人攫いも無くせるかもしれない。俺達は「ダンジョン攻略」の為に結成したパーティだが、何もそれだけをやるつもりはない。君達の様な不幸になりそうな人達を助けられるかもしれない。今は俺達の敵は、魔物と人間の両方なんだからな』
千堂さんは少し悲しそうに話す。それは変わってしまった世界や人間達の心を思って話しているのだとわかった。
ただ、俺はそんな話を聴き、少しの決心を決めた。
冒険者になるのなんて怖い。けど、自分が頑張ることで自分が護りたいものを護れるかもしれない。なら、ここでただ、燻っているのは時間の無駄だと思った。
なので、俺は────
『千堂さん!!俺を、緑矢隼也をあなた方のパーティに入れさせて下さい!!!』
俺は目の前に座る千堂さんに頭をこれでもかと下げた。
『────俺が進めたことだが、冒険者になることはかなり辛いぞ?苦しいぞ?それに────死ぬかもしれない。それでも君の気持ちは変わらない、か?』
俺はそんなことを問われる。ただ、初めから返事は決まっていた。
『俺の気持ちは、変わりません!!死ぬのは怖いし、辛いのも、苦しいのも、勿論、嫌ですし。今も戦う勇気なんてこれっぽっちも────無いです。でも、でも!俺が冒険者になることで俺の守りたい人達が少しでも救われるなら、俺はやりたい!!』
『────そうか。なら、君の気持ちを尊重しよう。ただ、やるならとことん、俺達についてきてもらうからな?』
千堂さんは人の良さそうな笑みをしているのに、ニヤリと笑うと少し、意地悪な表情も浮かべていた。
でも、俺はそれでも決心が決まっている。
『構いません!!何処であろうとついて行きますよ!弱音を吐くかもしれませんし、直ぐに辞めたくなるかもしれない。でも、俺は今、誓う。俺は、変わるのだと』
『────ふっ、よく言った。それでこそ男だ!!』
千堂さんは俺の言葉を最後まで聴くと、満面な笑みを浮かべると俺の肩を「バンバン」叩いてきた。それはかなり痛かったが、俺も冒険者の一員になれたのだと確信を持てた。
なので、俺はその時、少し生意気なことを嘯く。
『────痛たたたっ、俺は元々、男ですよ。それに────もしかしたら、俺が将来みんなや、千堂さんを守ったりして?』
そんな俺の言葉に一瞬、キョトンとする千堂さんだったが、その意味が分かると────尚、笑みを深めると腹を抱えて笑う。
『────ははははっ!それはいい!お前さんが俺達を守る、か。そうだな、そのぐらいの気持ちを持っていれば大丈夫だろう。じゃあ、アレだな、俺達のどちらかが窮地に陥った時、どちらかが守り通す。────こんなのはどうだ?』
『────良いですね。そんなことにはなって欲しく無いですが、それまでに俺も少しは何かに立ち向かえる様な勇気を持てる様に頑張ります』
『────だな。じゃあ、明日から宜しくな?』
千堂はそう言うと右手を俺に向けて出しきた。なので、俺も真似をする様に自身の右手を出す。
そうすると二人は握手をする体制になった。
『こちらこそ、よろしくお願いします!!』
『────男同士だと、なんか変な気分だな』
『今、それ言いますか………』
俺が千堂さんの言葉に反応すると────俺達はその後、笑い出す。
俺と千堂さんはこんな出会い方をした。
その後も、千堂さんの元々のお仲間さんとも会い一気に意気投合し、俺の、いや────俺達の冒険は始まった。
数々の「ダンジョン」に挑戦し、良い思い出も苦い思い出も沢山作った。その中でも当初の予定通り、おかしくなってしまった大人達から子供達を守れることもできた。
そんな中、凛ちゃんとの出会いや、セリナちゃんとの出会いもあった。その時に千堂さんが暗い表情を浮かべるということがあったが普段通り時は進んで行く。
その中でも、俺達の希望もあった。
それは────フオン君とネロちゃんに出会ったことだ。
妹のネロちゃんはそこまで凄いと思うことはなかった。だが、その兄のフオン君は確実に普通の人間と違かった。千堂さんに「スキル」を一切使わずに圧倒的な強さを見せて勝ってしまったと聴いた時は耳を疑ったが、俺はフオン君を一目見て────「彼は普通では無い」と、感じた。
何が、普通では無いかははっきりと言葉にはできないが………彼の「目」を見た時から彼は何かを為すと思ってしまった。
そんな彼、フオン君が俺の、俺達の希望に見えた。彼は何処か、この世界を人間をどうでも良いと言うような雰囲気、発言をたまにする。でも、その根本はとても優しい青年だった。
──── ──── ──── ──── ──── ──── ──── ────
魔族との戦いの最中、俺は壁に横たわり動けない中、ある言葉を聴いた。
【貴方は自身の命を犠牲にしてでも仲間を守りたいですか?】
そんな女性の様な言葉が聴こえ瞬間、幻聴だと思った。でも、俺の命一つで千堂さんやセリナちゃん達が助かるなら────躊躇いはなかった。
だから俺は────
『────守りたい。この命が尽きてでも、俺は守りたい。神様がいるのなら、本当にいるのなら、今、一度、奇跡を、見せてくれ』
そんなことを無理だと知っていても呟く。
ただ、そんな中────
【────わかりました。貴方の想い尊重しましょう。我が子のその勇ましい姿に祝福を────】
そんな声が今度は確実に聴こえたと思うと────
────承認 対象者の「覚醒」を確認────称号「聖火の守り人」────
そんな声が聴こえたと共にさっきまでの身体の節々の痛みが嘘だったかのように身体が軽くなる。それに勝手にステータスが自分の目前に表示される。ただ、そのステータスには変化があり。
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緑矢 隼也(24歳 男)
L v.:50
種族:人間
職業:
体力:650
魔力:1000500 +(1000000)
スタミナ:500
筋力:300
防御力:350
魔防御力:20
素早さ:1200
運:???
加護:祭炎の加護【祭炎の神からの祝福 一時的に魔力が1000000上昇 一度限り】 NEW
スキル:索敵lv.8 蛇足lv.7 ナイフ術 lv.3 罠感知 鑑定
ユニークスキル: 聖火矢創生(一度限り) NEW 聖火矢尻生成(一度限り) NEW
エクストラスキル: 「
属性: 無 聖火 NEW
称号「聖火の守り人」【その命を賭してでも仲間を救おうとした姿に祭炎が感銘を受け、人々の守り人となるために贈った称号】 NEW
---------------------------------------------------------------
────こんな風にかなり変わっていた。ただ、俺はこの力で守れればそれでよかった。
なので、俺は──── ──── ──── ──── ──── ──── ──── ──── ──── ──── ────
────自分の命を使い、未来に懸けた。
────あぁ、わかる。今、自身の命の灯火が瞬く間に消えていくのが、わかる。
死ぬのは怖いさ。そりゃあ、怖い。知り合いとまた会えなくなる。家族とも勿論、会えなくなる。
でも、コレでよかった。コレで、良かったんだ。なにが最善だったのかわからない。でも、あの直面で俺の「スキル」が覚醒したのにはなにか意味があったんだ。
俺は勇気を出して立ち向かえたかな。誰かの役に立てたかな。俺はみんなを守ることができたかな。俺はアンタの様に強くなれたかな────なぁ、剣夜。俺はこの旅路をとても良いものだとしっかりと思えたよ。
アンタは最後まで俺の────
そんなアンタに少しでも恩が返せたなら、どれだけ良かっただろう────
あぁ、この、愚かな世界に祝福を────
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