第39話 旅立ちの朝③
「まぁ、そんな話は置いていて今は目先の事を終わらそうか」
「そうだな、他の「魔道具」についても説明頼む」
幸太の言葉にネロは頷いた。
「分かったよ、次に説明するのが………その青色と赤色のピアスだね。そのピアスは通称「イマジナリーピアス」という。簡単に説明するとそのピアスを一つずつ片耳に付けるだけで"偽装"と"隠蔽"が出来るようになるね」
「………成る程、ネロが言いたいことは何となくは理解した。偽装は俺の正体を地上でバレない様にする為、隠蔽は「
「その通りさ!流石僕の幸太君と言ったところだね!理解力が早くて助かるよ」
幸太が答えた事が当たっていた様でネロは嬉しがっていた。
その事に幸太は苦笑いを浮かべていた。
「まぁ、ネロの説明が分かりやすかったからな。ただ、使い方は分からんからそこは説明頼む」
「勿論!まず青色の方は偽装のピアス。その「イマジナリーピアス」を作った時にどんな偽装をするかは僕の方で予め決めといたからそれはお楽しみと言う事で!そのピアスを付ければ僕が設定した見た目になれるからね!」
「────分かった。ネロのセンスに任せる。続けてくれ」
そんな幸太の言葉にネロは笑顔を見せた。
「うん!それで赤色の方は隠蔽、さっき幸太君が言った通り「
「────これも中々凄いな。凄いとしか言えないな」
普通に驚いていた幸太の顔を見てネロは「どんなもんだい!」とでも言いたげにドヤ顔を浮かべていた。
ただ、今回は本当に凄いと感心したので幸太は称賛の言葉だけを送る事にした。
「まぁ、これで最初僕が話した"地上での事・「
「あぁ、本当に助かる。これで漸く「ダンジョン」から出られるな!」
「いや、それがまだ決め事があるから出られそうにないんだよ」
やる気を出している幸太だったがネロは首を横に振って否定していた。
「ん?まだ何かあるのか?────あぁ、偽装と隠蔽のピアスを付けろって事か?」
「いや、それも重要だけど僕達は地上に出る前に"設定"を決めなくてはいけない」
「設定?」
「あぁ、設定さ。僕達にはとても大切なことさ!」
堂々とネロが言うので幸太は聞く事にした。
「分かった、聞こう」
「うん。僕達は、と言うか幸太君は今の「工藤幸太」という名で地上に出るのはやめた方がいいいだろうね、さっき言った通り身バレを防ぐ為だね。だから"偽名"を作る。その他にも冒険者は2人で登録する事になっている、だからね、僕達は"兄妹"という設定にしようと思う。幸太君はそこのところ何か意見はあるかい?」
「………いや、特に無いな。強いて言うならその偽名とやらは決まっているのか?」
幸太に問われたネロは「任せて!」とでも言うように自分の胸を叩いた。
その時にネロの胸は揺れていたが幸太は興味なさげに見ていた。
「あぁ、決まっているとも!幸太君の名前は────いや、僕達兄妹の名前は「シュトレイン」!幸太君達の修行を見ていて修行に似た名前として安直に作ったんだけど、どうかな?」
「………それで良いんじゃないか?俺には名前の良し悪しより工藤幸太という"名前・存在"を隠せて誰にも勘繰られなければどうでも良いからな」
「幸太君がそれで良いなら決まりだね!これからは僕は幸太君の「妹」として"ネロ・シュトレイン"と名乗るよ!」
ネロはそんな事を口にすると変な笑みを浮かべながら「ヘ、ヘヘッ……これで名前が一緒、外堀を埋めれる」なんか言っている。
それを間近で見ている幸太は少し引いていたがあまり気にしない様に務め、自分はネロに聞きたい事を話す事にした。
「ネロ、お前の名前が決まり、俺の名前も────同じく「シュトレイン」となったわけだがお前みたいに「シュトレイン」の前に何か付けた方がいいよな?」
幸太がそう聞くと直ぐにだらしない顔を戻し返事を返した。
「………と、そうだね。流石に幸太君の名前を「シュトレイン」だけはおかしいし。"幸太・シュトレイン"にしても"隠蔽・改竄"をした意味が無いし、幸太君自身は自分の偽名なんかは何か無いのかい?」
「………偽名、か」
幸太はそう呟くと目蓋を閉じて考える仕草をした。
(────俺の偽名。正直に言うと何でも良いが、適当に考えるのも何か面白味が欠けるな。幸太、幸太────"幸運"?ふむ、中々良いのがあるかもな?)
ネロが幸太の考える姿を顔を高揚させて恍惚の表情で見ていると、幸太は考えが纏まったのか直ぐに目蓋を開いたのでネロは瞬時に普段の表情に戻した。
(………あ、危なかった〜。多分バレてないよね?)
ネロは内心でそんな事を思っているが実際には幸太に既にそのだらしない顔を見られていて、その事を幸太が何も言わないだけなのでアウトだ。
そんな事を知らないネロは素知らぬ顔で幸太に話しかける。
「その顔は何か良い名が浮かんだのかい?」
「あぁ、良いのがある。俺の名は幸太。義親から言わせると"幸運"に因んだ名だと言う。だがそんな物は所詮何のご利益もない唯の名だ。なら逆の意味の"不幸"の名に因んで────不幸、不幸────"不穏"なんてどうだ?」
「────ッ!!不穏か………」
その名を聞いたネロは初め少し悲しげな表情を浮かべた。
幸太が「義親」と言う時に何も表情を浮かべていなかったからだ。
そこからは何も感情が伺えず、未だに家族と人を嫌っていることが伺えるからだ、でも今はその事には何も触れない事にした。
今、何をネロが言っても意味が無いからだ。
「そうだ、漢字だと「シュトレイン」の名に合わないからカタカナにして────"フオン・シュトレイン"だな。俺自身はこの名でいいと思う。ネロはどうだと思う?」
そんな事をネロの心情など知らぬ顔で聞いてくる幸太に出来るだけ内心を悟らせない様にネロは話した。
「………うん、僕もその名でいいと思うよ?「兄」の"フオン・シュトレイン"、「妹」の"ネロ・シュトレイン"────良いじゃないか!僕達はこれで行こう!ハーフの兄妹なんかにしてね!2人合わせて「シュトレイン兄妹」なんて言われて!!」
「………それはどうなるかは分からんがあまり地上では目立ちたくはない物だな。強者とは戦いたいが、目立って身バレでもしたら意味が無いからな」
ネロの陽気な雰囲気が功を成したのか幸太は何も不審がる事なく自分の名を決められて少し喜んでいた。
(────ふぅ、何となく難は乗り切ったね。幸太君の前では御家族の名とかはNGだからね。この一億年で少しは改善出来れば良かったけど無理だった。"好きの反対は無関心"なんてよく言った物だ。幸太君は御家族の事をもう────いや、まだ何とかなるはずだ。僕が側にいながら弱気になってちゃ駄目だよね………)
そうネロは考えると気持ちを切り替える事にした。
「そうだね!じゃあその事も踏まえて他の「魔道具」もちゃっちゃと説明しちゃうよ!」
そう、ネロは陽気に話すのだった。
幸太と家族の"絆"を取り戻させると誓いながら。
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