第28話 純粋な強さ
「────ふーん?お前も何かあるのか?まぁ、なんとなーくは俺も何を聞かれるのかは分かるが、お前から聞いて来て良いぞ?」
幸太に言われたゴブリンキングは口を開いた。
「分かっタ。お前は何故最後ノ一撃の時ニわざと"手"でガードをシタ?あのままガードヲせずにオレニ攻撃ヲ喰らわせてれば……簡単ニ勝負はついたダロ?」
「やっぱ、その事か。アレな、俺の誠意を見せる為なんだよ?お前は誠心誠意持って小細工など使わずに真っ向から闘って来ただろ?だからお前の攻撃を最後に一撃真面に喰らって、まぁ、ガードという形にはなった、が!俺の方がそれでも強いという証明をしたかった」
その話を聞くと少し目を開いたゴブリンキングだったが、納得したのか頷いた。
「そう、カ。だが、別にあんな事ヲしなくてもお前ハ強いダロ?」
そんな事を言うゴブリンキングに幸太は首を振った。
「────はっ!全然強くねぇよ俺なんて。勝負に勝った俺が「何を言うんだ!」ってなるかもしれないが、それは事実だ。お前さんも分かっているだろ?この世界にはまだまだ本物の化物みたいな奴がゴロゴロといる事を?」
「────そうダナ。お前ト闘って尚更知ったサ。でも、それデモお前はオレより強い、オレより強いなら相当の力ノ持ち主ナはずだぞ?」
ゴブリンキングは褒めるように伝えたが、それでも幸太は首を振る。
「────こんなのはただの付け焼き刃に過ぎねぇ、俺はまだ強くねぇ。だからもっともっと上を────最強を知りたい。最強と言っても何を基準にすれば良いか正直に言ってわからねぇし。誰もを救う勇者や英雄なんかにゃなりたくねぇ。ただ、誰をも上回る純粋な強さが、俺は欲しい」
自分の想いを全てぶちまけるように幸太は吐き捨てた。
それを見ていたゴブリンキングも恥も外見も捨てたのか幸太と同じように話し出した。
「………お前ノ考えとハ少し違うがオレも殆ど同ジ気持ちダ。生前の知識、生まれながらノ強さヲ糧にここマで進んで来た。でもオレはそれまでだった。自分ノ強さヲ過剰に信じ、胡座をかいていた。だからこそお前ニ負けた。鍛錬するコトヲ怠り、魔物ナノに人間ヲ救おうと動いタ。だからこんな弱いオレじゃあ何も救えナド、しない」
「………あの時、他の冒険者達を逃したのは弱者を相手にするのが面倒臭いからではなく、人間をお前は守りたかったんだな」
幸太に聞かれたゴブリンキングは少し悔しそうな表情を一瞬作ると頷いた。
「おかしいとお前モ思うだろ?元は人間デモ、今は人の敵ノ魔物ダ。そんな化物ガナニを一丁前に人間ノ味方ヲしようとしてるのかと………」
「別におかしくねぇだろ?誰が何をしたって自由だ。それは俺も一緒だ。俺は人が嫌いだ。人と生活するなんて吐き気がする。でも、そんな中────お前みたいな魔物を俺は助けた」
「………‥」
幸太の話を無言でゴブリンキングは聞いていた。
「手前が何をしようがそれは手前の自由だ。咎められるなら、力で屈服させようとしてくるなら、それ以上の力を付けて分からせてやれ。人は自由の生き物なんだからよ。それに、この世界はいつ誰が死んでもおかしくねぇ、信じられるのは手前の力のみ。だからよう────」
幸太はそう言うと一旦言葉を止めてゴブリンキングと向き合った。
「────俺と一緒に何者にも縛られないぐらいの強さを手に入れないか?お互いの想いは違うかもしれないが、強くなりたいと想う利害は一致している。────俺はこのクソッタレな世界で生き残る為に────「
そこで一旦言葉を止めるとゴブリンキングの目をしっかり見た。
「だから、もう一度問おう。俺と最強を目指さないか?」
「………‥」
そんな事を言うと未だに無言でいるゴブリンキングに握手をする様に右手を出した。
それはゴブリンキングの事を信じて、信用している事を証明しているようだった。
なので、ゴブリンキングは幸太の出されている右手を────軽く自分の左手で覆う感じで握手をした。
「────アァ、さっきのお前の話を聞いて今でもお前が「
「ふん、そんなの分かり切っている事だろう?交渉成立ってとこだな」
「アァ、宜しくタノム」
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