第48話 冒険者登録②





 変な男のせいで足止めを食らってしまったフオン達だったが、何故かその邪魔をしてきた男は何処かへ行ってしまった。その事が少し不可解だったがそれ以上は気にせずに空いている受付の所まで行く事にした。


 受付のカウンターは5箇所あるがその内4箇所は女性の受付が担当していて既に男性冒険者達で埋まっていた。


 ただ、一番右端にある受付のカウンターにはアフロ姿でサングラスを掛けている男性だけが暇そうにしていた。なので早く済むならと思いフオンはその受付の元へと向かう事にした。

 そんなフオンの後にさっきよりかは機嫌を直した様な表情をしているネロが着いて来ていた。


 フオン達が近付いてもアフロの男性は暇そうに欠伸をしているだけで特に何も反応を示さない、なのでフオン自ら声をかける事にした。


「おいアンタ、ここは受付で────合ってるんだよな?」

「────うぇっ!?………おっと、冒険者さんだったかい。ここの受付はあまり使われなくてね誰も来ないと思っていたから驚いたよ」


 受付の男は初め驚いていたがそう言うと姿勢を正し、フオンとネロに向き直った。


 そんな受付の男に再度フオンは問い掛ける。


「で?ここは受付が出来るのか?出来ないなら違う場所に行くが………」

「出来る!出来るから行かないでくれ!!俺の所に誰も来ないからいつも暇をしてるんだよぉ〜君達は久々のお客様────冒険者だから舞い上がっててさ!」

「そ、そうか………」


 そんな受付の男の必死な姿にフオンは少し引いていたが、悪い奴では無いと感じたのか返事を返すだけで何処かに行くことはしなかった。


 そんなフオンの態度に安心したのか受付の男は笑顔を見せた。


「それで?今日はどんなご用で?────というか君達はこの冒険者協会で見ない子達だね。違う冒険者協会から移ってきたのかい?」


 何か勘違いをしているのかアフロの受付はフオン達にそう伝えてきた。


 ただ、そう聞かれたフオンは首を振る。


「いや、アンタは何か勘違いをしている様だが俺達は今日初めて冒険者になる者だ。簡単に言ってしまえば初心者冒険者だな」

「────マジで?」

「あぁ、おおマジだ。だから、冒険者登録は、出来るか?」


 今もまだフオンの言葉に驚きを隠せない男性受付にそう問い掛けるのだった。


 フオンの後ろで2人の会話を聴いているネロは何が面白いのかさっきの怒りはどうしたのかと言うようにニヤニヤしていた。



 ◇閑話休題それはさておき



「────ははは!本当に君達が初心者だとはね、流石の俺でも眼から鱗だよ。妹のネロ君は分からなくも無いけど、兄のフオン君、君は完全に熟練冒険者の雰囲気のそれが出てるもんねぇ〜。まぁ「鑑定用紙」で鑑定の結界が出たんだから君達が"初心者"というのは嘘では無いようだ」


 受付の男はアフロを揺らしながらそんな事を言うと笑っていた。


 あの後、フオンの話を聞いた受付の男は疑うのは悪いと思いつつもフオンを見て初心者というのはあんまりにも馬鹿げていると思い、冒険者かそうでは無いのか証明が出来る「鑑定用紙」を使ってみたら────


 フオンの「ステータス」が表示されて何処の冒険者協会にも登録しておらず、今までで一度も冒険者登録をしていない事が分かった。

 それはネロも同じで疑ってしまった受付の男は直ぐ様にフオン達に謝罪をした。


 フオン達は疑われたことに特に何も思っていないのか「別にいい、それよりも冒険者登録を頼む」と言う。そんなフオンの態度が可笑しくて受付の男は笑っていた。


 因みに「鑑定用紙」により表示されたフオンとネロの今の「ステータス」はこうだ。



---------------------------------------------------------------


   フオン・シュトレイン(23歳 男)【15歳】


L v.:7【】

種族:人間

職業:闘士・音使い【】


体力:150【】

魔力:10【】

スタミナ:100【】

筋力:500【】

防御力:300【】

魔防御力:150【】

素早さ:300【】

運:10【】


加護:異世界???の加護【】


スキル:体術lv.1 身体強化lv.1 剣術lv.2 闘気

音撃「スナップ・スラッシュ」 ??? ???【】


エクストラスキル:???【】


属性:無【】



---------------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------------


   ネロ・シュトレイン(21歳 女)【???】


L v.:5【???】

種族:人間【妖精王】

職業:魔法使い【???】


体力:50【???】

魔力:800 【???】

スタミナ:20 【???】

筋力:50 【???】

防御力:15 【???】

魔防御力:700【???】

素早さ:10 【???】

運:70 【???】


加護:異世界???の加護【???】


スキル:光魔法lv.1「ホーリーレイン・ライトボール・ライトバレット」 風魔法lv.1「ウインドボール・ウインドバレット」水魔法lv.1 「ウォーター・ウォーターボール」回復魔法lv.1 「ヒール」 重力魔法lv.1「コンプラシュ・エア・跪け」魔力制御 魔力上昇

無詠唱 結界【???】


エクストラスキル:???【???】


属性:光 風 水 重力 無【全属性】



---------------------------------------------------------------


 

────と、なっている。


 しっかりとネロが作った「魔道具」の「イマジナリーピアス」の効果が発動しているのか"隠蔽・改竄"をされている「ステータス・スキル・レベル」が表示された。


 因みに【】内が本当の数値だ。


「────それで?もう一度言うが、俺達は冒険者登録は出来るのか?」

「あぁ、悪い悪い!君達兄妹はしっかりと冒険者として登録できるよ。それで、君達の冒険者カードを作るのに5分程かかるけどその間に冒険者について話を聞くかい?」


 その話を聞くとフオンは首を振った。


「いや、ある程度自分達で調べて知っているから大丈夫だ。俺達は冒険者登録が出来れば直ぐにでも「ダンジョン」に潜って冒険者ランクを上げたいから何か良いクエストでも見繕ってくれ」

「そうか。まぁ、君達がそれで良いなら俺からは何も言わないよ。ただ、「冒険者受付制度」は知っているかい?」

「────いや、それは知らないな。何かその制度を知っていて俺達に徳はあるのか?」


 フオンに聞かれた受付の男は少し真剣な顔になると頷いた。


「あぁ、勿論ある。まず「冒険者受付制度」の説明を簡単にすると、例えば俺が君達の担当受付────「アドバイザー」になるとしよう。そうすると他の冒険者よりも優先的に受付の対応を出来るし、美味しいクエストなんかも斡旋できるんだ」

「………成る程。だが、それは人気の受付だと埋まっていたり、人数制限もあるんじゃないのか?」


 フオンに質問された受付の男は「あはは………」と苦笑いをするとフオンの問いに答えた。


「君の言う通りある。あるけど────男性の受付なんか冒険者が担当になって欲しいと思うかい?ましてや冒険者は男性の方が圧倒的に多い中だ。だから俺の所で「担当になって欲しい」と、来た冒険者なんて今までで誰一人としていなかったよ?まぁ、それは俺も分かるけどね────女性の方が良いもんね、普通」

「………そうか?俺は別に性別など気にしないがな。しっかりと仕事さえしてくれれば何も言わん」


 そんなフオンの言葉に受付の男は笑い出した。


「あはは!君は少し変わってるね。変わってるけどそこがまた良いね!────と、脱線したね。まぁ、俺は男性受付だし担当はガラ空きだ、それに加えて人数制限は三人まで。だから君達兄妹がもし冒険者受付制度を受けたいと言うなら俺がなるけど?特にお金とかもいらないからそこは安心だよ?」

「………少し、考える」


 難しい顔をしてフオンが伝えると「あぁ、妹さんと話し合うと良いよ!」と言ってくれた。


 なので背後にいるネロにフオンは振り向いた。


 

「────ネロは今の話を聞いてどう思う?俺としては「冒険者受付制度」、悪くないと思うのだが………」


 フオンがそう聞くと、聞かれたネロは初めから決めていたのか。


「うん、僕もお兄ちゃんと同じで悪くないと思うよ?それに────他の人達よりも優先的にクエストを斡旋してくれるとか僕達に好都合だよ!断る理由が無いと僕は思うな」


 そんな事を口にした。


 その事にフオンは少し笑うと。


「………だな。聞くまでも無かったか、俺達には合っているな、その「冒険者受付制度」とやらが」


 そう呟き受付の男に自分達の答えを伝える事にした。


 ただ、フオンとネロの会話を目の前で聞いていた受付の男は今から何を言われるのかが分かっているようで。


「………決まったようだね?」


 そう聞いてきた。


「あぁ、俺達はアンタを指名する。ただ、存分に優遇してくれよ?アンタを飽きさせない自信はあるからさ」

「ははっ!期待しとくよ!君達は見ていても面白そうだからなぁ〜と、俺の自己紹介をしていなかったな。君達の事は「ステータス」を見たから分かるけどさ」

「そうだな、これから長い付き合いになるかもしれないんだ。自己紹介は大事だな」

「うんうん、自分の事を知ってもらうのも相手の事を知るのもとても大切だからね!」


 フオンの言葉にネロも同意する様に頷いている。


 その様子を見た受付の男は自分の自己紹介をした。


「俺の名は蔵俊道くらとしみち。今日から君達の「アドバイザー」をやらせて貰う者だ。と、アドバイザー兼この「東京支部」の"副協会長"まぁ、要するに上から2番目の偉い立場を務めさせて貰ってる者だ。今後ともうちの協会をご贔屓に────ね?」


 そんな事を悪戯が成功した悪ガキの様に呟くのだった。

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