第27話 人間臭さ





 幸太もネロも初めは驚いていたが何となくは理解できる事もあった。

 それは、今までのゴブリンキングの会話・行動が自分は唯の魔物ではない事を証明しているからだ。


 幸太は上位種の魔物だから人の言葉を喋るのだと納得していた。

 ネロは「ダンジョン」の異常で魔物にも異常を期している可能性があり、このゴブリンキングもその「ダンジョン」の異常に当てられて特殊な個体になっているのばかりと思っていたが────二人の考えは全て思い違いだったようだ。


 何故なら、このゴブリンキングは元が人間なのだから。


「────なら、ならだ。君の事を人間臭さを感じたと言ったことはあながち間違いでは無かったのかい?」

「そう、なルな。生前の記憶モ名前すらもモウ既にかなり失ってイルが、人間だった頃の感情・想い・誇りハありがたい事ニ失わなかっタようだ」


 何かを達観したような感じにネロの言葉に返事を返していた。


(これは少し誤算だねぇ……完全にこのゴブリンキング君は唯の魔物だと思っていてた。それも「ダンジョン」の影響か不具合に当てられているものかと思ったけど、違う様だ。なら「ダンジョン」では何が起きているって言うんだ?)


 ネロは内心で色々と考えていたが、一つこのゴブリンキングに聞いてみる事にした。

  もしかしたら何かヒントが分かるかもしれないと思ったからだ。


「────分かった。ゴブリンキング君、君の話を僕は信じるよ。だから今からは普通の人間相手として接させて頂くよ?」

「好きにシテくれ」

「分かった。ただ君に聞きたいことがある、君はこの「ダンジョン内」で生活して何かおかしい事や、不思議に思ったことはあるかい?」

「………‥」


 ネロに聞かれたゴブリンキングは先程と同様に目を瞑ると考え込んでしまった。


 その間、幸太は特に何もするでもなくネロとゴブリンキングの会話を静かに聞いていた。

 少ししてゴブリンキングが目を開けたと思ったら、幸太を指差すと口を開いた。


「────その男ト会ったコトだな、今、ネロ殿ガ聞いて来たコトニ当てはまるものハ」

「………俺?」


 いきなり名指しされた幸太は驚き声をあげてしまった。

 

 ただ、ネロはその事に納得をしていた。


「確かに。幸太君は異常だね。いくら強いからと言っても武器を持っている敵と素手で闘うなんて頭のネジが数本は飛んでいるとしか言えないよ」

「ウム、その通り。生前ノ記憶でもそんな人間などイナかったと記憶シテいる」

「君もよく分かっているじゃないか?」

「フフッ、ネロ殿コソ」


 2人は最初は犬猿の中かと思ったが、話してみれば気が合うのか幸太の話で2人で盛り上がっていた。

 言いたい放題言われている幸太は少しふて腐れている感じになり、拗ねているが。


(まぁ、でもゴブリンキング君は「ダンジョン」について本当に何も知らないみたいだ。嘘をついてないようだね、表情で分かるし精霊眼にも特に違和感は無いからね)


 精霊眼とは、ネロの口から度々出てくる言葉ではあるが妖精王であるネロ一人だけの特別な目だ。

 「異世界ノクナレア」では魔眼の一種ともされ、かなり恐れられていた。

 特にネロ本人は悪用をしようなど考えたことが無いためそれも杞憂に終わるのだが。


 なら、精霊眼で何が出来ると言ったら、大体の事が何でも出来ると今は伝えておこう。


 ただ、ネロがゴブリンキングと話しながら一人心の中で色々と考えていると、この空気が耐えられなかったのか幸太もネロとゴブリンキングの会話に強引に自分も参加した。


「2人して楽しそうな話をしやがって!俺も混ぜろ!それに俺の話題で盛り上がるな!!俺にも話をさせろ!」

「────聞こウ、オレもお前に少々聞きたいコトガあった」


 幸太の提案にゴブリンキングも乗ったので次は2人が話す事になった。

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