第59話 仮冒険者②
「──まぁ、蔵さんが何をこれから伝えてくるかはなんとなくは分かるが、聞こう。ついでにクエスト達成の確認もしてくれ」
「僕のもお願いね〜!」
そう言うとフオンとネロの二人は受付に立つ蔵に自分達の冒険カードを手渡した。
「はいよ!探索お疲れ様!まずは冒険者カードを受け取ってと……こうしてこの水晶に翳して──おぉ!これまたフオン君達は今日も魔物を狩って来たなぁ!」
蔵は二人から受け取った冒険者カードを目の前に置いてある水晶に翳すと蔵の目の前に半透明なウインドウの様な物が浮かぶ。そのウインドウに記載されている情報を見た蔵はそんな事を言い、二人を茶化していた。
蔵が今二人の冒険者カードを翳した水晶は通称、情報読み取りの水晶と呼ばれ。こうやって水晶に翳すと冒険者カードの情報が半透明なウインドウとして移され閲覧出来るのだ。
勿論、この情報読み取りの水晶は冒険者協会お抱えの「魔道具」だ。
フオン達の冒険者カードで閲覧出来た内容はこうなる──
---------------------------------------------------------------
冒険者カード情報
◇受けているクエスト
・「ダンジョン探索」(クリア 常時)
・「ダンジョン」周りの魔物の間引き(クリア 常時)
・薬草採集100束(クリア)
◇倒した魔物
・
・ホブゴブリン×59
・ワーウルフ×156
・ベネヴェントスネーク×47
・
・
・
・ソルジャーアント×35
---------------------------------------------------------------
──こんな風に記載されている。クエストの「常時」や「クリア」とは──「常時」はずっと開催されているクエストで。
「クリア」はその名の通りクエストをクリアした事だ。
倒した魔物は他にも沢山といるが、今は割愛。因みにソルジャーアントとは先程「ダンジョン」から戻る際に襲われていた冒険者達を助けるために何気なくフオンが倒したアリの魔物の事だ。
──あと補足だが、冒険者カードも一応「魔道具」となる。中に内蔵されている小型のチップで様々な情報を取り入れてくれる優れものだと言う。
「──それはいつもの事だろ。それよりも、俺達を探していた理由を聞かせてくれ」
蔵に取り合わないフオンは淡々とそう伝える。ただ、隣にいるネロは──
「もう!お兄ちゃんは急ぎ過ぎ!……ごめんね蔵さん?お兄ちゃんはせっかちだから」
「………俺はせっかちなどではない。ただ早く済ませたいだけだ」
「それがせっかちだって言うんだよ!」
いきなりフオンとネロの二人はいがみあってしまった。ただ、それはいつもの事で──
「あははっ!君達兄妹は本当に仲が良いね!」
と、笑いながら二人に伝えるのだった。
そんな事を言われた二人は──
「誰が仲良しだ」「僕達は仲が良いからね!」
と、正反対の事を言うのだった。それがまた蔵の笑いのツボに拍車をかけたのか受付の台に左手をつくと「ククッ!」と笑いを堪えていた。
そんな蔵の姿を見たフオンは「………チッ」と舌打ちをし、ネロは「もう!こんなに仲良しなのにお兄ちゃんはツンデレさんなんだから!」とフオンの腕に抱きついていた。
周りでフオン達の会話の様子を見ていた人々は──皆いつもの事だと笑っていた。ただ、ネロがフオンに抱きついた事によりフオンの信者の女性達から『私達のフオン様にーー!!』とカナギリ声を上げ。ネロに抱きつかれているフオンにはネロ親衛隊の男性から嫉妬の目や殺意の目を向けられていた。
ただ、男性人はフオンに何も言える事なくただ、観ている事しか出来ないが。
◇
「──で?もう、茶番は良いから早く教えてくれ」
フオンはそんな事を蔵に伝える。問われた蔵はさっきのおふざけは何処にやら、真剣な顔を作るとフオンとネロにある事を伝える。
「──あぁ。まずはクエスト100個到達おめでとう!と──言わせてくれ。それで、君達を探していた理由だけど、単刀直入に言おう。上からフオン君とネロ君への「C」ランクの昇級のお話が来ました!!」
蔵からフオンとネロにそんな言葉を贈られた。そんな中、フオンとネロが反応するよりも早く──
『よっしゃーーー!!予想通りフオン君とネロちゃんの昇級の話が来た!』
『冒険者に登録して経った5日で「C」ランクへの昇級の話とか流石過ぎるわ』
『何はともかく二人共おめでとう!!』
まだフオンとネロが「C」ランクに昇級をした訳では無いのにも関わらず周りで聞いていた冒険者や受付嬢からフオン達にそんなお祝いの言葉の数々が贈られた。
そんな皆の反応にフオンとネロは悪い気はしなかった。寧ろ少し嬉しいまであった。なんせ自分の事じゃ無いのに自分の事のように喜んでくれているのだから。ただ、この皆の反応で分かる通り、フオンとネロの二人は経った5日で「C」ランクの昇級の話が来ると共に信頼や信用を勝ち取っていた。
「──まぁ、予想はしていたからなんとも思わんが。──その「C」ランクの昇級の日程とかは決まっているのか?」
皆が騒いでいる中、普段通りにツンケンドン又はクールに徹しているフオンはいつも通り蔵に話しかける。ただ、少しソワソワとしている事からフオンが嬉しがっているのは見て分かる。
そんな子供の様なフオンの様子を見てネロ含める女性陣は声には出さないが皆一様に──『可愛い』と感じていた。
そんな中、聞かれた蔵は──
「あぁ、決まっているよ。2日後に
「──ほう?「埼玉ダンジョン」か……まぁ良い。それよりも早いな。まぁ、早い事に越したことはないが」
蔵から「集団ダンジョン探索」の日程を聞いたフオンは初め驚いていたがそれも一瞬で。なる早に出来るなら問題無いと思っている。
ただ、「埼玉ダンジョン」とフオンが口にする時に何か含みがある様な言葉で呟いていたが、フオンもそれにはなんとなくは分かっているので蔵に質問をする事は無かった。その後は今回の「ダンジョン探索」の報酬の話やこの頃何かおかしな事は無いかなど二人は話し合っていた。
◇
そんな中、二人の話が一段落着いたと思った時──
「──よし!「集団ダンジョン探索」の日程も決まったし、話し合いももう終わったなら今から「ふみゃ」に行って美味しいデザートでも食べに行こう!そうしよう!!」
フオンと蔵の話を静かに聞いていたネロは先程からやけに無言だと思っていたら……見計った様にいきなりそんな事を大声で言うと宣言した。
そんなネロに呆れながらもフオンは声をかける。
「ネロ。いきなり隣で大声をあげるな。それに、そこは値段も高いし──女子供ばかりいて居心地が悪いから、却下だ」
フオンは絶対に行きたくありませんと言う様に顔に苦い表情を浮かべるとにべもなくネロの提案を却下した。
ただ、ネロは──
「いいや!お兄ちゃんのその考えを逆に、却下だね!!」
と、フオンに指を刺しながら堂々と言ってのけるのだった。
因みにネロが口にした「ふみゃ」と言うのはここ「東京支部」協会の近くにある「ふ〜みや〜」と言う人気の「ネコカフェ」だ。ネロは親しみを込めて「ふみゃ」と呼んでいる。
何故か、それが伝播して今では他の人々も男女問わず「ふみゃ」と呼び。その名が浸透しているが。この「ふ〜みや〜」は「東京支部」で冒険者登録をした際にスイーツ巡りと銘打ってフオンがネロにデートをさせられたお店でもあったりする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます