第26話 驚きの記憶




 ただ、そんな幸太の姿を見て少し毒気を抜かれてしまったのかゴブリンキングは苦笑いを浮かべると口を開いた。


「────今更情けなど要らヌ……などは言わない。既に完治シテイル身だからな。何故助けたなども聞かぬよ。どうせお前が先程ハナシテいた通り、好敵手ライバル?が見つかったからオレをお前の酔狂な気まぐれか何カで助けタノだろう?」

「おう!」


 話を振られた幸太はその通りと言うように満面な笑顔を向けると頷いていた。


その様子を見たゴブリンキングはため息を吐いていた。


「………お前ガ普通のニンゲンとは違うことガよく分かった。ただ、礼をイワセテくれ、オレを、こんなオレにまた闘えるチャンスノ機会をくれた事に────」

「良い!俺がやりたくてやったんだしな。それに礼ならさっきお前を治した張本人のネロに言っていただろ?」


 お礼を言おうとしたゴブリンキングだったが、幸太に要らないと言われてしまったので本人が要らないと言っているならと思い、下げかけていた頭を上げた。


「そう、カ。その、ネロ殿だったか?先程も礼をイワセテ頂いたガ助けてイタダキ感謝する────それと、さっきからオレを警戒しているヨウだが、何も危害など与えるツモリは無いぞ?」


 話を振られたネロはツンと少しソッポを向いたが、一応返事は返す事にした。


「────お礼はしかと頂くよ。でも、幸太君はかなり無防備にしているけど、僕は違うよ?君をまだ信用はしてないからね!いきなり襲われたらたまったもんじゃ無いよ!!それに、ゴブリンとか────乙女の敵じゃ無いか!」


 そんな事を叫ぶと幸太の服の中に入り隠れてしまった。


 そんなネロとゴブリンキングの様子をニヤニヤと見ている幸太。

 ネロの物言いに返す言葉が見つからないと言いたそうに苦笑いをしているゴブリンキングがいた。


「参ったナ。まぁ、信用をシテ貰うのは難しいカ、オレは魔物だからナ。でも危害ヲ加えないのハ本当だ。────と、言うよりオレではお前ら2人ニハ勝てないだろうヨ」

「────とか言ってて、僕の身体を狙ってたりぃぃ?」


 幸太の洋服の中から顔を出すとイヤらしい奴を見つけた様にゴブリンキングを見ていた。

 だが、そんな目を向けられたとうの本人は腹を抱えて笑っていた。


「クククッ、ネロ殿ハジョークが好きなのだナ。乙女ダト言ってもそのサイズと胸の無さでは────笑止!」

「笑止!?は、はん!僕はこれでも元の姿に戻ればバインバインなんですぅ〜!ナイスバディなんですぅ〜!!」


 ゴブリンキングの一言が感に触ったのか遂に幸太の服から身体ごと出すと怒りだした。


「………ソウなのか?なら申し訳無かったナ、憶測だけで判断シテはならんな」

「えっ?う、うん。分かれば良いんだよ、分かれば」


 ゴブリンキングの理解の速さに逆に戸惑いを見せるネロは「なら良い」と頷く事しか出来なかった。


 ただ、そんなネロとゴブリンキングの様子を見て幸太は少しつまらなさそうにしていた。

 自分は初めネロを「胸の無さ」と今ゴブリンキングの口から出た通り憶測で男だと決め付けてしまい怒られてしまったからだ。


(チッ!そこはゴブリンキングも怒られる所だろ!空気を読めとは言わないが、紳士すぎるだロォ………)


 だから本来はゴブリンキングも怒られるという未来を想像していたのに予想が完全に外れてしまい内心で叫んでいた。


 ネロも先酷からのゴブリンキングの会話が気になったらしく聞いてみる事にしたらしい。


「でも、君は本当に魔物────ゴブリンなのかい?全然魔物臭さと言うか、魔物らしさが感じられないんだけど?それどころか人間臭さの方が感じられるぐらいだよ?」

「………‥」


 問われたゴブリンキングは何も答えることはなく暫し目を瞑ると何かを考えているようだった。

 だが、そんな時間も長くは続かずゴブリンキングは目を開けると口を開いた。


 ただ、そこから出て来た言葉は幸太とネロを多いに驚かせる言葉だった。


「────オレは闘えれば良いと思っている変わり者ダ。他のゴブリンハただ種を増やして雌を苗床にする種もいる。だがオレハそんな事ヲするつもりハ更々無い。何故なら────拒むから何ダ」

「「………えっ?」」


 ゴブリンキングの言葉を聞いた2人は揃って今言った言葉が直ぐには理解出来ず聞き返してしまった。


 なのでもう一度分かりやすくゴブリンキングは2人に伝える事にした。


「────オレはだ。「異世界ノクナレア」で帝国の軍団長なんカの地位ヲ持っていたよウダが、死んでこうしテゴブリンキング────魔物とシテまた生を受け、この地に馳せ参った」


 なんでもない事を話すようにゴブリンキングは自分の事をと言った。

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