第49話 冒険者登録③






「────何?"副協会長"だと?」

「うわっ!メッチャお偉いさんだった!」


 流石にその受付の男、蔵の言葉にフオンとネロは驚いていた。


 二人が驚くのも当たり前のことだ。


 トップの"協会長"もそうだが、2番目に偉い"副協会長"となど初心者冒険者が簡単に話せる事も、ましてや出会うはずもないのだ。

 それもただの「アドバイザー」などという役職についていることなど普通はおかしい事だ。だが今目の前で起きている事は現実だ。


 ただ、そんな驚いているフオン達に苦笑いを向けている蔵。


「まあ、まぁ。俺は今言った様に君達から見ればお偉いさんかもしれないけど、受付も兼任してるんだよ。だから畏まらなくて良いからね?何故か他の冒険者は俺の所に寄ってこないけどね」


 蔵はそう言うと「なんでかなぁ?この頭が駄目なのか?」と自分のアフロを撫でている。


 ただ、フオンはそんな蔵の姿を見て「そりゃあ近寄らないわな」と思っていた。


(────誰が好き好んで協会のトップツーと話したがる。俺達は知らなかったからまだしも………)


 そんな事を声には出さないが内心思っていた。


 フオンの隣で聞いていたネロも内心ではフオンと似た様な事を思っているのか苦笑いを浮かべていた。


 フオンとネロが思っている様に、他の冒険者も蔵がいる受付には近寄りがたいのか誰も来ないのだ、その事を知らない蔵は困惑しているが。


「まぁ、蔵さん?が副協会長だからじゃないかな?誰でもお偉いさんには萎縮しちゃうからね」


 あまり、人に物怖じしないネロは普段通りの口調で蔵に話しかけた。


 それも「蔵さん」などと言うフランクさだ。


 その事にフオンは「流石にフランク過ぎるのは怒るのでは?」と思っていたが────


「そうかぁ〜萎縮してるのかぁ〜。でもネロ君の様にフランクに話しかけてくれた方が俺は嬉しいな!俺の周りは堅苦しい人しかいないから、どうも息苦しくてね」


 怒るどころかネロの対応に喜んでいた。


 「蔵さん」呼びも気にしてない様で特に何も言ってこなかった。


 そんな蔵の態度によく思ったのかネロも言われた通りいつも通りフランクに話す事にした。


「なら、僕達が蔵さんとフランクに話すよ。────それで良いよね、お兄ちゃん?」

「────はぁ、勝手にしてくれ、俺はどちらでも構わん。畏るのも畏られるのもどうでも良いが、アンタがそう言うなら俺は尊重するさ」


 フオンがそう言うと蔵は笑顔を見せてくれた。


「あぁ、そうしてくれ!俺も君達の事はフオン君、ネロ君と呼ばせて貰うよ。これからもどうか宜しくね!」

「こちらこそ」

「蔵さん宜しく!」


 三人はそう話を纏めるのだった。


 ただ、その事に普段蔵の事に萎縮をしている他の受付嬢や冒険者達は驚いた顔をしていた。



 ◇閑話休題それはさておき


 

 あの後はフオン達も一応自己紹介をした、大事な事は伏せる感じだったが特に蔵は疑問に思う事なくフオン達を受け入れた。


 その後は冒険者カードが発行されたので受け取った後一応、冒険者ランクについてや初心者冒険者が早く冒険者ランクを上げる方法、クエストの受付方法などなどを聞いていた。


 因みに冒険者ランクは魔物のランクや「ダンジョン」の適正ランクに似ていてこうなる。


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       冒険者ランク


・「F」ランク: 冒険者登録したら必ずなるランク帯【一般的に仮冒険者と言われる】


・「E」ランク: クエストを何でも良いから10個達成できれば自動的にランクが上がる。【初心者冒険者と呼ばれる】


・「D」ランク: 「E」ランクよりも少し難易度が上がり、クエストを50個達成の上、人々からの好感度・貢献度を貯める事。

【初心者冒険者と中級者冒険者の中間と言われる中堅者冒険者と呼ばれる】

※好感度・貢献度の基準値は協会側が決め、この冒険者なら大丈夫と感じたらクエストを50個達成した人からランクが上がる。


・「C」ランク: クエストを100個達成の上、人々からの好感度・貢献度を貯める事。

【中級者冒険者と呼ばれる】

※好感度・貢献度の基準値は協会側が決め、この冒険者なら大丈夫と感じたらクエストを100個達成した上に「集団ダンジョン探索」を行った人からランクが上がる。

※「集団ダンジョン探索」とは名前の通り、複数の「D」ランクの冒険者達が集まり協会が出したお題を達成する事。

※このランク帯はどの冒険者でも通る最難関の道、ここで大体の冒険者が上のランクに上がれなく挫折して下のランク帯で燻っている人が多い。

※ランクが簡単に上がらないのは「C」ランククラスになると魔物も強さの難易度が上がり抗える強さを持たないと死人が簡単に出るからだ。


・「B」ランク: 「C」ランクよりも難易度がぐんと上がり、クエストを500個達成するとランクが上がる。

【ここから上級冒険者と呼ばられる】

※好感度・貢献度を上げない分簡単かと思われるが「C」ランクにもなれば一つのクエストでも難易度は高いものばかりなのでかなりランクを上げるには苦戦する。


・「A」ランク: クエストを1000個達成の上協会内の教官役「A」ランクと模擬戦を行った上認めて貰えればランクが上がる。

【最上級冒険者と呼ばられる】


・「S〜SSS」ランク: 「A」ランクになった上に何か偉業を達成するとランクが上がる。

※世界には現在「S」ランクが50人、「SS」ランクが5人しか存在しない、未だに「SSS」ランクは存在しないと言う。

【S〜SSSランク帯の冒険者達は総えて極級冒険者と呼ばれる】

※「S」ランク以上の冒険者達は国で管理できない程の存在で自由にできると言う(自由と言っても違反行為は駄目だが)



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「さっき話した様に冒険者のランクでも色々あってフオン君とネロ君は「仮冒険者」となるね」


 そんな話を蔵が話し終わるとフオンはある事を聞いてみる事にした。


「でも、蔵さん。アンタの話し振りではクエストをチマチマやってランクを上げる方法意外にも────他にも何かあるんだろ?」


 フオンに質問された蔵は「やっぱり聞いてくるよね〜」と苦笑いをしながら自分の頭を掻いていた。


 ただ、蔵は話を濁すわけもなくフオンの説明に答えてくれた。


「まぁ、あるっちゃあるんだけどさ。あまり俺はおすすめしないかなぁ〜?」

「………そんなに難しい事なのか?」

「いや、まぁ人にもよるけど。難しい────と言うか、意味がないと、言うか………」


 そんな蔵の煮えきらない言葉にフオンは逆に何があるのか気になってしまった


 なので聞いてみる事にした。


「まぁ、難しいか簡単かは俺達も分からないが何をするかだけでも教えてもらえないか?」

「………分かったよ。まず「C」ランク以上の冒険者教官と模擬戦を行ってもらう。その戦いで戦った教官役の評価でどのランク帯になるかが決まる。ただし、原則的に「D」ランクまでしか上がる事が出来ない」

「………なんとなく、その理由は分かる。「C」ランクに上がるためには「集団ダンジョン探索」────なるものをやらなくてはいけないからだろ?」


 フオンの質問に蔵は一つ頷く。


「その通りさ。ただ、一気に「D」ランクになったとしても「C」ランクに上がるためには今

、フオン君が言った通り「集団ダンジョン探索」をしなくてはいけない。それ以上のランク帯になると言ってもどっち道"クエストの数を一定値"こなさなくてはいけないし、"好感度・貢献度"も貯めなくてはいけないからあまりおすすめ出来ないのさ」

「────成る程、ランクを一気に上げるよりは地道にクエストをこなして協会への好感度・貢献度を貯めた方が一石二鳥だもんね」


 蔵の言葉を引き継ぐ様にネロが話すとその言葉を聞いていた蔵は頷いた。


「そうだね、ネロ君の言う通りさ。だから俺自身ではおすすめ出来ない。まぁ、この「東京支部」内でも2人程教官と模擬戦をして一気に冒険者ランクを上げた猛者はいるけど────彼等も「D」ランクまでだったからね〜、一気にランクを上げて良い事と言えばが上がるぐらいだね」


 その話を聞いたフオンは「なんだその程度か、そんな事をやっても目立つだけだな」と言い直ぐに興味を失ってしまった様だ。


 そんなフオンにネロも同意する様に「やらない方向だね」と言っていた。


 フオンとネロの会話を聞いていた蔵も「やっぱりやんないよね〜」と言い、初心者様のクエストを紹介しようとした。


 その時、「東京支部」の入り口のドアが大きな音をたてて開いたと思ったら────真っ黒な鎧姿の大きく真っ赤な大剣を背負った背丈の高い黒髪の短髪の男が協会内に入って来た。


 そしてその男は────


「この協会最強の男が今、帰ったぞー!」


 と、笑いながら声高々に言うのだった。










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