第35話 別れ
拠点に戻った幸太達は修行の仕方をジャックが分からないというので簡単に説明した。
その時に「──ネロ殿は時をも止められるのか……」と驚きを隠せない様だったが、その後は何事も無く修行を進めて行った。
修行自体もかなり順調に進んだ。
今までの修行法に加え、幸太とジャックの組み手からネロの重力魔法で何千倍の重みを身体に負担かける・魔法を避ける・耐性を付けるなどして強さの高みに近づいて行った。
◇
時はかなり流れ、アレから飽きもせずに400年の間幸太達は修行を続けた。
長い時間一緒にいたからか三人の間には遠慮も無くなりかなり仲良くもなっていた。
そんな時、突然ジャックが「オレは一旦お前達と離れテ修行をする」と言い出したのだ。
「────んだよジャック?このまま此処で修行をすれば良いじゃねぇか?」
そんなジャックに疑問を持ち声を掛けたのは幸太だった。
ネロも疑問を持っていたが、幸太が声を掛けたので自分は何も言わなかった様だ。
「────オレも此処でお前達ト修行に明け暮れるのも良いのダガ、ネロ殿の話を以前聞いた時からオレはコノ「ダンジョン」を攻略したいト思っていてナ」
以前修行をしながらジャックはネロに今起きている「ダンジョン」の異変について話を聞いてたのだ。
ただ、そんな話を聞いても幸太は納得がいかない様で。
「「ダンジョン」を?何でまた突然言い出す?そもそもんなの俺と攻略すれば良いじゃねえか?」
真っ当な事を聞いた幸太だったが、それでもジャックは首を縦に振らなかった。
「それじゃあ駄目ダ。自分の強さを証明しなくてハ行けない。それに幸太、お前ハまだそのまま此処で修行ヲ続けろ。まだ、まだお前ハ強くナレルだろうからな」
「………分かってる。けどよ、いきなり居なくなるとか────寂しいじゃねえか?」
「そうか」
そんな言葉を幸太に言われて少し嬉しかったのか下を向くと苦笑いをしたジャックだが、それでも自分の決めた意思を曲げない様で。
「その気持ちは嬉しい、が。コレはオレからお前達への恩返しでもアル」
「「………恩返し?」」
幸太もネロもその話にはピンと来るものがなく聞き返してしまった。
「アァ、恩返しだ。最初会った時からお前達ニハ十分世話になった。それからもこんな魔物に優しくしてクレたお前達ニ感謝しか無い。────だからソノお礼としてオレに此処の「ダンジョン攻略」を任せてくれないか?」
その話を聞き、やっとジャックが何を言いたいのか理解した2人だったが。
「でも、あの時も言ったけどお礼なんて感じなくて良いぞ?俺がやりたくてやった事だし………」
「そうだよジャック君?別に気にしなくて良いんだよ?」
「いや、それでもオレのプライドが許さない。ちっぽけなプライドかもしれないガどうかオレにやらせてクレナイだろうか?」
そう言うと二人に頭を下げた。
そんなジャックの態度を見た二人も「引き止めるのは厳しそう」と思ったのか渋々ながらジャックと別れることに決めた。
「………分かったよ、お前が決めた事だ好きにしろ。俺はもう止めない」
「ありがとう。幸太」
ジャックの言葉を聞くと幸太は「ふんっ!」とソッポを向いてしまった。
その事にジャックは少し苦笑いを浮かべていたが。
「ジャック君、僕ももう止めないよ。けど、もしかして他に「ダンジョン攻略」をしたい理由でもあるのかい?」
「まぁ、そうだナ。あるか無いかで言えばある。お前達ニ何も言わないのもフェアじゃ無いので言うが、オレの目当ては「ダンジョンマスター」なるものを打ち取る事だ」
ジャックの話を聞いた二人は違う反応を見せていた。
幸太は「何だそれは?」とでも言いたげな微妙な表情、逆にネロは「そう言うことか」と納得していた。
「────成る程、ね。幸太君にはまだ話していなかったけど、ここ「ダンジョン」の最深部には「ダンジョンマスター」と呼ばれる魔物がいる。通称「ダンジョンコアの番人」と言われているね」
「「ダンジョンマスター」だの「コア」だのとさっぱりなんだが?」
「あぁ、それは手短に今説明するよ」
今ネロの口からでた「ダンジョンマスター」なる魔物は各「ダンジョン内」にいるその「ダンジョン」のボスとなっている。
ただしその「ダンジョンマスター」を倒すだけでは「ダンジョン」は生き続けてしまう。ならそれを消滅させるにはどうしたら良いかというと、先程ネロも言っていた通り「ダンジョンマスター」通称「ダンジョンコアの番人」が守っている「ダンジョンコア」という物を壊す事だ。
「ダンジョンコア」とは「ダンジョン」の核又は心臓の様な物になっているらしく、その「コア」がある事により魔物が発生され「ダンジョン」が作られていると言う。
逆にその「コア」さえ破壊出来れば永続的に魔物が発生せず「ダンジョン」自体の機能が無くなり消滅してしまうと言う。
何故「ダンジョン」が消滅してしまうのかは未だに謎だ。
ただ、中にいた人々達は「ダンジョン」が消滅を始まる前に「ダンジョン」自体の機能で中に残っている人々を地上に強制的に戻してくれると言う謎機能も付いているのもまた研究されている問題だ。
「────と言う事が「ダンジョン」についてだね。正直に言うと僕もそれ程「ダンジョン」については詳しく無くてね」
聞いていた幸太は一応頷いてはいた。
「まぁ、何となくは分かったわ。要するにジャックはその「ダンジョンマスター」を倒しに行きたいって事だろ?俺も倒してはみたいがこの地球に何個も「ダンジョン」は出来ているからな。今回はジャックに譲るわ」
「ウム、助かる」
「ただ、その────「ダンジョンコア」?は壊すなよ?この「ダンジョン」が無くなっちまうらしいから」
幸太がそう釘を刺す様に言うとジャックもそれは初めから分かっていたのか頷いた。
「アァ、それは分かってイル。俺はレベルもあげたいトモ思っているから「ダンジョン攻略」は正に一石二鳥ダト思ったからお前達ニ伝えただけだカラな」
「あぁーー、レベル上げね。レベル上げ。幸太君がその"機能"を持たないからすっかりと僕自身も忘れかけてたよ」
「────ケッ!何がレベル上げだ!そんなの糞食らえだ!!」
そんなキレる幸太に二人は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
皆が覚えているかは分からないが、今の地球ではほとんどの人が「スキル・ステータス・レベル」と言うものを持つのが普通だ。
それを持たない人間は存在する。それが幸太だ。
幸太が気にすると思って出来るだけジャックも言わない様に心掛けてはいたが、自分の話をするのには欠かせない内容だったので口にした。
そしたら案の定幸太は過剰に反応しキレている。
「だカラ、他の魔物を倒せば────「ダンジョンマスター」を倒せばかなりオレのレベルも上がるト思ってナ。そうすれバオレも少しハ幸太の隣に並べるかもシレないからナ」
「────あぁ、そういう訳ね。お前が強くなるのは俺も賛成だ。次に会った時また闘える時は楽しみだな?」
「アァ、再戦楽しみにシテいてくれ。次は一度はお前ニ勝てる様にしとくよ」
幸太も分かってくれたのか、ジャックとまた会う時の再戦を誓い合い握手をしていた。
「あっ!そうだジャック君、コレはちょっとお願いなんだけど良いかな?」
「ん?どうシタのだネロ殿?」
話が纏まったので別れるかとなっていた時不意にネロに呼び止められたジャックだったが、背後を振り向きネロの話しを聞いていた。
「えっとね、ジャック君は「ダンジョン攻略」をすると言っていたじゃ無いか?」
「ウム、そうだがソレがどうシタのだ?」
「僕達も全ての「ダンジョン」を一応攻略するのが目的だけど、僕達と今度また会うまでに暇だったら他の「ダンジョン攻略」もお願いしても良いかい?」
「ウム、問題ないぞ?オレの腕試し二もなるからな」
そんなネロの話しを瞬時に理解したのかジャックは軽く承諾をしてくれた。
「ありがとう!引き止めてごめんね?」
「問題ないサ。オレも最後の挨拶はするつもりだからナ」
「うん、分かったよ」
ジャックが挨拶をすると言うので幸太とネロの2人は聞き逃さない様にジャックの話を待っていた。
ただ、そんなマジマジと見られるのが少し恥ずかしいのか────
「………ヌウ、あまりマジマジと見ないでくれ。調子が狂ってしまう。まぁ、オレもそんなに話が上手い訳デハ無いから手短に話そう。また会おう2人共!コノ世界ハ広い。広いガ────一生会えない訳デハ無い。だカラまた、会おう!!」
「………あぁ、俺の方こそまた会おう!今度はどちらももっと強くなって会おうぜライバル!!」
「僕もだよ!ジャック君には無いと思うけど、どうか死なないで!!」
そんな2人の返事を聞くと背後に振り向き歩きながら手を上げてジャックは挨拶をした。
それは恥ずかしかったのか、別れの辛さで泣いている所を見られたくなかったかは分からないが。
遠くなって行く自分達の
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