第87話 千堂剣夜という男
(────そうだ。俺が護る。他の誰でもない、俺が護るんだ!奴は俺が以前戦った時とは比べものにならない程強いだろう。だが、だからどうした!それでも護りきると決めただろ!俺とて前の俺とは違うのだから。矛はない、けど────最強の盾ならあるの、だから────!!)
千堂はそう思うと目を瞑りながらも想像する。
(────それに俺は、何か勘違いしていた。「スキル」を使うということは自分の心を形にするという事だったんだ。謎の声が聞こえて俺の「スキル」が覚醒して漸く気付かされた。そういえばフオン君にも「スキル」が上手く使えていないと、言われたっけ。彼は知っていたのかな)
千堂は内心、「やはり、フオン君には勝てないな」と苦笑いを浮かべる。すると自分が思い描く「スキル」の構築を始める。
イメージはあの名高い最硬の守り手イージスの盾。物質は「ダンジョン」そのもの。呼吸を止め、全魔力を右腕に溜める。
────
想像するのは全てを守り切る白亜の壁。思い描くのは何もかもを包み込む護りの要。
────
千堂がそう思い描くと、千堂が目の前に掲げる右手に魔力が集まっていく。「スキル」の使い方はわかる。あの脳に直接届いた謎の声のおかげか全て把握済みだ。
(────俺はただ、護り切ればそれで良い。後はセリナちゃん達がやってくれるはずだ。ここまできて人任せなのは情けないが────せめて、アイツの魔力を少しでも減らすから、だから────!!)
セリナの身体の光が先程よりも強くなっている事を片目を開き確認するとそう思う。自分が護り切れば良い、と。
それに、クリプットがいくら強いと言っても、不死身だと言っても。魔力までは無尽蔵な訳がない。
なので────
「────「これは 我等を護りたもう要の砦 人々を救う護ると決めた時、既に心の内にあり これは名の無い盾 されど全てを護る無垢な盾 顕現せよ────」
千堂がそう謳うように詠唱をする。すると「剣生成」の時と似たように小さな光の玉が目の前にできる。ただ、それは一つきりでとても頼りなかった。
クリプットも千堂を消し去る魔法が完成したのか今回は"詠唱破棄"を使わずに詠唱を始める。先程から両手に溜めていた禍々しくもドス黒い血の色の魔力を千堂に向けながら。
「────「我が祖、始祖だけに許された禁忌の外法 忘れ去られた
クリプットの詠唱が終わると魔力が形を成し、緋い幾何学模様の魔法陣の様な物がクリプットの頭上にできる。
その魔法陣はクリプットが詠唱をする度に回転していき、魔力の光が増していく。
それを確認したクリプットは口角を片方だけ吊り上げると────
「────
詠唱を終え。魔法を完成させたクリプットは未だに詠唱を続けている千堂目掛けて放つ。
クリプットが完成させた魔法は魔法陣から光線の様に千堂目掛けて放たれた。その光線は凄まじい速さで熱風と共に千堂の元に一直線で向かう。光線が通った「ダンジョン」の床は高熱で溶かされた様な鉄の様に溶解していた。
「ダンジョン」のオブジェクトは簡単に破壊を出来ないと言わしめる代物だったが、ここにも────フオンやネロ意外にも壊せる者が存在した。
ただ、それはそれ程までに威力を溜め込んでいる魔法だという事に他なかった。
それを確認した千堂は少し、冷や汗を流したが────
「そのお前の考えものとも防ぎ切って、護り切ってやる!!!!! ────「
千堂はクリプットに対抗する様に最後の言葉を紡ぐ。
すると────
頼りなく小さかった光の玉は徐々に徐々に大きく広がっていく。それは千堂達全ての人々を護る砦のように。
光が止むとそこには大きな砦が出現する。外装は真っ白な白亜の外装で何にも染まっていないという様に堂々とそそり立つ大きな砦。
そんな白亜の砦を出現させた千堂はその砦の維持に神経を使いながらもクリプットの魔法を向かい打つ。
────一白置き、二つの最強の矛と盾がぶつかる。
その時、一瞬静寂が包む。
ただ、その静寂はほんの一瞬で────
キイィィィィィィィィィィイイイイン!!
そんな耳障りな音が空間内に響き渡る。
それと共に空間を揺らす振動。千堂が立っている事がやっとの凄まじい熱風。それらが発生した。
ただ、千堂が出現させた砦はクリプットの破壊の光線を────止めた。
「────ぐっ!────ぬっうオオオオオォオオオォォッッ!!!」
だが、それでも押される千堂。
目前に突き出した魔力を纏わせた右手がクリプットの放つ破壊の光線のせいで押し戻される。身体を仰け反りながらもなんとか耐えているがクリプットの放つその熱量は威力は途方もなく、踏ん張るのが精一杯だった。
でも、こんなところで負けてなどいられない千堂。
(────熱い、苦しい。だから、だから………なんだ!こんなもの超えてこそ俺は、俺はァァッッッ────!!!)
そう内心で自分自身に喝を入れる千堂はフリーにしていた左手を持ち上げると自分の右手を支える様にする。そのまま魔力を最大に上げる。
それと共に────
「────これで、終いだ、馬鹿野郎!!────「
千堂はそう叫ぶ。それと共になんとクリプットが放つ破壊の光線を千堂が出現させている砦が徐々に飲み込んでいく。
「────なっあぁぁァァ!!?」
その光景に流石のクリプットも驚愕の表情を浮かべると絶叫をする。
そのクリプットの表情を見た千堂は脂汗を垂らしながらも口角を少し上げる。
「────はっ。誰が手前と力比べなんかすると言ったよ?俺はそんな無駄な賭けにはでねえ!それに、俺はお前がこの攻撃に集中をしているのを予想していた。だから────それを使わせて、貰うぜ!!」
「ふざけるな!正々堂々と戦え!!人間ンンン!!?」
クリプットはそう叫びながらも何も出来ないのか途方に暮れている。
そんなクリプットに取り合う事なく千堂は最後の言葉を紡ぐ。
「やなこった!!手前みたいな
千堂はそう言うと容赦無くもクリプットの魔法を反転させる。すると放って来たクリプットへと逆に破壊の光線が凄まじい勢いで返っていく。
「────き、貴様アァァァァァァァッッ!!?クソガッ!!!────「我を守れ防壁よ 「
クリプットは逃げられないと悟ったのか自身に返ってくる破壊の光線を防ぐ為に防御魔法を唱える。ただ、そんな考え無しに発動した即興の魔法で耐える事など出来るはずがなく────
パリンっ!
そんなガラスが割れた様な虚しい音だけが響き渡る。
その破壊の光線はクリプットの防壁を軽々く破壊をして突破する。するとその暴力的なまでの光線はクリプットに襲いかかる。
「────ガッァァァッ!!?アァ、グゾウッ!!人間────ンンンンッ!!?」
呆気なくも直撃したクリプットはそんな怨嗟の言葉を千堂に吐きながら破壊の光線に飲み込まれる。
その光景を見ていた千堂は、一言。
「────これが、"護る"と誓った人間の────意地だ!!!」
その場で片膝を突きながらも今も尚、破壊の光線に包まれているクリプットに言葉を投げ掛ける。
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千堂 剣夜(49歳 男)
L v.:89
種族:人間
職業: 剣鬼→盾神(覚醒) NEW
体力:3500 +(1000)
魔力:3000 +(1000)
スタミナ:2500 +(1000)
筋力:500 −(1500)
防御力:25000 +(24000)
魔防御力:500
素早さ:1000
運:40
加護:盾神の加護【盾の神の祝福 常時、体力・スタミナ・魔力を+1000 防御力を+24000 筋力を−1500(デメリット)】
スキル:体術 lv.8 剣術 lv.9 身体能力MAX 鑑定 鬼神化 闘気 盾術 lv.12 NEW 頑強 NEW 覚醒者 NEW
ユニークスキル:「剣生成」→「
エクストラスキル: 「
属性: 無
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