第29話 真名
男二人で心が通じ合ったように笑い合いながら話し合っていると一人蚊帳の外にされたネロが慌てて話に入ってきた。
「ちょっと、ちょっと二人共!僕を忘れないでよね!紅一点の何でも出来るプリティーガール事、妖精王の僕をね!」
「────いや?忘れてねぇよ?ナァ?」
「────ウム、そうダナ」
2人のその素っ気ない態度にネロは激怒した。
「嘘つけぇー!!じゃあその言葉の間の間は何なんだよォ!?完全に僕の事を二人して忘れていただろォ!!」
そんなネロを2人してあやしていた、そんな中、まだネロはブツブツと「これだから男は」や「女性の身にもなれ」と呟いていた。
そんな少しの騒動が収まった後三人は今後の話を話し合っていた時、ネロから意外な一言が発せられた。
「あっ、そうだ、僕達はゴブリンキング君の事をゴブリンキング君とただ、個体名?種族名?で呼んでいたけど何か元々の真名は無いの?」
「そういや、そうだなぁ。元は人間だったんだからその時の名前とかは無いのか?」
2人にそう聞かれたゴブリンキングは少し恥ずかしそうにボソッと呟いた。
「その、あるト言えばある。ただソレがオレの真名なのカハ分からないンダが────"ジャック"と言うらしイ」
「あ?何だって?」
小さ過ぎて聞こえなかった幸太はそんな風に聞き返してしまった。
ただ、耳が良いネロは聞こえたらしく。
「ふーん?君はジャック君と言うのかい?」
「あ、アァ。そうだが、今の魔物のオレと名前が合ってなさ過ぎてナ」
そう言うと恥ずかしそうに顔を下に向けてしまった。
「僕はその名前で良いと思うけどね〜幸太君はどうだと思う?」
「あぁ、俺もそれで良いと思うぞ?今自分にその名が合わなくても今後その名に相応しい男になれば良いだけだからな!俺には恥ずかしがる意味が分からんな?」
ネロと幸太に肯定されてしまったゴブリンキング────改めてジャックは少し恥ずかしそうに下を向きながら頷いていた。
「二人共、ソノ、感謝する。今からオレはジャックと名乗ル事にスル」
そう自分の名を名乗るジャックはもう恥ずかしさなど無いような普段通りの表情に戻っていた。
「うん、良い顔になったね!」
「おう、そうしとけ、そうしとけ。あっ、そういえばネロとジャックは自己紹介したのに俺だけしてねぇじゃねえか?」
今更になってそんな事を言う幸太に少し素っ気なくネロは口を開いた。
「ん?幸太君は、幸太君なんだから自己紹介なんていらないでしょ?それにアレじゃ無いの?自己紹介は口では無くて拳で伝えるもの────って奴じゃ無いの?」
少しネロは雰囲気を出すと「拳で伝えるもの」と言う時にキリッとした表情を作ってその場でシャドーボクシングをする様に小さな右手を空に「シュッ!シュッ!」と放っていた。
それを見た幸太は少し引いていたが。
「………何だよそれ、どこ情報だよ?」
「アレェー?違かったっけ?」
「違うのかどうかも知らん」
2人がそんな話をしているとジャックが話しかけて来た。
「オレも今更な感があるト思うナ、お前ハ幸太ト言うのだろう?ナラただの幸太デイイだろ?オレもただのジャックだからナ!」
「はぁ、お前さんがそれで良いなら俺は何ももう言わんさ」
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