第65話 集団ダンジョン探索③




 「C」ランク昇級試験の参加者達は2人〜10人までの仮のパーティを作って昇級試験をやっていた。試験の内容は「埼玉ダンジョン内」に隠された合格と書かれた"石"を5個探すという内容だった。


 フオンも他の皆と同じ様にその"石"を探している最中だ。


「──フオン氏。早く拙者達も探さねばですな。まぁ我々に掛かれば些事な事──ですな?」


 そんな変な話し方でフオンに話しかけてくるのは──一緒のパーティメンバーになった服部貞雄はっとりさだおだ。外見は冒険者というか──完全に忍び装束で、簡単に説明するなら紺色の忍者服の事だ。ただ、ポッコリと出た大きなお腹が伝統的な忍び装束を台無しにしていたが。


 ──なんと、フオンは結局昇級試験のパーティメンバーをハブられてしまい。残り物の服部としかパーティを組めなかったのでパーティメンバーはという規定から仕方なく──組む事になったのだ。


「──はぁ」


 その事にため息を吐くフオンは仕方なく、服部を伴いネロとを保ちながら昇級試験を受けるのだった。


 ただ、周りから見たらフオンと服部の二人は異様な存在に思えた。一人は長身だが、緑色のローブのせいで顔が見えない"不審者"。もう一人は"おデブのなんちゃって忍者"と、完全に異質な存在だった。


 まぁ、そんな二人だからこそ誰もパーティを組みたく無かった訳だが。



 ◇閑話休題時間は少し遡る



「──ここに今、残った人々で「C」ランクへの昇級試験を始める。早々に失格になった物には悪いが、これもだ。だから残った諸君等も彼等の分、一生懸命に取り組む様に!今から説明するからその通り進めてくれ。まず────」



 試験官の諏訪部から聞いた話はこうだった。


 

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       昇級試験の条件


・パーティメンバーは原則、2人〜10人で受ける事。


・「埼玉ダンジョン内」の1階〜10階までに隠されている合格と書かれている"石"を各1人ずつ5個集める事。


・時間は今日の夕方6時まで。


・他のパーティの探した"石"を故意に盗むのはルール違反として即刻失格。


・「埼玉ダンジョン」に入って後はパーティメンバーを変えてはいけない。


・それ以上に時間をかける者や亡くなった者は失格と判断する。


・何か問題が起きない様に「炎舞陵生えんぶりょうせい」のメンバーが見回りをしている、とのこと。


 

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「────となる。くれぐれも自分の命を大切にしてルール違反などしない様に。我々が見回っている為、見つけ次第失格とする。何か質問があるなら今、受け付ける。何も無いなら時間も惜しい為直ぐに始める」


 諏訪部の言葉を聞いた人々は特に何も無いのか無言で諏訪部の話を聞き、次の言葉を待っていた。そんな皆を見た諏訪部は少し笑みを溢すと──


「──誰も何も無い様だな。では、仮のパーティメンバーが揃い次第──初め!」


 諏訪部の号令を受けた昇級試験の参加者達はパーティメンバーを決める為に動き出す。ただ、幾つかのパーティは初めから誰と回るか決まっていたのか直ぐに「埼玉ダンジョン内」に入っていくパーティが続出した。


 その中にはネロが入った鳴金のパーティもあった。フオンも早く見つけなくてはいけない為、早速行動を起こそうとした。──したが気付いたら自分の周りには誰もいなくなっていた事に今、気付いた。


「………誰も、残っていないではないか」


 フオンには珍しく焦った様な表情を一瞬浮かべていた。そんな時、誰かが近付いてくる様な気配がしたのでもしかしたらパーティメンバーになり得る人物かと思い背後を振り向くと──


「──君が、フオン君か?」


 そこには試験官の諏訪部とグラマラスな体型のおっとりとした雰囲気を出す黒髪のストレートが似合う妙齢の女性が一人立っており、何故かフオンの名前を確認してきた。


(──試験官が何故、俺の名を?別に名簿などもない筈だから名前など分からない筈なのだが──まぁ、今は検索をするよりも試験官の問いに答えるか)


 考えは纏まってはいないがフオンは顔を諏訪部に向け、口を開く。


「──あぁ、俺の名はフオンで合っている。が、あんたと一度、俺は会った事があるか?俺の名前を知ってる様だが……それに今はのに、よくわかったな?」

「いや、俺達が話すのは今回が初めてだろう。ただ、から君達──フオン君とネロ君の外見を聞き、君達2人に接触する様に頼まれていた。──ネロ君は先に他のパーティと試験に行ってしまったから、君に話しかけたのさ。正直、君をフオン君と聞いたのは、俺の当てずっぽうさ」


 諏訪部は苦笑いを浮かべるとかなりフラットな物言いで伝えて来た。初め、厳しい人かと思っていたが勘違いだった様だ。


 なので、フオンも少し表情を和らげると相槌を打つ。


「──そうか。ただ、そのについては今は俺からは何も聞かないさ。"まだ"話せない訳でもあるのだろ?強いて言うなら──「」の異変について、とかな?」

「──これは、驚いた。本当に驚いた。君は何処まで知っているんだ?」


 諏訪部と妙齢の女性は本当に驚いた様な表情を浮かべた。妙齢の女性は未だに何も発しないが諏訪部がフオンにそう聞いて来た。聞かれたフオンは──


「──俺とて何も知らないさ。知らないからこそ知ろうとした、という事もあるが。あんた──諏訪部さんが話す言葉に、それにという話を仄めかす内容を聞いて何か辻褄が会うと思ってな。そこから掛け合わせたのが、俺の考えだ」


 フオンの話を聞いて諏訪部はお手上げと言う様に両手を上にあげると降参の意を告げる様に口を開く。


「──はぁ、分かった。俺の負けだ。君は他の冒険者と何か違う様だ。それに異様に感が鋭い、俺では些か部が悪い。だが、この話は先程フオン君が言った通り、話すときになれば俺から君に話そう。──それで、良いか?」

「構わない。それに、俺もパーティメンバーを見つけなくてはいけないからな。今、長々と話されるのは困る。これ以上時間を浪費するのは得策ではないからな」


 フオンはそう言うと肩を窄めていた。


「──ただ、フオン君以外の他の昇級試験の参加者達は既に全員、その──「埼玉ダンジョン」に入っていってしまったのだが?」

「………マジか」


 諏訪部の話を聞いたフオンは、今回ばかりは本当に絶望した様な表情を浮かべると天を仰いでしまった。


「──もし、あれでしたら私があなた様のパーティメンバーになりますよ?」


 そんな中、今まで一言も話さなかった妙齢の女性がフオンに話しかけて来た。その事にフオンは普段通りの表情に戻すとその女性に逆に問い返した。


「それはありがたい申し出だが、あんたは諏訪部さんのパーティメンバー──即ち、試験官だろ?そのあんたが俺とパーティメンバーになったら、駄目だろ」


 ズルは駄目だと言う様にフオンは否定した。ただ、フオンと妙齢の女性の話を聞いていた諏訪部が話に入ってくる。


「──いや、それがいけるんだ。他の昇級試験の参加者達には言えないがから君達兄妹が困難な目に合っていたら優遇して欲しいと。だからうちの真里奈とパーティメンバーになっても問題は無い。──勿論、他の参加者達に何かを言われたら──「メンバーがいなかったからこちらから提案をした」と伝えるつもりだ。だから、安心してくれ」

「──だと、してもな」


 それでも難色を見せるフオン。そんなフオンに妙齢の女性も話しかける。


「そうですよ?リーダーの言う通り、私で宜しければパーティメンバーにでも。──申し遅れました。私の名前は櫻井真里奈さくらいまりなと申します。一つ言わせて頂けるなら、がパーティメンバーを組めなかったのはその、緑色のローブが原因なのでは?──一度、フードを外してみては如何ですか?」

「──やはり、このフードが悪いのか」


 フオンは今も目深に被っているフードを手で触ると妙齢の女性──櫻井に言われた通り一旦フードを外そうとした。


 ──その時──


「──ちょーーと、待った!拙者を除け者にして貰っては困るでござる!!」


 そんな声が──フオンが背にしているから聞こえてくるのだった。その事にフオンは一瞬でその場を離れ、諏訪部と櫻井は驚きの表情を浮かべながら、先程までフオンがいたに目をやるのだった。


 






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