第77話 星霊同化
◆
セリナとクリプットの両者が戦い初めてから20分程経っていた。
ただ、勝敗は決まっていなかった。戦う程にセリナが劣勢になっている。クリプットが話していた通り、今はセリナに疲労の色が濃く見えてきているまである。それでもセリナは止まらない。
セリナとて宣言通りクリプットを一度細切れにしていた。だが、それでもクリプットは倒せなかった。
そんなクリプットはセリナに既に勝利を確信しているように笑みを向けていた。
「女、私が先程言った通り、お前では私を倒せない。と、いうか私を倒せる存在などこの世に存在しないのだよ。「ノクナレア」でもそうだった。あっちの「聖女」だと言う女の最大の魔法を直撃したが私は生きていた。恐らくだが、我等が魔王様でも私は倒せないのでは?と自負しているよ。そんな最強の存在である私をお前が倒せる筈が無いのだよ!」
「…………」
余裕を見せているクリプットは先程から聞いてもいないのにペラペラとセリナに向けて色々と話していた。ただ、セリナはクリプットの話など聞いておらずある事を考えていた。
(────さっき
何故か「異世界」の話を考えていたと思ったセリナだったがいきなりフオンの話題となり、自分で考えといて何もしていないフオンをディスっていた。ただ、そんな中、セリナは「今の戦いはまだ終わっていないのだから」と再度気持ちを切り替える。
そんなセリナにもクリプットを倒せるある秘策があるようで────
「────そうね。今の私ではあなたに勝てないわね。だから少し早いかもだけど、私の奥の手を使わせて頂くわよ」
「奥の手?まぁ、使って良いさ。そんなもので私を倒せるわけは無いと思うがね」
「────言ってなさい」
セリナがクリプットにそう返事を返すと念の為クリプットから5メートルほど離れた場所までセリナは一瞬で移動する。そんなセリナを余裕な表情で高みの見物を決めているクリプット。
そんな中、セリナが両眼を瞑ったと思うと────
「────「汝 契約した星の精霊よ その姿を見せると共に 私と共にあらんて────星の瞬きの後のようにその姿を私に見せて。その名は────「
セリナが詠唱を終えるとセリナを包む様に光が瞬く。空気中にも星々が散らばる様な幻想的な光景が映る。
そんな中、漸く光が収まると────セリナの顔の真横に10センチほどのフワフワとした黄色い洋服を着た可愛らしい人型の精霊がふよふよと飛んでいた。
その精霊にセリナは声を掛ける。
「ルーナ、久しぶり。元気にしていたかしら?」
『んん〜?よく寝た。セリナも久しぶり。漸く私を呼んでくれたのね。嬉しいわ』
ルーナとセリナから呼ばれた精霊は口に手を当てると可愛く欠伸をした後セリナに挨拶を返す。
「ごめんなさい。ルーナを呼ぶと魔力の減少が早いのよ。いくら私が他の人よりも魔力が多いと言っても、ねぇ?」
『私に言われてもね〜』
そんな二人でほんわかと話しているとクリプットが話しかけてくる。
「それが、奥の手────という奴か?見た感じ精霊に見えるが……精霊を呼んだところで私に勝てるとでも?」
「────まぁ、これだけじゃあなたには勝てないわね。ただ────「
意地悪な笑みを浮かべたセリナがクリプットにそう伝える。普段通りなら動じないクリプットだが────
「そ、それは無理だ!精霊と契約する者なら人間でも魔族でも見た事がある。ただ、その中でただ一人として「
完全に動揺してしまっているクリプットは早口になりながら自分が知っている「
「なら、見せてあげるわよ。私とルーナの「
「させるか!何が起きるか分からない事を益々見逃せるものか!!」
止めに入るクリプット。ただ、クリプットが止めるのは少し遅かった様で。
既にセリナとルーナは手を取り合う様にその大小の手を握り合うと声を合わせて歌う様に詠唱を始めた。
「────『その星は希望の兆し 私達は二人で一つ どちらが欠けようと輝き続ける星空へ 必ず星海を探すでしょう だからその先へ────「
セリナとルーナの声が重なる様に謳う様な詠唱が終わり「
その光景を見ていた体調が幾ばくか戻った千堂もセリナ達の方を見ていた。
「────ッ!!?」
一人、クリプットだけはその光の奔流が目にくるのか声にならない呻き声を上げながらセリナを睨んでいる。
そんな中、光の奔流が徐々に徐々にやんでいくとそこにはルーナの姿はなく。セリナが一人やけに輝く
(────これは、失敗か?私も「
内心でそんな事を思ったクリプットはセリナが「
「────シッィ!!」
未防備なセリナの脳天目掛けて自前のロッドを叩き付ける。だが、そこには既にセリナの姿は無かった。ただ、よく見ると自分がいる位置から3メートル程の位置にぽつんとセリナは立っていた。
なので────
「私を、舐めるなぁ!!────
クリプットがそう叫ぶと掲げたロッドから血の塊が出たと思うといくつもの血の水滴に別れ、その水滴の先端が瞬時に刃の形になり、セリナの元に殺到する。
ただ、セリナは一言────
「────「
そう呟くだけでその場から消える。
その光景は星が瞬く間に消える瞬間に似ていた。
ただ、クリプットが出した魔法は不発となり「ダンジョン」の床に当たるだけで終わる。そんな中、完全にセリナを見失ってしまう。
「私から逃げたつもりか!臆病者め!!逃げるばかりで私には勝てないでは無いか!!」
クリプットは業を煮やしてかセリナを挑発する。ただ、クリプットは気付いていない。既に叫んでいるクリプットの背後にセリナがいる事を。
「────
セリナはそう小声で呟くと持っている
その瞬間セリナは────「
その撤退する意味は、あった。
それは────
「────ん?何か、当たったか?これはなん────」
クリプットは何かに気付き、口にしようとしたが、目の前に現れた小さな"黒い穴"に一瞬で吸い込まれてしまい最後まで言えなかった。というか、クリプットの存在自体この空間からなくなっていた。
ただ、これはセリナの様にクリプットが高速で動いている訳では無い。
文字通りセリナに"消された"のだ。
セリナが使った
セリナは戦いながら考えた。死なないなら跡形も無く消してしまえば良いと。誰でも考えられる簡単な話だ。
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