第30話 違和感



 幸太とジャックで話し合い、自己紹介は不要と判断したのを見ていたネロは手を叩き2人の視線を集めると話を纏めることにした。


「ハイハイ!じゃあ僕達も大分話が纏まった所だから一旦拠点に戻って────ん?」

「────どうしたネロ?」

「………」


 何故かネロは須田達、冒険者達が出て行った洞窟の奥をずっと見たまま何も言わないので違和感を覚えた幸太は聞いてみたが、それでも無言を貫いていた。

 その事にジャックも何か気になったらしくネロに話しかけた。


「どうシタのだネロ殿?なにかガあったのか?」

「────いや、僕の気のせいかもしれないけど、あそこにある岩場の影から誰かが僕達の話を伺っている様に感じてさ。まぁ、気のせいでしょ」

「ウム、気のせいナラ良いのだガ」


 ジャックも洞窟の奥を目を凝らしてみたが、何もいないと判断したのでネロの勘違いだろうと思っていた。


 ただ、幸太だけはどうにもそれが気になった。


「………‥」


 自分もネロが見ていた岩場を見たが特に変わった感じは無かった。

 でもネロが違和感を覚えたと言うのと別に気になる事があった。自分に第六感というものがあるかは知らないが、頭の中で「あの岩場の影に何者かが潜んでいる」と告げるのだ。

 なので、幸太はその場で屈むと手頃な小石を手にしてその岩場に向けておもいっきり投げた。


 幸太の手により投石された小石は風を切って寸分狂わずにネロが気になったと言っていた岩場にぶつかった。


 ドカン!!


 そんな音と共に幸太が投げた小石がぶつかった岩場は少し半壊して崩れた。

 ただ、その岩場が崩れる音の中に人の悲鳴な様なものも聞こえて来た。


「うわッァーー!!?」


 そんな悲鳴をあげながら岩場の影から出てきて尻餅を付いている人物は────幸太に散々悪口を言った佐々木だった。


(────アイツは、確か佐々木とか言う俺にいちゃもんを付けてきた奴だよな?……須田さんと逃げたんじゃ無かったのか?)


 その佐々木なる人物がいたのを確認して暫し幸太は何故奴がまだ此処にいるのか考えてしまった。


 ネロとジャックは幸太の行動にも驚いていたが、本当に人がいた事にも驚きの表情をしていた。


「ヒャぁー、幸太君の行動にも驚かされたけど人、いたね………」

「だな。タダ、幸太。あまり危ない事ハしては駄目ダゾ?あの人間に当たったら一溜りも無いダロウからな」

「んなの分かってラァ、俺だってコントロールぐらいするわ。ただ、奴はただ此処にいるだけじゃねえかもしれねぇ」


 未だに尻餅を付いている佐々木から視線を逸らさずに睨み付けながら幸太は2人に伝えていた。


「ん?幸太君にはあの人間が何かをやれると思うのかい?」

「いんや、アイツ一人じゃぁ何も出来ねぇだろうナァ。だが、奴は鑑定の「スキル」の持ち主ダァ、他にも何か「スキル」を持っているかもしれないしそれに奴がもし見張り役なら?」

「幸太ハあの人間が我々ヲ見張っている、何カを企んでイルト言うんだな?」


 ジャックの質問に小さく頷く幸太。


「そうだ、言っただろ?俺は人間を信用しちゃあいねぇと。それにコレは単なる俺の憶測に過ぎねぇガァ、奴等は逃げると言っていたが────誰もなんて一言も言ってねえよ。もしかしたら地上から応援を呼んでいたり、な?」

「ホウ、だかラあの人間ガ内通者又は見張り役ダト?」

「あぁ、まぁ、考え過ぎだとは思うけどナァ、警戒するには越したことはないだろう?」


 幸太達が話し合っていると、佐々木は漸く自分に起きた事を理解すると直ぐ様に立ち上がり何処かに隠れる様な動きをしていた。

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