第34話 似たもの同士




「────二人共無事話ガ纏まった様ダナ。幸太、お前は無理しテ何者にならナクても良い、ただお前が悪の道にモシ進む様ならその時ハ、その性根オレが叩き割ってやロウ」


 さっきまで無言を貫いていたジャックが悪い顔をしながら幸太に伝えた。


「それは安心しろ。悪人など俺から願い下げだ、言っただろ?善と悪に囚われないと」

「………そうだったナ、オレ達にあるのは言葉ヨリモ行動で示す事、カ」

「だな、強くなれよ────ライバルジャック


 幸太がジャックの事をそう呼ぶと、呼ばれた本人は少し驚いた顔をしたが嬉しそうな顔をすると幸太の隣に立った。


「アァ、強くナルさ。お前に負けないぐらいに。ダカラお前もオレの目指す星であってくれよ?」

「任せろ、俺は誰にも負けねぇからな!勿論お前にも!!」


 そう言うと2人は知らずに拳を突きつけていた。


 その様子を見ていたネロは少し苦笑いを浮かべながらも2人の話に加わった。


「全く、男の子はコレだから。僕達の今後の目標は決まったけど、けど、一旦話を整理しよう」


 ネロの言葉に2人は無言で聞く態勢に入った。


「幸太君は誰の追随を許さない、隣に並ばせないほどの自由で純粋な強さを欲している」

「ああ、そうだ」


 ネロの言葉にそれ以上は何も言わずただ肯定をする幸太。


「ジャック君もそうだ、強さを求めていると共に魔物でありながら人の心を持ち、人を助ける為に強くあろうとする」

「ウム、オレは魔物だ。それは何をシテモ変わる事ハ無いだろう。ダガ、助けるのに理由など不要ダロ?」


 ジャックもネロの言葉に肯定をすると不適に言い返していた。


「………そうだね、でもそんな2人は対極な存在に見える。善と悪どちらにも染まらないただ強さに憧憬を想う幸太君。人を助けようと正義を貫く魔物のジャック君。けど、2人には共通点がある。それは────」


 そうネロが言葉を止めると、他の2人は最初から合図でも決めていた様に声を揃えた。


「「強くなる事」」


 ────と。


 2人の言葉を聞くと、ネロは笑っていた。


「ふふっ、そうだ。2人は想いは違くても強くなろうとあり続ける。此処はそれが叶えられる場所だ。それに君達の目の前には最高の好敵手ライバルがいる。勿論僕も最大のサポートをしよう!────だから強くなりなよ、二人共?」

「「当たり前だ!!」


 そんな2人の決意の言葉を聞くとネロは頷いた。


「「ダンジョン」の攻略や君達の再戦、人助けなんかは強くなった後でも好きなだけ出来る。今、この場所の時間は止まっているんだからね!」


 ネロの言葉を聞いた二人は言葉では無く行動で示していた。


 ネロが見ている目前で「ジャック!今から拠点まで競争だ!!」なんて幸太は楽しそうに伝えていた。

 それをこちらも楽しそうに聞いているが「マテ、オレは拠点の場所など知らんゾ?お前にハンデがありすぎデハ?」などと幸太に伝えているがそんな物は関係無いと言う様に幸太は走って行ってしまった。

 それを「やれやれ」と言いながらも自分も追い掛けるジャック。その光景を見てネロは「クスッ」と笑っていた。



 ◇閑話休題



「────さて、今後はどうなることやら。幸太君は始め約500年は修行するなんて頭のおかしい事を言っていたけど、ジャック君が加わった今の彼等なら簡単にやりそうだよね………」


 幸太達の後を追い掛けながらもネロは今後について一人呟いていた。


「それにもう邪魔者は誰もこの「ダンジョン内」には入れない様にしたから外部からの接触は気にしなくて良いだろう」


 佐々木達がこの「ダンジョン内」に入ってきて来てしまったのは自分の結界の甘さが原因なので今回は従前に準備をして誰にも干渉出来ないような屈強な結界にしている。


 ただ、それとはまた別にネロは考えることがある。


「────今後も色々な「ダンジョン」に幸太君は行けば僕やジャック君の様な「訪問者ヴィズィター」達と会うんだろうねぇ。今の彼は強い。でも、まだ色々と未熟だ。それに彼の心は壊れかけている────そんな彼には色々な人と会い、縁を結びそれで幸太君も強さ以外にも成長をしてもらわないといけない」


 それは幸太についてだった。


「僕には分かる。彼は何かと無理をしていると、人との生活を本当はしたいのに人が好きなのに────大好きな人に拒絶され、社会から爪弾きにされてしまっている。だから彼は何もかもを拒絶してしまった。────人は脆い生き物だ。だから僕が側に居て支えてあげないと………」


 今は分からない先の未来に想いを馳せてネロは呟く。


 ただ、今うだうだ考えても直ぐに対処法など見つかるはずがないので彼を心から癒せる存在を見つけるか、これ以上彼の心を壊さない様にネロは奮闘しようと決意をした。

 本当は自分が彼、幸太の一番の存在になれれば良いが自分は相棒でありもう既に彼の側にいるからそれ以上を望めない、本当は望めるなら────


「────この気持ちはまだ伝えられないかな。幸太君も僕もまだ、ね」


 そんな事を考えながらも答えなど出るはずがなく、幸太達の元まで向かうのだった。

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